沼島(南あわじ市)

 2026年6月15日

淡路島の南3㎞ほどの沖合にある沼島に出掛ける。古事記や日本書紀によれば、イザナギとイザナミが混沌とした地上を掻き混ぜた際に矛から滴り落ちたものがオノジロ島となり国産みが始まる。その島がどこか、いくつも説があるけれど、沼島が長年最有力なのだ。



淡路島の南端、土生港を9時に出る定期船で沼島に向かう。平日ではあるけれど、観光や釣りを目当てにした乗客が続々と乗り込む。想像していたよりも立派な船で、定員80人ほど。沼島に向かって快速に波を切って進んでいく。



10分弱で沼島に到着。面積は2.7平方㎞。神戸空港とほぼ同サイズだ。人口は300人ちょっと。ほとんどが港の周りに住居を構えているようだ。



さあ、この島を一周する訳だけれど、海岸に沿って道がある訳ではなく、ほとんどは山の中を歩くことになる。人が住んでいるのは港周辺だけで、残りはすべて山地と言っていいだろう。港から反時計回りに歩き始め、まずは「おのころ神社」を目指す。漢字では自凝神社だ。



山道を歩いていくと、長い階段が現れる。この階段の上に神社の拝殿・本殿がある。どうやらこの辺りの山全体が神体山となっているようだ。



イザナギとイザナミが寄り添う像がある。ここに降り立った二神は結婚し、淡路、次に四国…と、国造りを始めたという。科学的には荒唐無稽でも、古来多くの人が何か特別なものを感じてきたからこそ、この辺鄙な島が国産み神話の舞台として語り継がれてきたに違いない。



おのころ神社の正面参道は良い道だったけれど、裏手から東へと続く道はかなり荒れている。ただでさえシダ類が蔓延っているうえに、倒木がひどく多い。



どうやら島を一周する道はミニ八十八ヶ所巡りとなっているようで、ところどころに石仏が立てられている。ミニといっても島全体を回る訳だから、半日くらいは掛かることになる。



クチナシ。星型に広がった白い六弁花が可憐だ。渡哲也のヒット曲「くちなしの花」をつい口ずさんでしまう。50年ほども前の、しかも全然好きでもなかった曲で、これまで口ずさむようなことも無かった曲なのに、歌詞をほぼ覚えていたことに驚いてしまう。



おのころ山。標高は117m。山頂は草ぼうぼう。眺望もなく、山頂碑も見つけられないけれど、東屋が建てられている。



しばらく歩くと、これから向かう島の北側の山地を見渡すことができる。標高100mほどしかないんだけれど、まるで平地が見られない。近いはずの海も見えず、相当山深いところにやってきたような感覚になる。



これはオカトラノオ(丘虎の尾)。白色の小さな花をつけた茎が虎の尾のように垂れ下がることから名付けられたようだ。



サクラソウ。ピンクの小さな花が可愛い。ガーデニングでは定番なんだけれど、野生ものを見かけることはあまりないように思う。



2つの画像認識AIは、「オオシロカラカサタケ(大白唐傘茸)」、「ヒメホコリタケ(姫埃茸)」と違う答を示す。前者は猛毒だ。これだからキノコは難しい。とか何とかいいつつ、先日姫路の南山で見つけた「アカヤマドリ」は惜しいことをしたと、まだ心残りがある。



東海岸に出て、いよいよ上立神岩が見えてきた。この岩こそが、イザナギ・イザナミが造った最初の中の最初の陸地だとも言われるし、混沌とした大地を搔きまわした天沼の矛だとか、竜宮城の表門だとも言われる。とにかく只者ではない奇岩であることは確かだ。


近くから上立神岩を見るため、海岸まで下りてみる。高さは30mほど。細く尖った岩が、空に向かってまっすぐに立っている。関東から九州にかけて東西に長く連なる活断層、中央構造線が沼島の下を走っているという。こうした奇岩が多いことと無縁ではなかろう。



