横高山・水井山(京都市)

 2024年4月25日


先日は北白川から比叡山に登り坂本に下山。今日は延暦寺から京都一周トレイルの続きを歩きたい。もっとも再び比叡山登山をする気にもなれず、坂本からの始発(朝8時)のケーブルで山上を目指す。これが公共交通機関では最も朝早くに延暦寺に到着する方法なのだ。



ケーブル駅から10分ほど歩くと延暦寺の受付が現れる。ハイキングなので通過するだけと言えば無料になるというけれど、実際には参拝するハイカーが多いことが問題になっている。自ら参拝料を支払うと、それまで監視するような目で見ていた係の方が急に愛想よくなる。



朝早いこともあって、境内はほぼ無人。とても清々しい。生放送なのか録音放送なのかは判らないけれど、読経がスピーカーから流れてくる。朝の定例放送なのだろうか。



「一隅を照らす」という最澄の言葉は天台宗で大切に受け継がれている教えだ。肉太の筆字で書かれたものばかりだったはずなのに、余計な厳めしさを感じさせないためか、外国人参拝者への対応のためか、境内にはローマ字付のシンボルマークのようなものが見られる。



ハイカーば無料だという話はよく聞く。境内にはそれを裏付けるような看板もあるけれど、解釈を間違っている人が多い。ケーブルで来ようとマイカーで来ようと、かなり歩かねばならない。ここでは誰もがハイカーなのだ。問題は境内を通過するだけなのかどうかなのだ。



静寂な東塔エリアをゆっくりと堪能した後は、西塔エリアへと向かう。お寺は早朝に限るなぁ…とつくづく思う。混雑した昼間より、遥かに有難みを感じる。もっとも朝早くに起きて活動開始をするというのは、未だに苦手なんだけど…。



東塔エリアの出口で参拝券のチェック。結構厳しくなっているような気がする。ところが西塔エリア入口には誰もいない。未だ朝が早いからかなぁ…。京都一周トレイルをするハイカーが、参拝料払え、いや払わない、のやり取りをしていることが多いところだ。



にない堂。弁慶が渡り廊下を天秤棒にして担ぎ上げたという。京都一周トレイルルートは、参拝券チェックポイントの手前で分岐するんだけど、その脇道からもこの先にある西塔(釈迦堂)に容易に入れるんだよなぁ…。このいい加減さも混乱の一因になっていると思う。



西塔エリアと横川エリアを結ぶ峰道と呼ばれる尾根道を進む。朝靄が立ち籠める石仏の道を進むのはとても気持ちがいい。アップダウンが少ないことが有難い。



標高は700mくらいだろうか。峰道沿いには桜が未だ咲いているところがある。他に歩く人の姿は見られないのだけれど、トレランをしている人は何人か見かける。GW明けにトレランの大きな大会があるからだろうか。比叡山の山中を50㎞とか80㎞とか走るらしい。



気持ちいい~。杉だと思っていたけれど、樅の木なのかもしれない…。これだけ山歩きをしているというのに杉、檜、樅など針葉樹の区別が十分つかない。何度も勉強したんだけど、これがなかなか簡単ではない。



横高山の登り口の手前にある玉体杉。御所が見通せるこの場所で、行者が天皇の健康を祈ったところらしい。木の根元にある石が蓮台石と言われる行者が祈祷する神聖な台石なんだそうだけど、多くのハイカーはそんなことは気にせず休憩ベンチに使っている。



写真左が比叡山頂。朝靄は晴れてきたけれど、京都の町はそれほどクッキリとは見えない。でも御所の緑は十分に確認できる。



横川中堂へと向かう道と別れて、いよいよ難所の横高山への急登に挑む。初めて来たときは、ここは道なのかぁ、と不安になるようなところだったけど、今ではところどころに標識が立っていて、方向を見失わないような配慮が施されている。



覚悟はしていたけれど、ひどい急登だ。根っこビッシリの坂を攀じ登っていく。朝露のせいか、未だ湿り気があって滑りやすい。歩くだけでも大変だというのに、こんな道をトレランするというのが信じられない。



