大原戸寺~二ノ瀬(京都市)

 2024年4月30日


大原戸寺から、京都一周トレイルを再開。昨日来の雨が11時には止むとのことだったけど、11時を過ぎても未だ小雨が降り続いている。山も深い靄に包まれて、先行き不安。でも暑いよりはマシ、とポジティブに考えて出発。



山間の田園地帯を進む。どうやら柴漬けに欠かせない赤紫蘇を栽培している畑のようだ。農地の規模などを見ると、京野菜が総じて高価なのは、ブランド力というより、小規模な農地で丁寧に作られているからだと感じる。



ちょっと危なげな橋を渡って、山へと入る。川の流れが速いように感じる。山の路面が荒れていなければいいんだけれど…。



杉林に囲まれた林道を進む。ところどころ水溜まりがあったり、川のように水が流れるところもあるけれど、歩くことに支障はない。ただ、雨は気にならないものの、木の枝から落ちてくる大きな水滴がしばしば頭上を襲われるのは厄介だ。



延暦寺~大原では、見かけることが無かったクマ注意の看板が再び登場する。昨年の11月16日に目撃されたということだけど、とっくに冬眠から目覚めて活動を開始しているはずだ。無いよりマシという程度にしか信頼していないものの、熊鈴をしっかりと装着して進む。



一旦自動車道に出て江文峠。見覚えがある京都バスのバス停がある。時刻表にバス発着時刻の記載はなく「この停留所にバスは参りません」と丁重ながらも冷淡な文字が並ぶだけ。バス停があるのだから路線廃止ではなく休止扱いなのだろうけど、再開はたぶん難しそうだ。



京都一周トレイルの北山コースは、古来から往来道がそのまま利用されている。勾配を極力避けて道はできる訳だから山の間を縫うように進む。左右にはいくつもの登山口が見られる。行きがけの駄賃よろしく二つ三つピークを取りたいとも思うけど、そんな時間はない。



静原の里に下りてきた。歩き始めて1時間ほど経つけれど、雨は相変わらず降ったり止んだり。そろそろ上がるはずなんだけど…。



山に囲まれた静原は大都市京都の中とは思えない自然豊かな集落。流れる水は清らかで、蛍なども棲息しているようだ。



山吹の花。山吹色という以外に形容しようもない特別な黄色だ。一番好きな花かも、と思ったりもする。



などと思っていたら、強力な対抗馬が現れた。ツルニチニチソウだ。なんて可憐な花弁だろうか。控え目な紫色も相まって雅な風車を連想される。



静原の里を過ぎ、薬王坂へと向かう。まだ舗装路だというのに、ひどく勾配がきつい。こんなにきつかったかなぁ…。雨は止まないし、だんだんイヤになってきた。うまい具合に雨が掛かりにくいベンチがあったので、コンビニで買ってきたおにぎりをパクつく。



昼食休憩の間に雨はあがったようだ。しかし薬王坂への道は楽じゃない。食事の後は、体がクールダウンしているせいか、胃の動きが活発化しているせいか、足の動きが悪くなるし、息がきれやすくなる。以前は栄養補給するとすぐ元気になったものだが…。



阿弥陀二尊板碑が倒れたままに放置されている。随分前に大木もろとも倒れてしまったと聞いたけれど…。南北朝時代、尼僧が亡き夫の菩提を弔うために建立した二体の阿弥陀像も悲しそうだ。京都は、古跡が多すぎてむしろ古跡を大切にしない風潮があるようにも感じる。



薬王坂。伝教法師最澄が鞍馬で彫った薬王菩薩像を比叡山に持ち返る際、実際の薬王菩薩に出会ったと伝わる平安時代からの古道だ。牛若丸が鞍馬を出奔して奥州平泉に向かったのもこの道のはずだ。



薬王坂を過ぎると、鞍馬へと一直線に下るだけ。次回の行程をなるべく楽にするため、二ノ瀬を越えて山幸橋までは進みたい。少々遠回りにはなるけれど、二ノ瀬を過ぎると高尾まではバス停がなく、今の脚力で歩き通すのは結構つらそうなのだ。