上立神岩をよく見ると、表面にハート型の窪みが見られる。イザナギ・イザナミ伝説で、既に最強のパワースポットであり、恋愛の聖地なんだけれど、ハート型の窪みのせいで恋愛成就を求めて訪問する人が増えたという。



テリハノイバラ(照葉野茨)。普通のノイバラかもしれないけど、棘のある葉に光沢があるので、テリハノイバラっぽい。画像認識AIも花に関しては、かなり信頼できるようになってきたように思う。



島の東側を北に、石仏山へと向かうが、道には電柱が並んでいる。人家なんて全くないところなのに、どうして電柱があるのか、訝しく思いながら進んでいく。電柱の設置理由はこの後判明することになる。



島を一周する間に、10ケ所ほどもイノシシの罠が仕掛けられている。イノシシが罠にかかった場合に備えて無線通報装置や撮影装置も併設されている。実は15年ほど前に淡路島からイノシシが泳ぎ着き、今では島民の数を上回るイノシシがこの島に跋扈しているそうだ。



石仏山山頂には沼島灯台が立っている。電柱設置の理由はこの灯台への電力供給なのだ。灯台はあるんだけれど、周囲は木に覆われていて、灯台の上に登らないと海は見えない。石仏山の標高はおのころ山と同じく117m。正確には10㎝上回っていて、沼島最高峰となるようだ。



長らく眺望のない山中を歩き続けたけれど、島の北側まで来て、ようやく所々で海が見えるようになった。正面は淡路島。そしてその右にあるのが紀淡海峡と友ヶ島だ。



町に戻ってきた。ごく狭い平地に瓦葺の和風民家がギッシリと並んでいる。どこか懐かしい昭和を彷彿とさせる街並みだ。道も複雑で、目を付けていた食堂に辿り着くまでに随分と道迷いを繰り返した。



上立神岩を見ることと並んで、沼島訪問の大目的であった鱧を昼食でいただく。この季節の沼島は鱧漁で知られる。おそらく獲れたての油の乗ったフワフワの鱧を天ぷらにしていただき、藻塩で頂戴する。文句なしに旨い。これまで食べたなかで最高の鱧だと断言できる。



予定どおり13時20分沼島発の定期船で淡路島へと戻る。ここまで予定どおりのスケジュールで完了することも珍しい。再び島を一周することはないと思うけれど、鱧はまた食べたいものだ。秋の鱧もより濃厚な味がして美味しいらしい。今度来るときはハモチリも食べたい。



距離は8.7㎞、登り獲得標高は480m。所要時間は約3時間半。船の出発時刻や食堂の開業時間に合わせるために珍しく綿密に計画を立ててきたけれど、すべてが予定どおりに進んだ。ここまでスケジュール通りに終わるととても気持ちいいものだ。




三輪山(桜井市)

 2026年6月11日


一度は登りたいものだと考えていた、大神神社のご神体である三輪山に出掛ける。遠目にはさほど厳しい山には見えないけれど、気軽に登っていく山ではない。登山ではなく登拝なのだ。多くのルールを守りながら、敬虔な気持ちでご神体山に入っていかねばならない。



実はちょうど1週間前三輪山に登ろうと大神神社までやってきたのだけれど、前日の台風の影響だろうか、参拝道の整備のため登拝の受付は中止されていたのだ。



一週間ぶりに戻ってきた大神神社。日本最古の神社のひとつと伝わるだけに、平日とはいえ、随分と多くの参拝客が訪れている。




幸い今日は登拝の受付はあるようだ。登拝受付は朝9時から12時まで、山頂にある磐座との往復に要する時間は2~3時間だという。



大神神社の静謐な参道を進みながら、ご神体山に向かう気持ちを整えていく。もっとも今日の予想最高気温は30度。気持ちを整えても暑さに苦しめられそうだ。



まずは大神神社にお参り。三輪山がご神体であるから、本殿はない。拝殿を通じて三輪山を拝むのだ。ご祭神は国造りの神様、大物主大神。大いなる物の主だ。



拝殿から少し北、摂社のひとつ、三輪の神様の荒魂をまつる狭井神社が登拝の受付所だ。多くの人が登拝の手続きをしている。10名ほどの団体もおられるし、裸足で登拝しようとしている女性もおられる。



