二ノ瀬~高雄(京都市)

 2024年5月18日


ひょんなことから始まった京都一周トレイルも6日め。12年前と比べて2倍のノンビリぺースで進んできたものの、いよいよ二ノ瀬駅から高雄に向けての北山コースに挑む。自販機やコンビニは勿論、バス停さえなく、ただ歩き通すしかないという最難関区間なのだ。



前回は大原戸寺から夜泣峠を越えて、バス停が比較的近い山幸橋まで歩こうとしていたところが二ノ瀬駅で降雨のため無念の撤退。水不足(自販機が1台も無いとは思わなかった)に加えて道迷いも連発してヘトヘトになった前回の経験を生かして水2.5Lを担いでいく。



二ノ瀬からいきなり急坂が続く。やはり雨の中を無理に進むような道ではなかった。しかし今日の京都は今年最初の真夏日となるらしい。暑くなる前に少しでも進みたいけれど、大量の水のせいで、リュックがやけに重い。



40分ほどで夜泣峠に到着。文徳天皇の第一皇子、惟嵩親王が幼い頃に乳母とここで一晩を過ごしたというが、乳母がこの地の地蔵にお祈りしたところ親王の夜泣きが止んだことに由来するらしい。そんなことより、山中で乳母と夜を明かした不遇の皇子が不憫でならない。



夜泣峠から少し登って向山(426m)。今日のコースでは唯一のピークになる。山頂のベンチで少し休憩するが、何だか右膝に少し痛みを感じる。あまり痛めることのない部位だ。気になるけれど、進むしかない。先は長い。無理せずゆっくり進もう。



向山から杉林に囲まれた尾根道を300mほど一気に下る。山登りの常とはいえ、せっかく登ったのに、勿体ないなぁ…と思わずにはいられない。



山幸橋。賀茂川の上流となる。ここから20~30分歩いた京都産業大グランド付近までバスが来ている。このコースでは唯一とも言えるエスケープポイントで、前回のゴールに定めていたところだ。膝の具合は気になるけれど、今日はここで終わる訳にはいかない。



山幸橋を過ぎ、氷室に向かっての登り道が続く。あまり険しい急坂と記憶していなかったところだけれど結構キツイし、気温も上がってきたようだ。水をガブ飲みして進む。



二ノ瀬から山幸橋までの道と比べるとあまり整備されていないところも多く、ベンチなども見当たらない。座り込むところばかり探しながら歩いていく。明らかに歩くペースが落ちてきた。



薄暗い山中から少し開けたところに出ると、日射しの強さに目まいを感じる。何やら大きな箱のようなものをいくつも出して作業をされておられる。どうも養蜂をされているようで、周囲には蜂が飛び交っている。



王子社有林との標識がある。マークを見ると王子製紙のようだ。調べてみると、王子製紙は大阪府の面積にも匹敵する森林を所有しているそうだ。先日は有馬富士の傍で大昭和製紙の社有林を見たけれど、今更ながら製紙会社は森林資源保護に力を入れていることに気付く。



小さな渡渉や、倒木の多い道が続く。この辺りは盗人谷という強烈なインパクトを持つ地名だったはずだけれど、その表示が見当たらない。実際、かつては盗賊が跋扈していたとも聞くけれど、あまりに聞こえが悪いので地名を変えたのだろうか。



盗人谷に架けられている丸木橋。いかにも危なっかしそうだけれど、かなりしっかりした造りだ。多分何年かに一度は架け替えているのではなかろうか。



何本もの道が交差する小峠。設置されていたベンチで長々と休憩。もう歩きたくない、との気持ちが沸き上がってくる。歩き始めて3時間も経つというのに、まだ5㎞余りしか進んでいないことに愕然とさせられる。まだ全行程の三分の一しか歩けていない。



標高400mほどもある氷室の里は田植えの真っ最中。京都市内では30度を超す予報だったけれど、ここは多少は涼しいのだろうか。日射しが強くて涼しいという実感がない。



氷室神社にも立ち寄ってみる。アイススケートの神様のようになって華やかさのある神戸の氷室神社と違って、鬱蒼とした森の中に簡素な祠が立つ。でも氷室は神社の境内から離れた山の中にあったらしい。



氷室からは舗装道を歩くところが増える。楽と言えば楽なんだけど、これがダレる。それに意外に坂がきつくて足腰にも堪える。今日のコースは史蹟や名所が少なく、この先はひたすら頑張って歩くしかない道が続くのだ。



京見峠から再び山の中へ。秋になると松茸山への入山が禁止されるので、大きな迂回を余儀なくされるとの警告がある。冬は雪だし、夏は猛暑、秋は松茸、とこの道を歩くのに適した季節は春でしかない。



京都の町が眼下に広がる。しかし良くみると、見えているのは京都駅の南側だ。京都の中心部は手前の山々に遮られて確かめることができない。



前半の夜泣峠などと比べると大した勾配でもないはずなんだけど、上ノ水峠への登りが辛い。この辺りでようやく10㎞…。今日は全長20㎞近く歩くと考えていただけにだんだん不安になる。あらためて高雄までの残り距離を調べるとあと5~6㎞くらいのようだ。



沢ノ池。どこからか自動車道が通じているようで、何人もの人がキャンプや水遊びをしている。まだ標高は400mくらい。ここから高雄に向かって一気に下っていくことになる。



下りだからといって決して楽な道ではない。随分と細くて暗い激坂が続く。足腰に疲れが溜まっているだけに、転ばないよう、用心して進む。どうしたことか、最近、足腰の衰えをとみに自覚するようになってから、あまり転ばないようになった。



