2013年7月7日(日)
以前から気になっていた南海電鉄の汐見橋線を探検する。京阪神で唯一乗ったことが無いと断言できる路線なのだ。都心にありながら、全く忘れられたような、汐見橋線。地下鉄千日前線の桜川駅と至近なのだが、車内では「阪神電車乗り換え」とだけ放送されている。
阪神桜川駅と並んで、南海汐見橋駅がある。今でこそ、岸里玉出駅までの単純往復路線だが、名目上は高野線の始発駅なのだ。しかも、関空から新大阪に乗り入れる「なにわ筋線」を建設する構想もあるのだが、廃墟感さえ漂う老朽化したターミナルビルだ。
改札口の上には、かつてターミナルであったことを彷彿とさせる「南海沿線観光案内図」が掲げられているが、剥離が激しい。昭和30年代のもののようだが、こんな古図面が真正面にデカデカと残っていると、駅というより、博物館のような雰囲気さえ感じさせる。
開業当時は、道頓堀駅という名称だったらしい。当時、汐見橋というのは、洒落た改名だったと思うのだが、今や、切符売場や売店であったと思われるところは、すべて閉鎖され、南海のポスターやパンフレット類が、無造作に貼り付けられている。
見たところ、2両編成の車両は、南海本線を走っているものと変わりはなさそうだ。これが汐見橋線唯一の車両。片道10分ほどの汐見橋・岸里玉出の間をひたすら行ったり来たりするのだ。汐見橋駅を後にして、線路に沿って、岸里玉出の駅まで歩き始める。ひどく暑くなりそうだ。
わずか1編成しかないのに、南海本線や高野線と遜色ない複線仕様。
芦原町駅の北では、汐見橋線の上を、JR環状線が、さらにその上を阪神高速が走っている。それもそのはず、汐見橋線の開業は、環状線完成の60年前、1900年のことなのだ。
芦原町駅。車両は1編成しかないというのに、上り・下りの2面のホームが設置されている。どちらの線路をどう走ろうが、衝突する車両も他に無いというのに、上りと下りで走る線路を使い分けている。何とも贅沢なことだ。
芦原町駅と木津川駅の間にある鉄橋。ちょっと有名なものらしい。鉄橋の下には川も無ければ、溝さえ無い。わずかな隙間があるだけだ。以前ここを流れていた川が完全に埋め立てられてしまったようだ。
木津川駅。鉄道により輸送された高野山方面からの木材が、ここで木津川の水運に載せ換えられたと聞く。その際に用いられたのか、貨物用と見える引き込み線が駅に残っている。
木津川駅の駅舎。水運との連結点を担うに相応しい、凝った造りになっている。もっとも、今は閑散とした無人駅だ。
汐見橋線は全線に渡って、線路に沿った道がほとんど無い。そのため、踏切を何度も渡りながら、ジグザグに歩くことになる。しかも、工場などが多く、道路が碁盤の目状になっていないため、油断すると、線路から遠く離れたところまで歩かされてしまう。
津守駅。付近には、住宅も多く、高校もあるため、比較的乗降客が多そうな駅なんだけど、電車を待つ人の姿は見えない。地下鉄や南海本線までは、1キロ半くらいあるのだが・・・。
歩いている間、同じ列車と、何度も出会う。ワンマンカーだから、運転手も同一の人なんだろう。走る先々で、列車の写真を撮っている姿はきっとチェックされていることだろう。人通りも少ないところだし、真っ赤なシャツを着ていたので、これでもか、というほど目立つはずだ。
暑い。線路が歪んで見えるのは、気のせいだろうか。
西天下茶屋駅。ゴールの岸里玉出駅のひとつ手前までやってきた。
この駅舎も結構お洒落な造りだ。
西天下茶屋駅のホームの上屋の裏側。今となっては珍しい純木製だ。
西天下茶屋を過ぎると、汐見橋線は、なにわ筋に沿って、徐々に高架になっていく。
汐見橋線の高架の向こうに、南海本線・高野線の高架が見える。もう少しでゴールだ。
2つの高架が合流したところが、岸里玉出駅。高架に挟まれた通路の向こうに駅の改札口がある。ほとんど日蔭の無い道を歩き続けたものだから、大した距離でもないのに、ひどく汗をかいた。
岸里玉出駅から、電車に乗って、1時間半ほど歩いて来た道をそのまま戻る。全く合理性の無い無駄な行動だが、いよいよ汐見橋線に初乗車だ。さほど賑やかな所では無いのだが、本線、高野線が合流する駅だけに、ホームは多い。汐見橋行きは6番ホームになる。
嬉しいことに、車内はひどく冷房が効いている。車両は、最近は南海本線でもあまり見かけない2扉式。シートがとても長い。
乗車しているのは、運転手を含めて数人だけ。長いシートに寝転んでみたい気持ちを何とか抑える。ワンマンカーなので、車掌さんもいない。
わずか10分ほどで、汐見橋駅に到着。ベンチの背もたれに、このホームで唯一の広告がある。「紳士の憩い場」って、何ともレトロな響きだ。しかし駅前にあったらしい、このパチンコ屋さんは今や残っていない。ということは、これは広告ではなく、博物館の展示物のようなものと考えるべきなんだろう。
暑かった・・・。最近、穿くのに抵抗感があるのだけれど、この夏の街歩きは短パンにしよう。
まとめ
歩行距離 6km弱?
所要時間 94分 (1時間34分)
歩数 8800歩 (しっかり 6800歩)