須磨旗振山~馬の背【六甲山系】

 2026年10月9日


雲ひとつ無い秋晴れ。日中は未だ汗ばむ陽気だけれど、須磨浦公園から須磨アルプスに向けて歩くことにする。須磨浦公園には与謝野蕪村の「春の海ひねもすのたりのたりかな」の句碑が立っているけれど、秋の須磨浦もとても穏やかだ。



句碑が数多く立つ須磨浦公園なんだけれど、メチャクチャ気になるのが、字の間違い。どの句碑も「旬」碑と紹介されている。文学碑を案内するのに、小学生からでも指摘されそうな、あまりに情けない間違いだ。




須磨浦公園には蒲の穂がたくさん見られる。蒲鉾も鰻の蒲焼も、この蒲の穂に由来するという。今では似ても似つかないけれど、元々蒲鉾は竹輪のような形、鰻も棒状に焼いていたという。



いつもは「頂上近道」と案内された階段を行くのだけれど、今日は思うところがあって、緩やかな迂回路を進む。山で近道というのは、急坂という意味だと考えて間違いないのだ。



実は先日の癌検診で問題が見つかり、近々手術をすることとなった。精密検査の次第によっては、もう二度と山など登れないのかもしれない。痛くも痒くもないのだけれど、最近やけに疲れやすいのは、老化や運動不足のせいばかりではないのかもしれない。



月末の手術に備えて、体力を温存しておかねばならないのだろうけれど、最後になるかも、と思って大好きな旗振山からの眺望と、須磨アルプスの馬の背を見ておきたいと思う。ゆっくり、ゆっくり、景色を目に焼き付けながら、休憩ばかりを取りながら登っていく。



展望レストランの前には、確か源平合戦の顔出しパネルがあったように記憶しているけれど、いつの間にかカーレーターの顔出しパネルに変わっている。そのうちに、と思いながらも、カーレーターにはまだ一度も乗ったことがない。



鉢伏山の山頂。特に何もないので通り過ぎるところだけれど、今日はベンチに長々と座る。実のところ、かなり暑く、疲れもたまってきた。やはり体の具合が悪いのだろうか。あるいは気持ちのせいかもしれない。



旗振山まで登ってきた。どの山からの眺望が一番好きか?と尋ねられたなら、迷わず旗振山と答える。低山とはいえ、明石海峡や淡路島を遠望できるここからの眺めは、とても心躍らされるとともに、気持ちを落ち着かせてくれる。



旗振山から神戸、大阪湾方面の眺望も良い。須磨の砂浜から遠く生駒山や金剛山まで見通せる。



最近は頂上に登らず、スルーすることが多かった鉄拐山にも登る。この辺りの山頂には、ベンチが設置されているのが有難い。



ウメバガシの森の中を縦走し、高倉山へと向かう。何度も歩いた道だけれど、この道は平坦で歩きやすく、日射しもいい具合に遮られているので、とても気持ちがいい。



高倉山からの激下り階段。昔は先に見える栂尾山まで山が連なっていたという。今では高倉台という住宅地になった山は全て削られてポートアイランドの埋立に使われた。結果論だけれど、高倉台とポートアイランドの現状を思えば、ちょっとやりすぎたのではと感じてしまう。



一旦下った分は、登らなければならない。栂尾山に向かう通称400階段。とにかく、ここでバテてしまわないよう、途中のベンチで体力を回復しながら、ゆっくりと登っていかねばならない。



ようやく栂尾山。ゆっくり登ってきたつもりだけれど、結構ダメージは大きい。こんなはずじゃなかったんだけどなぁ。ここから須磨離宮公園方面に下山することも、頭を掠めたけれど、やはり今日は馬の背までは歩きたい。



横尾山からの眺め。つい須磨から六甲山系を東へと歩いているように錯覚しがちだけれど、実はほぼ北に進んでいるのだ。そのせいで、旗振山から六甲全山縦走路を進めば進むほど、海は遠くになっていく。



横尾山を過ぎると、いよいよ馬の背。情けないことに結構足腰に疲れが溜まってきた。息もすぐあがってしまう。なるべく万全の体調で馬の背に臨みたく、ここで長い休憩をとる。