始めての登拝者には、注意事項などの簡単な説明がある。水分以外の飲食禁止、撮影・スケッチの禁止、山中の草木や石の採取の禁止など、多くの禁止事項はあるものの、神体山であるのだから当然と思えるルールばかり。ちょっと心配なのはトイレが無いということ。



参拝の許可をいただいた印として、鈴が付いた白い襷をお借りして首にかける。これで更に敬虔な気持ちが高まる。さらに登拝の前には、自祓をし、身の穢れを清めるのだ。



社務所で頂戴した案内図。かなり難所が多いようだ。午後3時までに帰ってこなければ遭難したと見なされるようだ。迷惑をかけずに無事登拝をしたいものだ。



登拝中は撮影禁止。登拝の間に見たこと、聞いたことは口外してはならないという古くからの習わしもあるという。有難いことに往復1時間45分ほどで標高467mのご神体山の登拝を終えることができた。参道の食堂で名物のにゅうめん+柿の葉寿司を頂戴する。



距離5.3㎞、登り獲得標高410m、所要時間は2時間半ほど。




姫路西部7低山縦走(姫路市)

 2026年6月9日


姫路市の最西部、JRの御着駅から山陽電車の八家駅にかけて、南北に7つの未踏峰が並んでいる。100mあるかないかの登る人も少なそうなマイナーな山だ。遅くなったけど御着駅からのスタートは13時前。姫路工業団地の向こうに目指す山々が見えてきた。



この山についてはあまり情報が無く、ひょっとしてとんでもない悪路が続くのでは、と心配していたのだけれど、意外にも凄く良く整備された道が続く。特にベンチの数が随分と多く、ベンチの向こうには常に次のベンチが見えるような状態だ。



ところどころではあるけれど、眺望も悪くない。以前登った高御位山に続く斉藤山や桶居山が見える。登り口から始まる長い岩場にも苦労させられたけど、桶居山の尖がり具合も凄かった。たぶんもう登ることは無いと思う山のひとつだ。



ばかでかいキノコを発見。横に500mlのペットボトルを置いてみたけど、30㎝以上はありそう。その後、画像検索を繰り返したけれど、どうやらこれは「アカヤマドリ」という食用キノコのようだ。ボルチーニより旨いらしく、100gで1000円以上はするようだ。



アカヤマドリ?は4本もあって、合わせれば1㎏くらいにはなるのかなぁ、なんてことを考えながら、引き続きネット検索をしながらノンビリと山道を進んでいくけど、野生のキノコに手を出す勇気はない。道の真ん中に東屋が現れた。どうやらこの先は道が荒れるようだ。



あれほどあったベンチは無くなり、代わりにこれでもか、というほどにピンクリボンが付けられている。オレンジとか青もあって、誰もいない寂しい山中だというのに賑やかな限りだ。



本日の第一峰、南山に到着。別名火山。標高は167mと低いけど、今朝まで降っていた雨の泥濘、高い湿度、そして蜘蛛の巣の多さに辟易しながら登ってきたので、早くもウンザリしてきた。まだこの先6つのピークを獲る予定なんだけど、大丈夫かぁ?