激坂を下り終えて、ようやく歩きやすい林道になる。念のためと2.5リットルも担いできた水も全て飲みつくしてしまったけれど、ゴールは近い。最後の力を振り絞るように歩いていく。



栂ノ尾のバス停で今日は終了。よく歩いてこれたものだ。あわよくば前回同様に清滝まで歩こうと思っていたけど、既にヘトヘト。もう歩く気になれない。



本日の歩行距離15.4㎞。たった一つのピークを取っただけだというのに、獲得標高は1000m
超。所要時間は8時間。開聞岳に匹敵する疲労を感じた。


有馬富士(三田市)

2024年5月15日


朝から小雨模様なので比較的簡単そうに思える有馬富士に登ってみることにする。もっとも標高は低くても、結構な岩場もあって油断ならない山だと記憶している。新三田駅から北へ、登ったことがない金比羅山の登山口から山に入る。



小雨は未だ止まないけれど、さほど気になるほどではない。暑いよりはよほどマシだ。でも路面が意外にも泥濘んでいて、水溜まりも多い。



大昭和製紙の社有地との看板が立っている。雑木林で製紙の材料になりそうな木もなさそうだし、この辺りに製紙工場などあったかなぁ…。そもそも大昭和製紙って、高価な絵画を買ったりで経営破綻したはず。今はダレの林なんだろう…。



グチョグチョになった路面が多いことを除けば、比較的平坦で静かな林を抜ける尾根道が続いていたけれど、金比羅山に近づくにつれて上り坂が厳しくなってきた。



金比羅山(356m)。金比羅宮との扁額が掲げられた鳥居がある。海から遠く離れたところだけれど、海運関係者の信仰を集めている金毘羅さんの系列のはずだ。もっとも本殿に見える建物はトタンで封鎖された倉庫のようになっていて、その傍らに小さな祠があるだけだ。



金比羅宮から少し歩いて、岩場の展望台にやってきた。おそらく前方に見えるのが有馬富士に向かう道の近くにある城ヶ岡(330m)だと思う。随分な急坂だというけれど、遠目にはさほど尖った山には見えない。



有馬富士は、正面奥に見える尖がった山。随分と遠く見える。なんだか歩くのが急に鬱陶しくなってきた。



金比羅山から一旦大きく下っていく。小雨はいつの間にか止んで、急に蒸し暑くなってきた。



かなり危なっかしい岩場もある。ロープはあるものの、ちょっと濡れた岩場は滑りやすそうで、登るのも下るのも要注意だ。



城ヶ岡への分岐が現れた。有馬富士はまだまだ遠そうだし、そもそも雨上がりに登るような坂ではないようにも思えるけれど、さほど遠くもないので、ちょっと寄り道していこう。



と思って、登り始めたけれど、これがかなりの急坂。補助ロープはあるものの、これは止めといた方が良さそうだ。登るのはともかく、今日の路面状態では下りがヤバイ。



城ヶ丘登頂を諦めて、気持ちの良い林道を有馬富士に向けて進んでいく。まだまだ距離はありそうだけれど、平坦で歩きやすい道なのが有難い。



クロアゲハがツツジの蜜を吸っている。余程美味しいのか、カメラを向けても逃げ出すこともない。



明確な境界は見当たらなかったけど、既に広大な有馬富士公園に入っているはずだ。もっとも良い意味であまり整備されていないエリアで、標識類も少なく、橋のない渡渉があったりするけれど、むしろ楽しく感じる。



有馬富士の外周道路までやってきた。ここまで来ると標識類も急に増える。山頂は左に向かうと案内されているけれど、右からわんぱく砦と名付けられた岩場を登り、左側の階段を下るのが標準ルートのはず…。まあ今日は案内標識に従って階段から登ることにしよう。



初めて登りで使うけれど、こんな急な階段だったっけ…。すぐ息が切れてしまう。なんだか膝が痛いような気もしてきた。



大した山でもないのに一合目、二合目などの標識がある。バカにしていたのは最初だけ。四合目あたりで、一旦座り込んでしまう。



最後は岩を攀じ登るような急坂。この山は、初心者向け登山としてよく紹介されているけれど、さして体力もない初心者が、ごく簡単な装備で挑むと、酷い目に会うことになるような気がする。



有馬富士山頂(374m)。たぶん10年振りくらいに登ってきた。休日ともなれば賑わう山だけれど、雨上がりのせいもあってか、誰とも出会わずここまでやってきた。



山頂付近の岩場からの眺望はなかなかのもの。たぶん羽束山とか大岩岳とかが見えているんだろうけれど、どれがどれなのか、よく判らない…。



わんぱく砦などという、お子様向けの名前が付いた岩場。登るのも厄介だけれど、下るのはさらにヤバイ。やはりこちらから登って、階段を下るべきだったと後悔するけれど、もはや仕方ない。道どりを慎重に選びながら、へっぴり腰になりながら下っていく。



福島大池越しに見る有馬富士。そこそこ凪いでいたので、やや不完全ながらも池面に有馬富士が鏡写しになっている。新三田駅で買った2本のペットボトルを飲み切り、ここでようやく自販機発見。もうかなりの水分を持たないと不安になるような気温になってきた。



福島大池の流出口は流紋岩の滑岩になっている。これまで気付かなかったけれど、滑岩の上を流れる水はずっと見ていても見飽きない。



新三田駅のすぐ近くまで渓流沿いの気持ちのハイキングロードが続いている。軽い山歩きのつもりだったけど、結構歩いたような気がする。



が、方向距離は9.9㎞。12~13㎞は歩いたような気がしたんだけど…。だんだんと疲れ具合と歩行距離の実感が合わなくなってきた。獲得標高432m、所要時間は5時間弱。