振り返れば、ここまで歩いてきた山が連なっている。見た目ほどの距離は無いのだけれど、この景色も、とても好きなのだ。



馬の背に近づくにつれて、花崗岩の岩場が増えてくる。未だに、ここの下りはスムースに下りることができない。いつもへっぴり腰になる。そのうちに、さっさと下りれるようになると思っていたんだけれど、ますます難しくなってきた。



眼下に馬の背が見えてきた。こんな良い天気の日に馬の背に来たという記憶があまりない。いつも寒かったり、小雨交じりだったり、のような気がする。絶好のコンディションだというのに、足元のザレ具合がいつもより気になる。足腰が弱ったせいだろうか。



さて、どこから登ろうか。いつも左か真ん中から登っているので、右から一度登ってみることにしよう。誰もいないので、人目を気にせず自分のペースでゆっくり登れそうだ。



止めときゃ良かった…。右のルートは結構ヤバかった。まあ無事に登れはしたんだけれど、不格好な登り方だっただろうなぁ…。馬の背の標識の下で長々と座り込み、馬の背をしっかりと目に納める。



東山方面に向かう。とても切り立った崖の上に細い道があるところだというのに、こんなときにトレランの人が後ろから急かしてくる。



東山で再びまったり。馬の背を振り返っていると、あっという間に太陽は山影に隠れようとしている。これだから秋は怖い。板宿に下山するつもりだったけれど、最短距離の妙法寺駅へと下山する。



距離7㎞、所要時間5時間。登り獲得標高は610m。休憩ばかりを取りながら、ゆっくりと歩いたつもりなのに、思いのほか疲れた。でも、これで思い残すことは無いなんて言えないよなぁ…。


三国境(枚方市・京田辺市・生駒市)

 2026年9月17日


大阪・京都・奈良の三府県の境界が接する「三国境」に行ってみることとする。JR長尾駅から京阪バスで天王という山間の集落にやってきた。ここから三国境に併せて4つの山頂を踏むという目論見だど、問題はバスの数。12時半のバスを逃すと17時まで帰路のバスがない。



9時半に天王バス停を出発。集落の中の道を登っていくのだけれど、これが大変な急勾配。舗装道とはいえ、いきなりの勾配にアキレス腱への負担が半端ない。



小さな集落を抜けると、いきなり何も無い山の中。道も不明瞭だ。あまり歩きたくない道だけれど、敢えて三国境への道を遠回りして、天王高ヶ峰(305m)という御大層な山名を持つピークを取りに行く。



進めば進むほど、酷い道になってきた。登山地図には赤い線が引かれているのだけれど、登山道の上を歩いているのかどうかも怪しいものだ。山頂の方向は判るものの、竹藪や崖に阻まれて目指す方向に歩けない。



しかも足元には、縦横に電気柵のようなものが張られていて、ますます思う方向に進むことを困難にしている。



山頂まであと50mほどまでやってきたものの、進むことは酷く困難になってきた。勾配は大したものではないけれど、倒木がひどく、山頂制覇は自重することとする。以前なら無理矢理突進していたのだろうけれど、70歳も近くなってようやく大人のハイカーになった気分だ。



ところが、どの道をやってきたのか判らず、戻るに戻れなくなる。方向は判っていても、竹藪などに阻まれて、目指す方向から更に離れていく。GPSで位置は確認できているとはいうものの、進むに進めないのだから、これってちょっとした遭難ともいえる。



厄介なことに、蚊や虻がメチャクチャ多い。最大の問題は、多数のトゲトゲの枝が行く手を塞いでいること。半袖で来るようなトコじゃなかった。やむなく方向を変えるが、新たなトゲトゲが待ち構えている。



もはやトゲトゲを恐れている訳にもいかず、背の高さほどの草叢を掻き分け、登山道を目指す。しばしばトゲトゲにシャツが引っ掛かって身動きできなくなるし、両腕はトゲトゲと蚊と虻にやられて、傷だらけになってきた。