南山から南へと進んでいくと、この先向かう山が見通せるところが現れた。低いけれど、結構勾配は緩やかなものではなさそう。気温が低いことは有難いけれど、湿気の高さには参ってしまいそうだ。



南山を過ぎ、道の整備レベルは下がったけれど悪い道ではない。写真ではかなり歩きやすい快適な道にみえるだろうが、問題は蜘蛛の巣。午後ともなれば、先行するハイカーが蜘蛛の巣を取り払ってくれているものだけれど、今日この道を歩く人は他にはいないのだろう。



自動車道(姫路バイパス)を横断する。次の山の勾配がエグい。なんと山の斜面に山頂までのとんでもない仮設階段が設置されているのが見える。関係者以外は使えないのだろうけれど、怖すぎるぞ。ポンコツはおとなしく西に大きく迂回して山に入っていくことにしよう。



溜絵の具を溶かしたかのように溜池が一面黄緑色になっている。小さな浮草が異常発生しているのだろうか。アオコと呼ばれるプランクトンのせいかもしれないけれど、あまり嫌な臭いがしないので前者なのかなぁ。あまりの毒々しさで近づいて確かめる気になれない。



さあ、これが次なる山の登り口。いかにもマイナーな登山口って感じだ。獣柵を解錠した先は草木が生い茂っているばかりで、道が見えない。



登山口を見たときから覚悟はしていたけれど、藪漕ぎとまでは行かないけれど、かなり鬱蒼とした林を進む。もっとも危険個所は無く、厳しいアップダウンがある訳ではない。



前坂山。標高は71m。なんともショボい数字だけれど、湿気と蜘蛛の巣のせいで標高以上に疲れさせてくれる。このような山にも、手作りの山頂碑を吊り下げてくれているのが有難い。これがあると無いでは、随分と達成感が違う。



大鳥山(89m)、引入谷山(82m)、天日山(62m)、申山(91m)と短時間でピークを獲得してまわる。



順調に4ピークを獲った訳ではない。ひどく荒れた道を進んだ挙句、間違った道だと気づき、慌てて引き返すようなことを繰り返す。南山と違い、この辺りの山はかなり道が不透明だ。



申山の山頂には古墳がある。麓には見田古墳群と呼ばれる7世紀の古墳群があるのだけれど、山頂にもあるようだ。最高所にあるだけに、何やら特別な人物が埋葬されていたのかもしれない。



どうやらこれが「へそ岩」らしい。ここに来るまで案内板はあったのだけれど、肝心の現地には何もない。登山道から突き出た岩だからへそ岩なんだろうか。岩に登る階段が設置されていて展望台のようになっている。



謎の遺跡だとぉ? そんなもの地図には記載されていない。へそ岩だけでもかなりインパクトがあるというのに、謎の遺跡って何なんだ? 登山道のオフィシャル案内だというのに、何のヒントもない。



一体どこに何があるのか。左右をキョロキョロしながら見落とすことが無いよう、ゆっくり進んでいくと、何やら地面に空洞がある。これが謎の遺跡らしい。謎なんだから、これは何だ、という説明も何も無い。



すぐ近くには古井戸の跡などもある。申山の山頂で見たような古墳時代の遺跡ではなく、もっと新しい時代のものに思える。



結局謎の遺跡は何だったのか、合点の行かないまま、最後のピークである鳥谷山(111m)の山頂碑発見。登山道から少し離れた林の中にあって、探し出すのにちょっと時間がかかった。



八家駅へと下山していくものの、この道が大変。もう完全に藪漕ぎ状態。足元は見えないし、急坂だし、転倒しないよう、慎重に進んでいく。半袖なもんだから、おそらく腕は無数の細かな擦り傷を負っているはずだ。



時々、急に前方の景色が広がる。海岸部に広がる街と、その向こうに巨大なタンク群が見える。真正面が山陽電車の八家駅のはずだ。山陽電車は地元では山電と略すんだけど、知らない人にとっては、山間を走る電車に聞こえるらしい。実際は海のすぐ傍を走り抜けている。



距離7.6㎞、登り獲得標高420m。距離も時間も大した山歩きでもなかったはずだけれど、結構疲れてしまった。所要時間は4時間20分。