矢筈山(西脇市)

 2021年6月24日


西脇市の矢筈山の縦走に出掛ける。中国山地の連なりが始まる西脇市において、妙見山、白山、西光寺山、角尾山など、多くのハイカーに愛される山々が軒並み落選するなかで、唯一「にしわき郷土カルタ」に採用されている山なのだ。




観光協会のマップを参考に、まず高田井登山口から矢筈山に登り、その後市原縦走路で山塊を北へと抜ける予定だ。、西脇市で最も登山者が多いという矢筈山までの道は間違いないけど、矢筈山から北は、YAMAPにも国土地理院地図にも記載が無い道だが大丈夫だろうか…。



登山口からしばらくは、ほとんどフラットな整備された林道が続く。杖がたくさん置かれているのが不思議にさえ思う。「家族みんなで登ろうよ」と西脇カルタの句を口ずさみながら、これは楽勝かも?と呑気に歩いていく。



が、しばらくすると急坂の丸太階段が現れた。そんなに簡単に登れるはずはないよなぁ…。



丸太階段は延々と続き、体力はドンドンと削られていく。矢筈山の山頂まではノンストップで登るつもりだったのに、「あと150m」の地点にあったベンチにとうとう座り込んでしまう。



ベンチで息を整えていると、でかいスズメバチが2匹やってきた。どうやら近くに巣があるようで、既に警戒対象としてロックオンされてしまったらしい。息は荒いままだけれど、スズメバチを刺激しないようにベンチを離れ、仕方なく再び急坂を登ることになる。




幹に括り付けられた標識に「ナンジャモンジャ」とある。ナンジャモンジャの木のことを調べるてみると、見慣れない立派な木や珍しい木に付けられる愛称だそうだ。でも多くの場合(関西だけかもしれないけれど)、ヒトツバタゴばかりのような気がする。



やっとのことで矢筈山(363m)の山頂に到着。登山口から45分ほどとはいえ、随分と疲れてしまった…。登ってくる途中、10人以上の人とすれ違ったけれど、山頂に着いた時には誰もいない。のんびりと休憩させてもらおう。



眼下には西脇の中心部が広がる。地元の方々の生活に密着した山であることが判る。山頂には登山者用のカウンターがある。西脇で一番登山者が多い、と紹介されていたけれど、このカウンターが根拠なんだろうか…。妙見山や角尾山にはカウンターなど無かったはずだ。



毎日のようにここまで登ってこられる人も多いのだろう。途中すれ違った何人かは「矢筈山」と書かれたTシャツを着ておられた。立派な小屋のなかには、飯炊きの釜などもあって、ここで様々な催しも行われていると思われる。



矢筈山頂で休憩後、市原への縦走路を進む。矢筈山まで登ってきた道と比べて、狭く暗い道だ。国土地理院地図にも載っていない道だけれど、西脇市観光協会が紹介している道だから、さほどの難路ではないはずだ。



しばらく尾根道を進むと、「矢筈山城」の標識が現れた。先ほどの山頂は矢筈山の南稜で、ここが北稜。2つの郭を持つ山城がここにあったようだ。急峻な山稜に立つ難攻の城から西脇の街や加古川の水運に睨みを効かしていたのだろう。



矢筈山の山頂からは、ダラダラと稜線を下るのかと思いきや、さにあらず。結構険しいアップダウンが繰り返される。岩場も少なくない。



最近YAMAPに慣れすぎたせいか、GPSを使わない山歩きでは、道が判りにくいところにやってくると不安になってくる。昔は地図とコンパスしかないのが当たり前だったのに…。



それにしても、かなりの急坂を登ったり下ったりを繰り返す。観光協会の地図はあるものの、ランドマーク類がなく、一体どこを歩いているのかが良く判らないまま、とにかく北へと進む。



だんだんウンザリしてきたぞ…。矢筈山までの登山道はたくさんの人がいたけれど、市原への縦走路では誰にも出会わない。人が通らないので蜘蛛の巣がやけに多い。ストック無しでも歩ける道だけれど、蜘蛛の巣を払うのには重宝する。



