ボルチモア散策

2018年6月28日(木)


ワシントンDCでの空き時間を利用して、メリーランド州最大の都市ボルチモアに出掛けることとする。目指すのは、アメリカ国歌の発祥の地と言われるマクヘンリー砦だ。ワシントンDCのユニオンステーションからアムトラックに乗りこむ。



40分ほどでボルチモアのペンステーションに到着。石造りの駅舎は外観は重々しいが、内部はステンドガラスや木製の待合ベンチなどが明るくオシャレに配置されている。駅前には、人型の巨大なオブジェが設置されているんだけど、どういう意味なんだろうか・・・。



ペンステーションは、ダウンタウンの北端にある。フォートマクヘンリーは、ダウンタウンのさらにずっと南にある。かつては町の発展を支えた造船や鉄鋼の不況に伴い、都市部空洞化が進んでいるという市街地を通り抜け、南へ南へと歩いていく。



日本でボルチモアと聞くと、MLBのオリオールズを連想する人が大半ではなかろうか。実際、街中にはオリオールズ関係の旗や幟で溢れかえっている。NFLのレイブンズもあるはずなのだが、野球シーズンのためなのか、オリオールズばかりが目につく。



バスだって、オリオールズ仕様。THIS IS BIRDLANDの文字が見える。そういえばフットボールのRAVENSもカラスなんだけど、バスにはORIOLE(ムクドリモドキ?)ばかりが描かれている。



街中では鳥の絵と矢印だけの不思議な案内標識が見られる。オリオールズの球場への方向を示しているものに違いない。




マウントバーノン地区にやってきた。荘厳で重厚な歴史的建造物が集中する、古きアメリカを感じさせてくれる雰囲気のいいエリアだ。なかでも特に目を惹くのがメソジスト教会。アメリカの教会がそれほど古いものであるはずもないだが、中世ヨーロッパのゴシック建築のようだ。



丘の上に立つワシントンモニュメント。初代大統領ワシントンの記念塔といえば、首都のナショナルモールにあるものが有名だが、こちらがその何十年も前に建てられた本家本元?だ。個人的には、オベリスク風のワシントンDCのものより、塔の上にジョージワシントンの騎馬像があるボルチモアの記念碑の方に軍配をあげたい。



独立戦争や南北戦争の激戦地ともなったところだけに、旧跡が多いところのようだ。しかし、アメリカの歴史の知識に乏しく、案内板の内容がまるで理解できない・・・。



古い町並みを抜けて、近代的なビルが並ぶ新市街地にやってきた。トラム?の駅もシンプルながらも、キレイに仕上がっている。治安が悪いとも聞いていたが、真昼間のせいか、そんな風には感じない。



ボルチモアオリオールズの本拠地、オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズにやってきた。赤レンガと鉄骨を組み合わせて作られたレトロな雰囲気の球場の前には、永久欠番と思われる数字のモニュメントが並んでいる。

 


ベーブルース像もある。レッドソックスやヤンキースで活躍したベーブルースだが、生まれはボルチモア。球場からさほど遠くないところに、生家と記念館があるらしい。



球場横のショップで記念のポロシャツを購入し、再び歩き始めると、Dedicated as Cal Ripken Wayの文字を発見。衣笠の連続出場記録を破ったことで知られる強打の遊撃手、カル・リプケンの名前が道に付けられているということのようだ。



港湾都市ボルチモアの見どころが集まったハーバーエリアにやってきた。岸壁には様々な船が停泊している。歴史的な船舶を展示している博物館など大いに興味はあるが、まずは目標の幕ヘンリー要塞に向かうこととする。



それにしても暑い。ハーバーエリアにある立派なビジターセンターで涼ませてもらう。さらに薦められるままに、ボルチモアのプロモーションビデオをシアターで鑑賞したりで、随分な時間を過ごさせていただいた。



ハーバーエリアにあるサイエンスミュージアムの横に、日本の石灯籠、そして「友愛」と書かれた石碑が立てられている。よく見ると、川崎市との姉妹都市締結の記念に建てられたもののようだ。



インナーハーバーを見下ろすフェデラルヒルと呼ばれる丘に登る。かつては軍事施設だったようで、砲台がいくつも据えられている。ここで再び腰を下ろして休憩・・・。目指すマクヘンリー要塞は、まだまだ先だ。