鞍馬に下りてくると、鯉のぼりが出迎えてくれた。もう明日から5月だ。山の中でも今年初めてヒルも目にした。暑くなるのも厄介だけど、蛇やら虫やらが元気づくのも鬱陶しい。



鞍馬寺の山門の前を素通り。しばらく鞍馬山も貴船山も歩いていないけれど、簡単に立ち寄れるほど簡単な道ではない。一日がかりのハイキングコースだ。



鞍馬川に沿った鞍馬街道を歩いて二ノ瀬へと向かう。昨日来の雨のせいか、勢い良く水が流れている。鞍馬の由来は「暗」というが、今では観光客も多く、とても明るいところだ。



叡山電鉄鞍馬線の鉄橋。深い峡谷を列車が渡るところを撮りたいと思ってしばらく待っていたけれど、そう都合よく列車が来るはずもない。



貴船神社一の鳥居。薬王坂で出会った香川からの健脚ハイカーと再会。二ノ瀬駅まで行くということなので一緒に向かうことにするけれど、雑談に熱中したせいで、二ノ瀬を大きく通り過ぎてしまった。遠来のハイカーに申し訳ないことをしてしまった。



二ノ瀬から夜泣き坂、向山を越えて山幸橋まで行くつもりだったのに、雨脚が急に強まってきた。レインポンチョは持ってはきたものの、この先の急坂に向かう気にはなれない雨だ。



天気予報を確認したところ、雨があがるまでに35分。午後からは降らないとの予報だっただけに、どこまでアテにして良いものか…。ここで35分足止めを食らっていたら、最終バスに間に合わない可能性があるけれど、かと言って雨のなか山へと向かう気にもなれない。



で、結局二ノ瀬駅から叡電で撤退。以前と比べて脚力も落ちたうえに、天候にも恵まれず、全然思うように進まない。次回は最低限高尾までは歩かないといけなくなってしまった。20㎞近くはあるはずだ。



距離10.5㎞、獲得標高441m。所用時間は3時間49分。時間的にも体力的にも余裕はあっただけに、もう少し先に進みたかった。




横高山・水井山(京都市)

 2024年4月25日


先日は北白川から比叡山に登り坂本に下山。今日は延暦寺から京都一周トレイルの続きを歩きたい。もっとも再び比叡山登山をする気にもなれず、坂本からの始発(朝8時)のケーブルで山上を目指す。これが公共交通機関では最も朝早くに延暦寺に到着する方法なのだ。



ケーブル駅から10分ほど歩くと延暦寺の受付が現れる。ハイキングなので通過するだけと言えば無料になるというけれど、実際には参拝するハイカーが多いことが問題になっている。自ら参拝料を支払うと、それまで監視するような目で見ていた係の方が急に愛想よくなる。



朝早いこともあって、境内はほぼ無人。とても清々しい。生放送なのか録音放送なのかは判らないけれど、読経がスピーカーから流れてくる。朝の定例放送なのだろうか。



「一隅を照らす」という最澄の言葉は天台宗で大切に受け継がれている教えだ。肉太の筆字で書かれたものばかりだったはずなのに、余計な厳めしさを感じさせないためか、外国人参拝者への対応のためか、境内にはローマ字付のシンボルマークのようなものが見られる。



ハイカーば無料だという話はよく聞く。境内にはそれを裏付けるような看板もあるけれど、解釈を間違っている人が多い。ケーブルで来ようとマイカーで来ようと、かなり歩かねばならない。ここでは誰もがハイカーなのだ。問題は境内を通過するだけなのかどうかなのだ。



静寂な東塔エリアをゆっくりと堪能した後は、西塔エリアへと向かう。お寺は早朝に限るなぁ…とつくづく思う。混雑した昼間より、遥かに有難みを感じる。もっとも朝早くに起きて活動開始をするというのは、未だに苦手なんだけど…。



東塔エリアの出口で参拝券のチェック。結構厳しくなっているような気がする。ところが西塔エリア入口には誰もいない。未だ朝が早いからかなぁ…。京都一周トレイルをするハイカーが、参拝料払え、いや払わない、のやり取りをしていることが多いところだ。