動物の糞も多く見られる。つい最近丹波の黒井山や芦屋の鷹尾山といった住宅街に近い低山で熊が現れただけに、ここで熊と出会っても何の不思議もない。でも、これはイノシシの糞だよねぇ…。たぶん。きっと。



ところどころにある標識や赤い矢印に導かれて歩いていくけれど、下山口まであとどれくらいなのかが良く判らない。GPSで自分の位置は判るとはいえ、YAMAPにも国土地理院地図にも表示のない道を歩くというのはあまり気持ちの良いものではない。



いくつめのピークになるだろうか。せめて山名でもあれば励みになるのだけれど…。マップには「306ピーク」(おそらく標高306mのピークということか)とか「295ピーク」とかが記載されているけれど、ここがどのピークなのかが判らない。



ようやく国土地理院地図にも記載されている道までやってきたけれど、シダで埋もれている。やれやれ厄介な道だ…。




長い山道を歩き通して、一旦自動車道へと出て、再び市原森林公園へと続く山道に入っていく予定だったけれど、柵が施錠されている。西脇市のマップにも「施錠されていることがある」と記載されているので仕方ない。遠回りにはなるけれど、楽な自動車道を歩いていく。



田植えが終わった田んぼのなかを山裾を抜けて登山口へと戻っていく。山道と違ってなんて歩きやすいんだ。



途中の播州成田山に掲げられていた大きな看板。ガードレールを突き破って崖から落ちた車が木に引っかかって助かったという「交通事故 奇跡の御利益」と書かれた絵がある。車の交通安全祈祷で有名な成田山だけれど、こんな現実離れした広告?には強い違和感がある。



今日の歩行軌跡。たまにはYAMAPの立体地図を掲載しておこう。スタート&ゴール地点は一番南の山裾で、4時間余りかけて右回りで一周した。



最近YAMAPには標高グラフに重ねて歩行ペースも表示されることを知った。標準(100%)に対して、縦走路では気分も乗らず、随分とペースダウンしていたことが判る。まあ、標準ペース以内で歩けるようなレベルのハイカーではないことは自分が一番よく判っている。






伊勢山(姫路市)

 2021年6月18日


今日のターゲットは姫路市の伊勢山。標高353mの低山とはいえ、急坂、岩稜、洞窟など変化に富んだ山歩きが楽しめるという。登山口には丁寧なコース案内もあり、登山道も良く整備されているようだ。西尾根から伊勢山・奥山と大きく周回する最長コースに挑戦だ。



移動に予想以上の時間がかかり、太陽公園の北にある登山口をスタートしたのは正午を20分ほど過ぎた頃。遅くなったけど焦らずいこう。可愛い人形が載せられた標識に導かれてまずは里山西コースに向かう。地域の方々によってしっかりと保全された山のようだ。



里山西コースは渓流沿いの穏やかなハイキングコース。20分ほどは穏やかな道が続く。体を慣らすのに丁度いい、と思っていたけれど、とにかく暑い…。これでは本格的な登りが始まる前にバテてしまいそうだ。



フライパンやら鉄板やら、登山道の脇の枝に吊り下げられている。熊などを追い払うために鳴らすのだろうか? あるいは何かの緊急事態が発生したときに登山者に危険を知らせるものだろうか?



