2025年7月2日
未だに思わしくない右膝の痛みに加えて、6月後半からの驚異的な暑さに辟易し、すっかり山歩きもご無沙汰となっていたけれど、見頃を迎えている「ぬかた園地」の紫陽花を目指して石切から生駒山に登ってみることにする。暑さを極力避けるため、7時前のスタートだ。
石切から辻子谷ルートで生駒山を目指す。かつては急峻な谷川に多数の水車が並び、精米、製綿、さらには銅や真鍮の伸線などにその動力が活用されていたという。現在では近年復元されたものが僅かひとつあるだけだけれど、産業用だけに結構大きい。
以前は辻子谷はかなり楽な道だと思っていた。12年前には石切から生駒山上遊園まで休憩無しで80分ほどで登っている。坂の勾配は変わらないのに、今では息切れが激しい。若い頃と比べると寂しくなるばかりだけれど、無理せず、膝を労りながらゆっくり登っていこう。
山頂手前にある興法寺との関係だろうか、多数のお地蔵様が並んでいる。お地蔵様に出会う度に手を併せて拝んでいくと、息を整えながら楽に山道を登っていけるという「発見」をしたのも随分と前のこと。今ではお地蔵様に出会う度に座り込みたくなる。
辻子谷も後半は石段や丸太階段が多くなる。さほどの段差はないけれど、この程度の段差でも今の膝にはちょっとキツイ。涼しいうちに歩き通したいと思うものの、痛みが増さないよう、適度に休憩を挟んでいく。
興法寺。行基の手による千手観音を本尊として、役行者が開基し、弘法大師空海が諸堂を整備したと伝わる。日本の仏教史における3大スーパースター(と私は思っている)の事績が交叉する古刹なんだけど、今日は参拝する気力も体力も無い。
以前は辻子谷の登山道からそのまま生駒山山頂に登れたものが今では通行止。土砂崩れとかいう話も聞くけれど、実のところ生駒スカイラインの徒歩横断が問題なのではなかろうか。まあ今日の主目的はぬかた園地なので、山頂を手前に南進。大阪平野はひどく霞んでいる。
ぬかた園地のあじさい園に到着。手毬のような紫陽花がたわわに咲き誇っている。実のところ紫陽花の花は驚くほど軽く、茎も垂れ下がらないため、「たわわ」という言葉は不適当なのだろうけれど、他に適当な形容が思い付かない。
およそ1500mの遊歩道に沿って水色、ピンク、白など、多様な紫陽花が咲いている。紫陽花しかない道なのだ。実はこの道、紫陽花のピークも終わり、茶色く枯れた花ばかりが残る寂しい時期にしかこれまで訪問することが無かったのだ。
ガクアジサイも多くみられる。一見地味に感じるけれど、よく見るとなかなか可愛い花だ。ホンアジサイと同様、様々な色がある。
紫陽花って、虫が付きやすいという印象が強いんだけれど、ここは何故か虫の気配を感じない。葉も虫に齧られたようなところが見当たらない。かなり力を入れて手入れしているのだろう。
虫は見当たらないけれど、園内の池では大きな声でウシガエルが鳴いている。池の畔にいた大きなウシガエルの写真を撮ろうと近づくと、一斉に池に飛び込んでしまい、鳴き声も止んでしまった。長らく見張っていたんだけれど、相当警戒されているようで姿を見せない。
朝9時頃に着いた時にはほぼ無人貸し切り状態だったというのに、その後続々とハイカーがやってきた。平日とはいえ、皆ここの紫陽花を目当てにやってきたようだ。
紫陽花の花の色は、アントシアニンという色素の影響だと聞く。土壌が酸性だと青、アルカリ性だと赤だという。日本は酸性度が高い土壌が多いせいで青の紫陽花が主流らしいけれど、ところどころ赤いものも見られる。何か土壌に工夫を加えているのだろうか。
のんびりとあじさい園を堪能した後、生駒山上へと向かう。以前は生駒スカイウェイを適当に横断していたのだけれど、今では辻子谷から山頂に向かうには、スカイウェイの下にトンネルがある摂河泉ルートまで迂回しなければならない。結構狭くてしんどい道なのだ。
徐々に気温が上がってきた。今日の最高気温は35度だという。空がどんよりして日射しや齢うえにここまでの道は日陰も多く風もいい感じに吹いていたのが助かったけれど、次第に晴れてきた。汗もひどくかなり疲れてきたところで、生駒山頂の無線塔群が見えてきた。
季節外れとも思えるツツジが咲いている。街中では滅多に見かけることが無くなったクロアゲハが何羽もツツジの蜜を求めてやってきた。
開園直後(朝10時)の生駒山上遊園地はガラガラ。でもトイレもゲームセンターも涼しくて、つい長居してしまう。聞いたことも無い歌謡曲が大音響で流れている。なんとうるさく、でもなんと寂しい遊園地なんだ…と思っていたけれど、徐々にお客さんが増えてきた。
良く知られているように生駒山頂(641m)の三角点はミニトレインの線路内にある。何とかならんかったのか、と常々憤慨していたものが、最近ついに線路外に新たに山頂碑が建てられた。でもこれがひどくショボい。記念写真を撮りたくなるようなものが欲しいものだ。
山上遊園地で長らくノンビリしているうちに、日射しはどんどん強くなってきた。山頂碑はショボいけど、遊園地の自販機は3~5割増しの山プライスなもんだから、飲料購入をケチって生駒駅に向けて下山開始。鉄製の手摺りがメチャクチャ熱くなっている。
暑~い。もう歩きたくなくなってきたぞ。ケーブルで下山しようかと本気で考え始める。でも登山スタイルで途中駅からケーブルに乗るなんて恰好悪くてできない。
徐々に重くなる足取りで、生駒昇天とも呼ばれる宝山寺の参道まで下りてきたけれど、立ち寄る元気はもはや無い。階段を見るだけでも鬱陶しくなる。
生駒駅から生駒昇天まで延々と続く参道を下っていく。料理屋なども多くかなりの参拝者が訪れるようだけど、平坦部と階段部が交互に現れる子の参道は下るのさえ厄介だ。あと生駒駅まであと1㎞というのに、公園のベンチで自販機の飲料をがぶ飲みしながら長い休憩。
上から見ると平坦部ばかりが見えるけど、下から見ると階段部ばかりが目に入る。駅か宝山寺まで1000段以上あるという。
距離9.1㎞、登り獲得標高700m、所要時間は5時間50分。遅くとも午前11時までには下山するつもりだったのに、休憩ばかりしていたせいで蒸し返すような暑さの生駒駅に到着したのは12時半。気楽と思われた生駒山でこの疲れようでは、もはや夏に登る山が思い付かない。