長い彷徨の末、ようやく登山道に辿り着いたことをGPSで確認。これが道?というような雰囲気だけれど、ここまで進んできた藪と比べれば、何と歩きやすいことか。



天王高ヶ峰への寄り道で、体力の50%、気力の90%は早くも消耗してしまった。計画より30分以上も遅れているので、予定のバスに乗るのは絶望的だ。こうなると割り切ってキノコを散策しながらノンビリ三国境を目指そう。カバイロツルタケの幼菌と成菌の違いが面白い。



今年は高温のうえ雨が多くキノコが異常発生しているという。探すまでもなく多種多様なキノコが目に飛び込んでくる。Googleレンズで検索するけれど、似たものが多く同定が難しい。ドクツルタケか、シロテングタケだろうか。どちらも毒キノコだ。幼菌と成菌が揃っている。



気が付くと道にはアチコチに掘り返されたような跡が見られる。おそらくイノシシによるものだろう。イノシシもキノコを食べるというけれど、それにしてはキノコが多く残っているものだ。野生の嗅覚で毒キノコなどは食べないのだろうか。



キノコの同定に夢中になっていたせいか、いつの間にか天王峰(300m)の山頂を通り過ぎ、目的の三国境に到着。大阪府(枚方市)、京都府(京田辺市)、奈良県(生駒市)の3市が交叉する点だ。訪れる人は多くはないだろうけれど、洒落た標識があるのが嬉しい。



三国境を過ぎると竹林の中の道。これまた障害物競争のような道になっている。普段ならうんざりさせられるような倒竹だけれど、地獄のような序盤の徘徊に比べれば、なんて歩きやすい、とさえ思ってしまう。



標高は250mほどだと思うけれど、ちょっとした池がいくつかある。何かいるかな?と思って近づくと、池の畔のアチコチでポチャンという音がする。おそらく怪しい人影を察して蛙が慌てて飛び込んだのだろう。秋の蛙は動きが悪いというけれど、素早くて姿が確認できない。



気温は27~28度。9月も中旬になってようやく外歩きもさほど苦痛ではなくなってはきたけれど、やはり蒸し暑い。まあこんな気候がキノコたちの大好物のようで、彼方にも此方にも大小様々なキノコが顔を出している。



竹林の細尾根を伝って千鉾山のピークを取りに行く。道は決して明瞭ではなく、登る人も多くはないのだろうけれど、木の幹に赤テープが巻かれているのが有難い。



最初は何かプラスチック製の人工物にしか見えなかったが、よく見るとキノコだ。ペットボトルを横に置いて比べてもかなり大きく、まっすぐに凛とした立ち姿だ。柄に付いた白い布がマントにも見えることでマントカラカサタケと呼ばれているものようだ。



無事千鉾山(311m)に登頂。結構しっかりした山頂標もあって、それなりに登って来る人もおられるようだ。



長畑山を経て天王バス停までの周回を考えていたのだけれど、序盤のプチ遭難に加えて、中盤はキノコ観察三昧となってしまい、予定のバスには到底間に合わない。そこでプランBを発動し、コースを大幅カットして生駒方面へと下山。栗の実が大きく膨らんでいる。



これは葛の花。周囲にはシオカラトンボが飛び交っていて、なんとかカメラに納めたかったのだけれど、あまりに素早くて無理。アカトンボと違ってほとんど休憩無しで飛び続けている。



稲穂も少しずつ頭を垂れ始めている。まだ本格的な山歩きをする気にはなれない気候だけれど、確実に秋は近づいているようだ。



奈良交通の高畑口バス停。ここからなら1時間に1本、北生駒駅へのバスがある。それにしても、両腕の擦過傷が酷く、数か所で出血している。こんな傷だらけの68歳なんて、今どきあまりお目にかからない。大阪を通って電車で帰らねばならないけれど、カッコ悪いなぁ…。



距離4.5㎞、登り獲得標高250m。所要時間3時間。これだけの数字を見ればお気楽山歩きでしかないんだけれど、かなり疲れた。腕は傷だらけだし、思った以上に暑くも感じた。一旦座り込むと、歩きだすのが随分と鬱陶しく感じるなど、体力の低下も痛感した。