にない堂。弁慶が渡り廊下を天秤棒にして担ぎ上げたという。京都一周トレイルルートは、参拝券チェックポイントの手前で分岐するんだけど、その脇道からもこの先にある西塔(釈迦堂)に容易に入れるんだよなぁ…。このいい加減さも混乱の一因になっていると思う。



西塔エリアと横川エリアを結ぶ峰道と呼ばれる尾根道を進む。朝靄が立ち籠める石仏の道を進むのはとても気持ちがいい。アップダウンが少ないことが有難い。



標高は700mくらいだろうか。峰道沿いには桜が未だ咲いているところがある。他に歩く人の姿は見られないのだけれど、トレランをしている人は何人か見かける。GW明けにトレランの大きな大会があるからだろうか。比叡山の山中を50㎞とか80㎞とか走るらしい。



気持ちいい~。杉だと思っていたけれど、樅の木なのかもしれない…。これだけ山歩きをしているというのに杉、檜、樅など針葉樹の区別が十分つかない。何度も勉強したんだけど、これがなかなか簡単ではない。



横高山の登り口の手前にある玉体杉。御所が見通せるこの場所で、行者が天皇の健康を祈ったところらしい。木の根元にある石が蓮台石と言われる行者が祈祷する神聖な台石なんだそうだけど、多くのハイカーはそんなことは気にせず休憩ベンチに使っている。



写真左が比叡山頂。朝靄は晴れてきたけれど、京都の町はそれほどクッキリとは見えない。でも御所の緑は十分に確認できる。



横川中堂へと向かう道と別れて、いよいよ難所の横高山への急登に挑む。初めて来たときは、ここは道なのかぁ、と不安になるようなところだったけど、今ではところどころに標識が立っていて、方向を見失わないような配慮が施されている。



覚悟はしていたけれど、ひどい急登だ。根っこビッシリの坂を攀じ登っていく。朝露のせいか、未だ湿り気があって滑りやすい。歩くだけでも大変だというのに、こんな道をトレランするというのが信じられない。



横高山(767m)登頂。短い距離ではあるけれど、急登制覇による達成感と疲労感は半端ない。ここでしばらく休憩。この先の水井山がさらに厄介な急登なのだ。



一旦下って、水井山へと向かう。最大斜度では横高山ほどではないかもしれないけれど、こちらの坂の方が距離が長い。



水井山(793m)。やれやれ疲れた…。京都一周トレイルではここが最高標高だというけれど、頂上は質素。座り心地のよさそうなところがあまり見当たらないけれど、濡れた倒木に腰を下ろして休憩。



あとは下るだけ。杉?の中を貫く下り坂を進んでいく。が、ここからの下り坂が要注意なのだ。ストックを取り出して、慌てず慎重に進んでいく。



何本もの道が交わる仰木峠。かつて牛若丸が鞍馬を脱出し、奥州平泉に逃れた際に通った道らしく、仰木峠で平家の待ち伏せに遭ったとも聞く。待ち伏せするならここしかない、という要衝だ。この先、鞍馬まで続く京都一周トレイルは、牛若丸の道とも言える。




京都一周トレイルはこの先ボーイスカウト道と呼ばれる急坂を進む。案内にも「急坂注意」と書かれているし、12年前にも散々苦労して下った記憶がある。ここは遠回りでも東海自然歩道を下って野村別れを目指そう。



牛若丸がどの道を通って仰木峠を目指したのかは知らないけれど、ポンコツハイカーには東海自然歩道が間違いなく合っている。荒れたところもあるけれど、勾配は穏やかだ。



仰木峠から1時間ほどで大原の里に下山。正午あたりから急に暑くなり始めた。まだ時間も早いので、このまま鞍馬に向かうか迷っていたけれど、気温の高さと目前の北山の高さの双方に進む気は失せてしまう。



シャガの花(たぶん)が多く見られる。アヤメ科の花のようだけど、小さくて可愛い。漢字では射干と書くらしいけど、絶対に読めない…。



野村別れに下山したけれど、ボーイスカウト道の下山口になる戸寺まで進んで今日はお終い。ほとんどが下り道だったというのに12年前の半分のペースでしか進めていない…。歩行距離10㎞、獲得標高は上りが492m、下りが938m。所要時間は4時間50分。