横高山(767m)登頂。短い距離ではあるけれど、急登制覇による達成感と疲労感は半端ない。ここでしばらく休憩。この先の水井山がさらに厄介な急登なのだ。



一旦下って、水井山へと向かう。最大斜度では横高山ほどではないかもしれないけれど、こちらの坂の方が距離が長い。



水井山(793m)。やれやれ疲れた…。京都一周トレイルではここが最高標高だというけれど、頂上は質素。座り心地のよさそうなところがあまり見当たらないけれど、濡れた倒木に腰を下ろして休憩。



あとは下るだけ。杉?の中を貫く下り坂を進んでいく。が、ここからの下り坂が要注意なのだ。ストックを取り出して、慌てず慎重に進んでいく。



何本もの道が交わる仰木峠。かつて牛若丸が鞍馬を脱出し、奥州平泉に逃れた際に通った道らしく、仰木峠で平家の待ち伏せに遭ったとも聞く。待ち伏せするならここしかない、という要衝だ。この先、鞍馬まで続く京都一周トレイルは、牛若丸の道とも言える。




京都一周トレイルはこの先ボーイスカウト道と呼ばれる急坂を進む。案内にも「急坂注意」と書かれているし、12年前にも散々苦労して下った記憶がある。ここは遠回りでも東海自然歩道を下って野村別れを目指そう。



牛若丸がどの道を通って仰木峠を目指したのかは知らないけれど、ポンコツハイカーには東海自然歩道が間違いなく合っている。荒れたところもあるけれど、勾配は穏やかだ。



仰木峠から1時間ほどで大原の里に下山。正午あたりから急に暑くなり始めた。まだ時間も早いので、このまま鞍馬に向かうか迷っていたけれど、気温の高さと目前の北山の高さの双方に進む気は失せてしまう。



シャガの花(たぶん)が多く見られる。アヤメ科の花のようだけど、小さくて可愛い。漢字では射干と書くらしいけど、絶対に読めない…。



野村別れに下山したけれど、ボーイスカウト道の下山口になる戸寺まで進んで今日はお終い。ほとんどが下り道だったというのに12年前の半分のペースでしか進めていない…。歩行距離10㎞、獲得標高は上りが492m、下りが938m。所要時間は4時間50分。





比叡山(京都市・大津市)

 2024年4月11日


ひょんなことから始めた京都一周トレイル。今日は北白川仕伏町から出発。12年前は比叡山・横高山・水井山を越えて大原に下山したけれど、今では到底無理。比叡山登頂が目標だ。昨夏クマに女性が襲われたことを受けて、アチコチに注意のポスターが貼られている。



北白川仕伏町は昔下宿していたところ。そこからほんの少し歩くだけで、全く人の気配も感じられない山となることに今更ながら驚いてしまう。落ち葉が未だうず高く積もり、茶色の世界が広がっている。



あまり岩っぽさを感じさせない東山だけれど、古い採石場も残っている。花こう岩の多くが風化・浸食してしまったのに、清沢口の石切場跡には今も花こう岩の露頭が見られる。平安京の建設・発展に一役も二役も買ってきたのだろう。



瓜生山(301m)到着。まだ300mかぁ…。幸い暑さは感じず、少々肌寒いくらいなのだけれど、この先が思いやられる。軍事的な好立地なのだろう。瓜生山城、北白川城、将軍山城、あるいは勝軍山城とか、様々に名前と城主を変えて応仁の乱以降の歴史に登場する。



比叡山名物?の抉れた道。京都側からの登山道に多い形状だ。雨でも降ろうものなら川のように水が流れそうだ。



比叡山が遠望できる。ガーデンミュージアムの回転展望閣がよく見通せるけど、随分と遠くに感じる。あんなトコまで歩いていけるのかぁ…。できれば比叡山に登頂した後は、向こう側の大津坂本まで歩いていきたいんだけど、早くも心が折れそうだ。



先は長いというのに、茶山(192m)、瓜生山、白鳥山(320m)、てんこ山(442m)と丁寧に小ピークを拾っていく。眺望も何もないんだけれど、それでもYAMAPの登頂ピーク数に拘ってしまう。



石鳥居。老朽化も進んで不安定そうだと思ってきたけれど、倒れたという話は聞かない。この鳥居がどこの神社のものなのかさえよく知らないけれど、比叡山までのほぼ中間点の目印として重宝している。腹が減って、山頂で食べるつもりだった昼食を摂ってしまう…。