少し寄り道して展望台まで登ってきた。姫路の市街地や瀬戸内海まで広く見渡せる。登山口から35分ほどで登ってこれるこの展望台まで毎日登山をされておられる方が多いようだ。



さらに北へ進み伊勢山に向かう。展望台を過ぎると、道も狭くなり、登山標識もショボくなってきた。たくさん見かけられた半鐘風のフライパン類も全く見かけなくなってしまった。



いよいよ本格的な登りが始まると思っていたところに現れたのは、まさかの激下り。うまく撮影できていないのが残念だけれど、尻込みしてしまいそうな長い急坂だ。幸いロープもあり、足の置き場にも困らなかったけれど、30mほど下るのに5分も掛かってしまった。



急坂で一旦高度を下げ、伊勢山の西尾根から頂上を目指す。林間では道が少し判りにくいところもあるけれど、赤テープが適所に付けられているので、迷うようなことはなさそうだ。



頂上に近づくにつれ、岩場が増えてきた。かなり急な岩稜も登場するが、適度に足を置くのに適当な窪みがあるので、ロープ無しでも問題なく登っていける。



頂上の手前で少し寄り道をして、「神座の窟」と名付けられた岩窟に入る。写真中央の狭い裂け目が入口なんだけれど、びっくりするほどの冷気が噴き出してくる。



半洞窟というのだろうか。大きな岩で囲まれた空間だが、3ヶ所ほど開口部があるため、ジメジメした感じはなく、窟外の景色も楽しめる。そして何よりも洞窟内はグンと温度が低くて、最高に居心地がいい。



神座の窟というけれど、洞窟内に安置されているのは不動明王などの小さな仏像だ。しかし宗教とは関係なく、眩しい光が差し込み清浄な風が吹き抜ける岩窟にいると、特別なパワーを貰えるような場所と感じられる。実際、ここでの休憩で随分と体力回復ができた。



もともと立ち寄るつもりだった空木城跡は、下り道が邪魔くさそうに見えたので断念し、伊勢山頂上を目指す。が、その後、行けば良かった…、と心に引っ掛かりを持ったまま歩き続けることになる。この歳になると、行けるときに行かないと一生行けないと考えがちだ。



伊勢山頂上。山頂標識はあるものの、眺望は無い。休憩するにも不向きなところなので、写真を撮影しただけで下山道に向かう。



東尾根コースから下山。いくつかのピークを登ったり下りたりしながら進んでいく。途中展望ポイントもある。



急な下り坂もあるけれど、危険な個所もなく、安心して進んでいける。坂の下にはイノシシやシカが泥で体を洗うというヌタ場があるとマップには書かれていたけれど、確認できなかった。



マップでは峠から登山口に戻るルートが紹介されているけれど、遠回りして奥山を経由して登山口に戻ることにする。「9丁目コース」という不思議な名前が付いている。この辺りに9丁目まである町は無いのに…。さらに「1丁目9班」という謎めいた標識も見られる。



奥山も280mの低山だけれど、頂上への道では岩稜が待ち構えている。ハイカーを飽きさせることなく、次から次へと難所(というほどでもないが)を繰り出してくる。



グリップも効いて歩きやすい初心者向きの馬の背状の岩稜なんだけれど、一歩踏み外せば、崖下に転がり落ちることは必定だ。



岩稜が終わると、巨石群が待ち構えている。尾根上に何百もある巨石の間を通ったり、上を乗り越えたりしながら進んでいく。



奥山山頂。かつては山城があったところのようだけれど、頂上には特に見るべきものもなく、眺望もない。このコースでは山頂ではなく、山頂に到る道や、岩稜、岩窟などがハイライトだ。



今にも割れて転げ落ちそうな危なっかしい岩もある。「だるま岩」と名付けられたものだ。



東尾根からの下山道分岐点にも「1丁目9班下る」の標識がある。一体どういう意味なのだろうか。まさか遠足の班ではないよねぇ…。町内会の班だろうか…。



下山道はザレ場やガレ場が続く。勾配も結構キツい。浮石だらけの道で躓いたり転倒したりしないよう、用心深く下山。下山したところは緑台「1丁目」だった。でも9班の意味は不明のままだ。



ほぼ標準タイムどおりに4時間近くかけて歩いたものの、距離はたったの5.5㎞、累積標高は564mとちょっと寂しい数字。でも、変化に富んで実に楽しい山歩きだった。山頂での眺望が無いせいか、あまり人気のない山だけれど、もっと評価されてもいいと思う。