大台ヶ原(上北山村)

 2024年9月5日


涼しさを求めて標高1500m奈良県の大台ヶ原に出掛ける。超早起きして、車で3時間弱、随分と長時間のドライブになったけれど、予定通り朝8時頃に大台ヶ原の駐車場に到着。



ビジターズセンターの壁に掛けられている気温計は18度を示している。もう何ヶ月も見ることがなかったような数字に嬉しくなる。半袖シャツの上に長袖のプルオーバーを着込んで出発する。



大台ヶ原では一般的な周回ルートを反時計回りで進むことにする。笹原の中を気持ちよく歩いていく。ちょうど朝霧が消えていくところのように感じる。この後、霧が晴れてくれれば嬉しいのだけれど。



おそらく貴重な高原の植生を守るためだろう。道には水はけを良くするためと思われる石が敷かれている。これが見た目以上に歩きにくい。



比較的平坦な笹の草原を抜けると、激下りの階段が現れる。終盤にこの階段を登るのがイヤだったので、反時計回りにしたのだけれど、YAMAPの活動記録を見る限り、時計回りで歩く人の方が多いようだ。きっと何かこの先厄介なことが起こりそうな予感がするぞ。



激下りが終わると吊り橋が現れた。両側にしっかりとした柵があるので怖さは無いけれど、結構揺れる。紅葉の季節には絶景が楽しめることで有名なところだ。



標高1400mとは思えないほど水量は多く、流れも激しい。さすがに日本有数の降雨地帯だけのことはある。シオカラ谷という名だけれど、まさか塩水ということはないだろう。橋を下りて確かめに行くわけにもいかない。



当然のことながら吊り橋を渡ると激登り。タフな道が続く。スタート時には肌寒いとさえ思っていたのが、急に汗ばんできた。しかも右膝が少し痛んできた。あまり膝を痛めた経験はないのだけれど、嫌な感じがする。



熊除けの大きなベルが設置されている。奈良の南部はあまり熊の個体数が多くないところだと聞いていたけれど、最近他の地域と同様に熊の活動が活発になっているようだ。つい先月にも目撃されたという。



いよいよ大蛇嵓(ぐら)にやってきた。嵓(くら)とは、山の大きな岩、高く険しい山、神様がお座りになる台座などの意味があるようだ。英語標識には単純にclif(崖)と訳されている。地図を見ても、等高線は狭く、岩崖だらけで、尋常ならざる地形であることが判る。



北側の断崖絶壁。今歩いている足元(谷の南側)も同じような絶壁の上のはずだ。そう思うだけで足が竦んでくる。



いよいよ大蛇嵓の岩頭にやってきた。この先は800mの断崖になっていて、その向こうには紀伊半島の屋根とも言える1300m級の山が連なっている。細い岩稜を先に進むのが結構怖い。



岩頭を先に進むのを躊躇っているうちに、あっという間に雲がかかってきた。先の写真から僅か1分後だ。雲の流れがとても早いことに驚かされる。



大蛇嵓で長い休憩。居合わせたハイカーと長いお喋りを楽しんだ後、大台ヶ原山(日出ヶ岳)を目指して歩き始める。牛石ヶ原という広い草原を進んでいくのだけれど、木陰が無く、日射しもキツク、気温は低いはずなのに、ムチャクチャ暑くなってきた。



牛石ヶ原に立つ神武天皇像。おそらく神武東征をイメージしたものだ。熊野から橿原まで、伝説に従えば、八咫烏に導かれてこの付近を北上したことになる。



そこそこ高い木は生えてはいるんだけれど、なぜか立ち枯れしているものばかり。厳しい風雪に耐えかねて枯れてしまうのだろうか。白骨林という怖ろし気な名で呼ばれているようだ。



正木峠への階段。ハイカーのために整備されているというより、貴重な植生を守るための処置なのかもしれない。本来歩きやすいはずなんだけれど、膝の痛みを庇いながらの辛い山行になってきた。寝不足のせいか息もすぐ切れてしまう。



「昔はこのような森でした」という立て看板がある。65年前の伊勢湾台風で鬱蒼とした苔むす森が大被害を受け、倒木を運び出したことで林床が乾燥し、苔類が減り、鹿が増え、森林が衰退したという。一度崩れた自然のバランスを取り戻すのは大変なようだ。



日出ヶ岳とも呼ばれる大台ヶ原山。膝のせいか、日射のせいか、あるいは、忍び寄る老化のせいか、とにかく意外なほどに疲れている。登るのが邪魔くせーなぁ…。



大台ヶ原山への登りはやはり木製階段。大した段差でもないのに辛い。



やっとのことで大台ヶ原山山頂(1695m)。三重県との県境となる。三重県の最高峰になるらしい。相変わらず日射しは強く、夏の景色だ。だというのに、周囲には赤とんぼが無数に飛び交っている。やはり気温は低いのだろう。



山頂の東屋のベンチも赤とんぼがたくさん止まっている。人への警戒心が低いのか、いざとなればいつでも逃げれるという自信なのかは判らないけれど、まるで飛び立つ気配がない。カメラを至近距離まで近づけて撮影することも難しくない。


横からだけでなく、上から撮影しても、悠然としている。あとは駐車場まで下るだけなんだけれど、トンボの撮影を口実に長い休憩を再びとる。



大台ヶ原山から駐車場まで渓流沿いに下山。こんな道になると急に涼しくなる。



距離7.4㎞、獲得標高474m。大したルートだったとは思えないのだけれど、2時間以上も休憩をとって6時間近くも掛かってしまった。確かに膝も痛かったけれど、それだけでは説明がつかない…。