石鳥居から一旦下って、音羽川を渡渉する。昨夏トレランの女性が熊に襲われて負傷したというのがこの辺りのようだ。そういや熊鈴を消音モードにしたままになっていることに気付いたけれど、そのまま進む。



川を渡ってしばらく進むと、道の脇の森で何やら黒っぽい大きなものが動いた。ちょうどクマのことを考えていただけに、ひどくビビッてしまう。が、良く見るとシカ。普段はすぐ逃げ去るのに、こちらの動揺を見抜いたのか、いつまでも上から目線で見下している。



修学院からの雲母坂と合流。後醍醐天皇の側近、千種忠顕が戦死した水飲対陣跡の碑がある。隠岐配流にも同行するなど、不遇の後醍醐天皇をよく支えたけれど、建武の新政後には調子に乗り過ぎて好き勝手なことをしたようで、南朝方のなかでも評価は低いように思う。



女人牛馬結界の碑が残されている。女人と牛馬を一緒にするなんて失礼この上ないけれど、歴史的な記録として今も残されているのだろう。でも信長の比叡山焼き討ちでは、女人も撫で斬りにしたと伝わっているなど、女人禁制が守られていたのか?という疑問は消えない。



急登は続く。いつになったら比叡山に辿りつくことができるのか。幸いところどころにベンチがあり、遠慮なく休憩させていただく。



八瀬からの比叡山ケーブルの終着駅が見えてきた。といっても、まだ標高680m。歩くのがイヤなら、ここからロープウェイに乗り継ぐことになる。



ケーブル比叡駅からの眺望。正面の緑は宝ヶ池のようだ。その向こうには北山から西山へと連なる山々が見える。この先京都一周トレイルを歩き続けて向かわなければならない山々だ。



さほど暑くはないのだけれど、思っていた以上に水が欲しくなる。幸いケーブル比叡駅の待合室にある自販機で飲み物を補充するが、驚いたことに未だストーブがある。冬季は運休しているし、運転は昼間だけなのに、冷え込みは想像以上なのだろう。



大きな空地が現れた。かつて比叡山人工スキー場があったところだ。数年前にはスキー場が閉鎖されて10年ほども経つのに建物も撤去されず、中を覗くと貸スキーがズラリと並んでいたものだ。今ではここがスキー場だったことさえ気づかない人が多いはずだ。



ロープウェイ終着駅がある六甲ガーデンテラスにやってきたけれど、未だ冬季休館中。もっとも600円支払って入園する気もないんだけれど、困ったことに四明岳(838m)の山頂がこの園内にある。YAMAPの100mルールに救われて登頂したことになるだろうか。



登山道でも何人もの海外の方と出会ったけれど、山頂付近になると更にその数は増えてきた。随分と軽装の(おそらく東欧の)若者グループが元気に大比叡の山頂を目指している。日本まで来てわざわざ登るほどのところだろうか、とも思うけど、なんとなく嬉しい。



大津を見下ろす眺望。まさに湖国と呼ぶに相応しい町だ。標高は800mを超えているというのに、空気が澄んでいるのだろうか、随分と近くに町が見えるように感じる。



比叡山山頂(848m)。大比叡とも呼ばれるけれど、小比叡は聞いたことがない。放送局の中継所に囲まれた小高い丘の上に山頂碑が立つ。いや立つというより置いてある感じ。京都を代表する山だというのに、訪れる人も少ないせいか、かなりみすぼらしい山頂だ。



山頂から延暦寺に下りてきた。左が東塔、右が阿弥陀堂。東塔エリアから西塔、横川、坂本にまで大きく広がる延暦寺の境内には国宝・重文で溢れかえっている。もっとも延暦寺のシンボル根本中堂は未だ10年かけての大改修の最中だ。



表参道を通って坂本に下山。久しぶりに歩くけど、こんなに荒れた道だったかなぁ…。表参道とは違う道を来てしまったかと何度も地図を確かめながら歩いていく。



既に盛りを過ぎようとしている桜の向こうに琵琶湖、その向こうに三上山が見える。坂本は日吉大社ばかりではなく、穴太積みの石垣や美しい庭園を持つ風情のある寺院が多いところだけれど、桜の季節は一層美しく感じられる町だ。



距離13.5㎞、獲得標高1008m。所要時間は7時間24分。コース定数は26だった。結構疲れたとはいえ、コース定数19の開聞岳に比べれば遥かに楽に感じた。