2021年8月5日
あまりの酷暑続きに山歩きどころか街歩きでさえ躊躇してしまう日が続いているけど、思い切って淡路島の諭鶴羽山へと向かう。これといった山が無いイメージが強い淡路島だけれど、意外にも平地は少ない。今日のターゲットは島内最高峰の諭鶴羽(ゆづるは)山だ。
諭鶴羽山の北麓にある諭鶴羽ダムがスタートポイント。ダムの周囲は良く整備され、保養施設やサイクリングロードなども見られる。
標高は607mとはいえ、問題は暑さ。しかも歩き始めたのは13時半。真夏の登山としては狂気の沙汰ともいえる灼熱の時間帯の真っ只中だ。ダムを散策している人からの冷ややかな視線を感じながら、諭鶴羽古道と呼ばれる登山道へと足を踏み入れていく。
登山口から結構な急坂が続く。鬱蒼とした森のなかだけに日射しは遮られているとはいうものの登山開始早々、汗が止めどもなく噴き出す。手元の気温計では、なんと37度。体温超えだ。
諭鶴羽古道は、山頂の向こう側にある諭鶴羽神社に続く道。道端に丁石を兼ねたお地蔵様が立っている。登り始めたところが27丁(28丁だったかもしれない)。山頂までおよそ100mおきにお地蔵様が励ましてくれるはずだ。
古い祠や石標も多く見られる。随分と古い時代から数多くの修験者の修行の場であり、信仰の道であったことが窺い知れる。
樹木が多く、眺望はほとんど皆無といっていい。ごく稀れに僅かに視界が開けても、山と空以外には何も見えない。
山道の真ん中に鹿が無防備に立っている。近づいていっても、なかなか逃げない。こちらの方が焦ってしまって、至近距離での絶好のシャッターチャンスだというのにピンボケの写真になってしまった。暑さのためにスマホの調子がどうもおかしい…。
登山道の大半は日陰。時折日の光が差し込むところに差し掛かると、足が竦むような思いがする。強い直射日光は痛いとさえ感じるほどなのだ。
三角形状の石積みが随所に見られる。ふと見たところではケルンのようなものかと思ったけれど、どうやら脇道の入口に設置されているようだ。無粋な立て看板などではなく、人にも自然にも優しく正しい道を示す工夫が施されている。
大して険しい道ではない。むしろ歩きやすい道だというべきなのだろうけど、暑さのせいか、ちょっとした坂道にもウンザリしてしまう。気も体も重い山道が続いたけれど、ようやく頂上へと続く稜線に出てきた。
頂上の直前にあるアンテナ塔。なんと車が止まっている。汗だくになってここまで山道を登ってきたけれど、海側からは車道が山頂付近まで繋がっているようだ。
何回か休憩を挟みながら1時間50分ほどで山頂にようやく到達。これだけの暑さなのだから、今日ばかりはスローペースも仕方ない。休憩したいところだけれど、日射しが強すぎて、座り込むような気分にはなれない。
山頂からの眺望はさぞ素晴らしいものと期待していたけれど、晴天の割に視界がイマイチ。暑さのせいで湯気が立ちこめているようにさえ感じる。
山頂を早々に退散し、山の南側にある諭鶴羽神社へと向かう。鬱蒼とした森のなかの道を下っていく。
諭鶴羽神社の南にある「天の浮橋遥拝所」。神代の昔、イザナギ、イザナミの二神が鶴の羽に乗ってこの山に舞い降りたと伝えられているそうだ。国生み神話が伝わる沼島が眼下に見下ろすころができる。
諭鶴羽神社の社務所?の横に、「電話開通」を記念する石碑が立っている。他で見かけたことのないものだ。なんと昭和53年。車載電話の商用化が始まる頃にようやく有線電話が開通したというのも、いかにも古事記の冒頭に登場する国生みの島らしいと感じ入ってしまう。
深い森に囲まれた諭鶴羽神社の本殿。自然崇拝、山岳信仰に始まったと言われる修験道の聖地で、かつては熊野三山と並ぶ大道場だったそうだ。
そんな歴史とは関係なく、今はフィギュアスケートの羽生結弦選手のファンが多く訪問する聖地となっているようで、本殿に掲げられた絵馬の大半が羽生選手への応援メッセージが書き込まれている。神戸の弓鶴羽神社で見た光景と同じだ。
神社にとって羽生選手ファンの来訪は迷惑ということでもないようで、神社の周囲の赤樫の保全活動には驚くほどの寄付が集まったそうだ。神社の奥山を巡るような道で再び山頂方面へと戻っていく。
来た道とは異なり、かなり眺望は開けている。よく見れば海の向こうに和歌山県の陸地も確認できるのだけれど、写真では判らない…。
山頂付近にあるアンテナ塔に向かって、延々と坂を登っていく。スマホのカメラはオーバーヒートで機能停止を繰り返す。ようやく撮れた写真も、どことなくピンボケだ。
YAMAPの3D山行記録。距離7.1㎞、獲得標高は650m。計50分の休憩込みで4時間弱の灼熱下での山歩きは想像どおりの苦行。かつての修験者の気持ちが少しは感じ取ることができたのかもしれない。