比叡山スタンプラリー(八瀬~横川~東塔)

2018年10月20日(土)


毎年参加を続けていたものの、ついに昨年連続参加が途絶えてしまった比叡山スタンプラリーに出掛ける。徒歩による制覇を念頭に置いたイベントではないことは承知しているが、毎年登山ルートを様々に変えながら、横川・西塔・東塔の3ヶ所を含む5つのスタンプポイントを歩きまわっている。



 例年滋賀県の坂本から登ることが多いが、今回は初めて八瀬方面から登ってみることにする。夜半からの雨が未だ残るなか、叡電に乗ってドーム状の大屋根で覆われたレトロな駅舎、八瀬比叡山登山口駅にやってきた。「登山口」とはいうが、この駅から歩いて登山する人はまずいないはずだ。



しばらく歩くと、ケーブル八瀬駅。ここがスタンプポイントのひとつになっている。ここからケーブル、そしてロープウェイと乗り継いで比叡山山頂を目指す人たちを横目に、大原方面に続く道をひとりテクテクと歩いていく。



高野川に沿って旧道を歩くつもりだったのが、道が判らなくなって結局国道歩きになってしまった。トンネルもあって、ほぼ平坦な舗装道だけに、山に向かっているという実感は湧かない。



駅から3kmほど歩いて、「登山口」というバス停までやってきた。こんな名前を付いているけれど、比叡山に登るルートとしては、相当マイナーな登山口で、ブログなどを探しても、走出(はせだし?)路と呼ばれるこの道から登ったという記録はごく僅かしか見つからない。



登山路は簡単に見つかった。横川元三太師道との碑があるので間違いない。八瀬比叡山登山口駅の標高が110m、ここが170m。ダラダラ歩きとはいえ、国道歩きでもう少し標高稼いでいるかと思ったのだが、それほどでもない。



登り初めて早々に気づいたのだが、やけに倒木が多い。おそらく1ヶ月前の大型台風によるものに違いない。



決して整備された道とはいえないが、比叡山登山路としてはマイナー扱いされているため、相当な悪路では、と懸念していたほどのことではない。さらにかなり短い間隔で標識が立っているので迷うこともなさそうだ。



道はさほど悪くはないのだが、人影は全く見られないどころか、足跡もほとんど見当たらない。小さな沢を渡渉するとき、冷たい風が頬を打つ。生来、一人歩きが性に合っているのかもしれないけれど、ふとした瞬間に、ひとりぼっちの孤独さを痛感する。



6番の立札のあるところで大いに道を迷ってしまう。実は倒木で完全に塞がれている左側に道は続いているのだが、20分以上も、前や右側を道を求めて、アチコチと彷徨う羽目に陥った。おそらく6番の立札が無ければ、さらに引き返していたに違いないが、最後の最後、樹木で覆われた左側に向かう。



V字状になった谷道の両側から、20本以上の大小の樹木が倒れて道は完全に塞がれている。崖を這い上がったり、木の上によじ登ったり、木の下を潜り抜けたりを繰り返し、ついに先に進む道を見つけることができた。



その後の何度もの障害物競争のような山道を這う這うの体で登り切り(倒木さえなければ、急坂も少なく登りやすい道だったように思えるが・・・)、比叡山と横高山・水井山を繋ぐ、勝手知ったる尾根道に出会う。何本からの道が交わる峰辻というところだ。



峰辻から、スタンプポイントになっている横川中堂の道は、さすがに東海自然道にもなっているだけに、整備状態が全く違う。平坦なこともあって、随分と歩きやすい。



横川中堂。比叡山延暦寺の三塔のなかでは、北側にポツンと離れているため、訪れる人も少ないところだ。遣唐使船をモチーフにして設計された舞台造りというものらしい。船が宙に浮いているように見えるというけど・・・、う~ん、どうだろう・・・。



 横川中堂でスタンプを押した跡、再び峰辻までトンボ帰り。往復で4kmほどの道のりだけれど、平坦な道なのでダメージは殆どない。朝の小雨もすっかり上がって快晴に向かっている。今日は峰辻から少し南に歩いた玉体杉からは、京都の町の眺望も開けている。



登ってきた走出路と異なり、京都一周トレイルや東海自然歩道などにもなっているため台風の被害からの復旧が随分進んでいて、歩くことに困るようなところは無い。しかし道の左右を見ると、根こそぎ倒れた木や、ボキンと折れてしまった木など、災害の爪痕はアチコチに見られる。



梯子やチェーンソーで、倒木の伐採をしている人達と出会う。やらなければならない仕事が山積み状態とのことだ。この様子だと、走出路には当分手が回りそうにはない。



毎度のことではあるが、峰道レストランの展望台から見る琵琶湖の景色は素晴らしい。景色だけ楽しむのは申し訳ないので、「平和どんぶり」という名物料理をいただく。ごま豆腐、湯葉、生麩などが入った「あんかけ丼」だ。精進料理とは思えない濃い味で、とても美味しかった・・・。



西塔に近づくと、再び台風の爪痕が随所に見られる。研修所の屋根が飛んでいたばかりか、若山牧水の歌碑が倒れていたのには驚いた。失礼ながら、ゲゲゲの鬼太郎に登場する妖怪ぬりかべを思い出してしまう・・・。



西塔にやってきた。以前は、「一階建てなのに、どうして西塔というのか」と訝しく思っていたものだ。比叡山での「塔」とはタワーではなく、エリアと考えた方が良さそうだ。西塔の中心となっているこの建物は、釈迦堂という。



西塔から東塔に向かう。牧水の石碑も倒れていたのに、莫大な数が並んでいると見える石灯籠には一つも倒壊したものが見当たらない・・・。既に修復した後なのか、もともと被害がなかったのか、どちらなんだろうか。



東塔。ややこしいことに西塔:さい「と」う、東塔:とう「ど」う、と堂の字の読み方が違う。さらにこの写真の奥にあるのは、東塔という塔なのだ。東塔といえば、この塔を指すこともあれば、この地区全体を指すこともある。ややこしいぞ。



延暦寺の大書院の前に、比較的新しい石碑が2本立っている。1本は昭和天皇、もう1本は今上天皇が行幸された際の御座所となったことを記している。平成も残りあとわずかだが、今上天皇の文字はどうなるのだろうか。来年来たときに確かめたい。



根本中堂は「平成の大改修」と称して、一昨年から大規模な補修が行われている。10年掛かりというから、工期の大半は平成ではなくなる訳だ。来年からは、何の大改修と称することになるのだろうか。



東塔近くの延暦寺バスセンターでスタンプコンプリートのご褒美をいただく。絵皿とか湯呑とか、これまでも色々なものを貰って集めていたのだけれど、3年前の引っ越しの際に処分してしまった・・・。今年の記念品は、これまでの瀬戸物系からガラリとイメージチェンジして、アルミボトルになっていた。



明るいうちに山を歩いて下るのは厳しい時間になっていたため、京都駅までのバスに乗って帰宅する。歩行距離は約16km。結構厳しい山歩きにも見えるかもしれないが、登山といえるのは、4km~6km地点でしかない。