2026年6月3日
芦屋川隧道の探索に出掛ける。芦屋川は川底よりも周辺の平地が高い天井川として知られる。そのためJR神戸線などは架橋ではなく川底の下を通過している。そして同様に川の下に設けられた歩行者道路には、とても小さな斜行エレベータが設置されているのだ。
JR東海道本線(関西人は神戸線と呼ぶ)の芦屋駅のすぐ西にある芦屋川の川底の下にトンネルがある。見た目はトンネルには見えず、道路との立体交差のようだ。この上に川が流れているのが信じられない気分になる。出口の光も見え、せいぜい50mほどの長さのようだ。
芦屋川にかかる大正橋から南側を望む。この30mほど先の川底にJRが通っていることになるんだけれど、そんな気配は微塵も感じられない。
回り込んでJRの芦屋川トンネルの西側出口にやってきた。JR神戸線では石屋川、住吉川、芦屋川の3ヶ所に天井川の下を潜るトンネルがあるらしい。かつての蒸気機関車では天井川の堤防を登るだけの力が無かったそうだ。
再び芦屋川の西岸の道に戻り、JRの150mほど北側にある月若公園にやってきた。小ぶりな公園には高浜虚子・年尾、稲畑汀子の三代の句碑がある。この公園の下を15年ほど前に全線開通した山手幹線道路が走っている。国道2号線の北を走る阪神間の主要道路だ。
月若公園の西側に回り、山手幹線道路のトンネルの西出口にやってきた。トンネルの上に見える緑が月若公園の緑地だ。上下各2車線の車道は芦屋川の下を貫いているが、側道はそのまま川に突き当たるかのように見える。
側道の先にあるのが、歩行者用トンネルだ。右にあるのは自転車預かり所だ。そして歩行者トンネルの左にあるのが、今日のお目当ての斜行エレベーターなのだ。
歩行者用トンネルの階段は至極緩やかで、自転車用のスロープもある。さらに階段の横に斜行エレベータまで設けられているという手厚さだ。以前ここを通り掛かった際は、乗り方が判らず、何よりエレベータを使うのが気恥ずかしく感じられて乗車を見送ってしまった。
斜行エレベータはアルミの扉により閉鎖されている。自転車はダメとか、非常時の対処方法など、色々と貼り紙は多いけど、要するに「さがる」のボタンを押しさえすせば、この扉は開くようだ。「さがる」という言葉が判りづらいんだよなぁ。「下る」の方が良いのでは。
「さがる」ボタンを押すと、外扉と内扉が同時に開く。さあ、いよいよ4人乗りの斜行エレベータに乗車する。68歳とはいえ、健常者がこの種のエレベータを使用することには抵抗はあるものの、幸い周囲に人はおらず、絶好の乗車タイミングだ。
中に入ると、再びいくつものボタンがある。「あがる」「さがる」「ひらく」「とじる」に加えて、非常停止ボタンと呼び出し通話ボタンだ。混乱する人も多そうだけれど、要するにここでも通常は「さがる」ボタンを押すだけなのだ。
ゆっくり、実にゆっくりと、斜行エレベータが動き始める。間違いなく横の階段を歩く方が圧倒的に早いはずだ。
おそらくエレベータの長さは50mもなさそうだし、高度差は5mくらいじゃないかなぁ…。かなり緩やかな勾配だけれど、これでもかというほどに、エレベータはのんびりと下降していく。
時間を図ることを失念してしまったけれど、おそらくドアが閉まって発車してから30秒くらい?で下に到着。歩けば20秒は掛からないと思う。
到着すると、内扉と外扉が同時に開く。しばらくはこの種のエレベータにお世話になることは無いと思いたいけれど、このような設備を有難く思う日が遠からず来ることになるのだろう。
降りてきた方向を振り返ると、階段は至って緩やか。それでも松葉杖や車椅子では移動できるものではない。かつて山で滑落して、長い入院生活を終えた後もしばらく車椅子や松葉杖での生活を余儀なくされたけれど、健常者には気付けない難所が至るところにあるものだ。
トンネル下部の通路は、市役所の広報や、市民写真展に使われている。照明も過不足なく、監視カメラも多いため、危なっかしさや不気味さは感じない。
東出口への階段。もちろん再び斜行エレベータを使うこともできるけれど階段を登っていく。上に待機している籠を下まで呼ばねばならないし、そんなことをしているうちに歩いて地上に出ることができる。
地上に出ると、車道も同様に地上に顔を出している。実際車でここを走ると、ほんの10秒ほどでトンネルを通過する。歩きまわってこそ、気が付く景色だ。
山手幹線が通過しているのは、この川の下。川向こうに道路が顔を出している。昨日の雨で芦屋川の水量は常と比べて随分と多いせいもあるけれど、川の深さはかなり浅いはずだ。川底とトンネルの屋根の間はごく僅かな仕切りがあるだけのように思える。
平地部が狭い阪神間の河川は急に増水する。大量の土砂流入で河岸が盛り上がり、天井川となりやすいようだ。過去には水害も経験し、普段の水量は少なくとも堤防はかなりの高さだ。薄っぺらく思えるトンネルの天井も、増水を十分考慮した造りになっているはずだ。