フェデラルヒルを過ぎると、荒廃感が否めない工場エリア、そしてあまり刺激の無い住宅エリアなどが続く退屈な道が続く。唯一驚かされたのは、かつて工場や港湾を繋いでいたと思われる線路。一体何本あるのだろうか。もっとも多くの線路は草に覆われて長らく放置されているようだ。



大した距離を歩いた訳でもないが、暑さのせいか疲れも蓄積し、歩くスピードが極端に遅くなった頃、ようやくボルチモア港の入口に築かれたマクヘンリー要塞に到着。砦の上に巨大な星条旗がはためいている。米英戦争時、英国艦隊から雨あられと降り注ぐ艦砲射撃に耐え、星条旗はついに下ろされることは無かったという。

  


シアターでは、米英戦争におけるこの砦の攻防が紹介される。猛砲撃に耐え抜いた星条旗を朝靄のなかに認めた市民の感動が、Oh say can you see, by the dawn's early light ・・・ のアメリカ国歌の詞になっている。紹介ビデオの最後にアメリカ国歌が流れると、スクリーンがあがり、窓の向こうにマクヘンリー要塞に毅然とはためく星条旗が見えるという憎い演出が施されている。



マクヘンリー要塞の城壁は複雑な形をしている。よく見ると、五稜郭そっくりの星型の要塞になっている。19世紀に流行した様式なのかもしれない。



艦砲射撃にただ耐えたというのではなく、陸側もズラリと大砲を並べて反撃していたようだ。



砦の中央部(日本の城郭でいえば本丸)は意外なほどに狭い。、当時の建物を再現した二階建ての兵舎に囲まれた小さな広場では、当時の軍服を着用した鼓笛隊が雰囲気を盛り上げている。



星条旗は米英戦争当時のもので星は15個。大きな旗だ。観光用に設えたものかと思ったが、これが当時、現地の旗職人がありったけの気合いを込めて製作した旗と同じサイズらしい。これほどいい感じにはためく旗って珍しい。勘繰って観察したものの、何の仕掛けも見つけることはできなかった。



売店には、国旗や国歌に纏わる本がズラリと並んでいる。アメリカ国民にとっては聖地とさえ呼ばれる特別な場所だが、アメリカ国民ならずとも、ちょっと感動してしまう場所だ。これからはアメリカ国歌を聞くときの気持ちの入り方が随分変わりそうだ。

 


歩行軌跡。マクヘンリー要塞まで13kmほどのウォーキング。暑さのせいか、20km以上歩いたくらいに疲れてしまった。



マクヘンリー要塞で、時間も体力も無くなって、帰路に立ち寄るつもりだったインナーハーバー散策は諦めて、UBERを呼んでペンステーションに戻る。


シカゴ散策

2018年6月24日(日)


アメリカ出張中の休日、絶好のウォーキング日和のもと、シカゴを散策する。シカゴには何度か来たことがあるものの、ダウンタウンを見て回るのは初めてだ。



まずは、ダウンタウンの北、リバーノースにある宿泊先から東へ少し歩いて、ミシガン湖岸にやってきた。北アメリカ大陸の中央部に位置するシカゴだが、南国ビーチリゾートのような風景が広がっている。



湖といっても、九州と四国を足したより大きい。塩分があろうが無かろうが、この大きさはもはや「海」と言いたい。砂浜には、サブマリンサンドイッチを模した巨大な砂の造形物があったりして、ハワイにでもいるような気分になる。



湖に突き出したネイビーピア(海軍埠頭)。ミシガン湖って、完全に米国の中にありカナダとさえ接していないのに、海軍があるのだろうか。もっとも軍艦の姿は見えず、全面的に遊園地エリアになっているようだ。



巨大な観覧車の下から陸側を振り返ると、湖の向こうに、米国第3の大都市、シカゴの高層ビル群が立ち並んでいる。



ミシガン湖岸に沿って、南に歩いていく。湖岸には、大小様々なプレジャーボートが係留されている。色とりどりの小旗で飾りたてたヨットを見ていると、オーナーのウキウキ気分が伝わってくるような気がする。



さらに南に進んで、今世紀になって整備されたというミレニアムパークにやってきた。ダウンタウンのすぐ東に広がる、シカゴ市民の憩いの場に、現代的な建造物がいくつも設置されている。野外音楽場も、後方の高層ビル群に呑み込まれることのない独創的なデザインだ。



これはクラウドゲートと言われる豆の形をしたピカピカに輝いた巨大なミラーオブジェだ。見る場所と角度によって、映り込む風景が複雑に歪曲するのが、とても楽しい。



クラウンファウンテン。15mほどの立体の表面を大量の水が流れている。一体誰の顔なのかは判らないが、立体を流れる水の上に顔が映し出されたりしている。



メトロポリタン、ボストンとともに、アメリカ三大美術館のひとつに数えられているシカゴ美術館。多くの人にとっては、シカゴで外せない観光ポイントなのだろうが、外観だけ眺めてパスする。この種の巨大美術館を限られた時間で見て回るには無理がある。



美術館の南に広がるグラントパーク。ミシガン湖岸の埋立地に造られた公園だ。シカゴのフロントヤード(前庭)と呼ばれるらしいが、前庭というには広すぎる。公園の中心部にあるバッキンガム噴水も超巨大だ。



シカゴって、ギャングの街の印象も強いのだが、実際に歩いてみると随分美しい街だ。特に湖岸の公園は、道も緑も随分整備され、公衆トイレも多く、小奇麗なゴミ箱がこれでもかというほどに設置されている。



シェッド水族館。屋内水族館としては世界でも屈指の規模らしい。周囲には海生生物をモチーフにした前衛的なアートがいくつも見られる。



水族館から、ノーサリーアイランドと呼ばれる半島が突き出ている。湖岸の砂浜に座り込み、ミシガン湖岸に打ち寄せる波音、大きく広がる青い空と爽やかな風を満喫する。湖を隔てて先ほど歩いてきたダウンタウンの高層ビル群が聳え立つ。歩いてきた道を振り返り、その距離を実感するのは楽しいものだが、この景色のなかではさらに格別な充実感がある。



ノーサリーアイランドの先端にあるプラネタリウム。とてもクラシックな雰囲気の建物の前にある銅像はコペルニクスのようだ。



フィールド自然史博物館前から見たダウンタウンの風景。結構歩いてきたものだが、ここで折り返して、この先はシカゴの街中を探索しながらホテルに帰ることにする。



陸橋で鉄道を渡る。どこに向かう列車かは判らないが、かなりの数の車両を連結した二階建の車両が駅に停車している。



高層ビルに囲まれた無機質になりがちな空間にも、アートが施されている。巨大な人間の下半身が立ち並んでいたりする。




シカゴヒルトン。築90年の超名門老舗ホテルなのだが、間近に見るとその荘厳さに驚かされる。ロビーも古いハリウッド映画に出てくるような、重厚感に溢れる造りだ。



ダウンタウンには古いビルと新しいビルが混在している。築後百年ほどではないかと思われるビルだって、20階建ほどもある石造りの立派な造りだ。地震の心配が無いこともあるだろうが、アメリカにはビルの耐用年数という概念が無いように感じられる。



ダウンタウンの東にあるウィリスタワーにやってきた。以前はシアーズタワーの名称で世界一高いビルだったのだが、シアーズの営業不振のため売却されて名称も変わってしまった。110階建の超々高層ビルだが、周囲のレトロなビルに比べると味も素っ気も感じられない。



ビル群のなかに設置された鉄骨剥き出しの高架のうえを鉄道が走り回っている。



ようやくシカゴ川までやってきた。ここを渡るとリバーノース地区になる。シカゴ名所の橋の周囲では、スケートボードで颯爽と走り回っている人が何人も見られる。



観光客を満載して、シカゴ川を下る観光船。あまり見どころの無いビジネス街との印象が強かったシカゴだが、とても爽やかな美しい観光都市でもあることを思い知った。



歩行軌跡。22km歩いたことになっているが、20km以降は、ショッピング街でウロウロしていただけ。



わずか1日で大都市シカゴが判ったとは言えないだろうが、いい意味で期待を裏切る美しい町だった。好天に恵まれたこともあって、とても満足感の高いウォーキングで良い休日を過ごせた。