書写山(姫路市)

 2022年10月14日


アウトドアには絶好の季節だというのに、体が鈍りきっているせいか、ヘビーな山歩きをする気にならない。悩んだ末、久しぶりに書写山に向かう。6本ある登山道のなかで、これまで踏破したことがない西側の刀出坂登山道からの登頂を目指したい。



刀出坂の太陽光発電所の向こうに見える書写山はなだらかな低山の様相。円教寺はどこになるのだろう…。出発が遅れ午後1時前になってしまい、意外に暑く感じる天気だけれど、標高は371mしかないのだから今の弛んだ体でもさほど無理なく登れるだろう。



刀出坂登山口の反対側には、太陽公園のシンボル、白鳥城が聳えている。姫路に住んでいた30年ほど前には世界のモニュメントのレプリカをコツコツと作り続けている、隠れた珍スポット扱いだったのだけれど、今や誰もが知る名所になったようだ。



楽チン登山のつもりで登り始めたものの、どうも様子がおかしい。YAMAPのGPSを見ると登山道より南側から山に侵入してしまったようだ。



GPSを頼りに正しい登山道の方へと道無き道を進む。向こうに登山道らしい看板が見えるけれど、沢が間にあって容易に進むことができない。超低山とはいえ油断するとすぐにこのような羽目に陥ってしまう。今までも何度となく同じような誤りを繰り返してきたのだが…。



登山開始早々、いきなり手間取ってしまったけれど、無事登山道に合流することができた。石の多い谷合の林間コースは、決して楽とはいえないけれど、さほどの急坂でもなく、余裕をもって進んで行くことができる。



遠目には沢を登らせないようにする通行止めの柵かと思っていたのだけれど、渡渉のための手摺りのようだ。さほどメジャーな登山道ではないけれど、案内標識も多く、危険回避のための工夫も過不足なく施されている。



渓流沿いの谷道を進んで行くと小さな滝もいくつか現れる。30分ほども登ってきたところで少し喉を潤そうと思ったら、なんと水のペットボトルを持ってくるのを失念してしまったことに気付く。超低山とはいえ水無し登山はヤバいぞ。急に不安になってくる。



登山道も半ばを過ぎるとお地蔵さんなども見られる、参道らしくなってきた。お地蔵さんの背後にある岩には何かが刻まれているような、いないような…。しばらく観察をしたけれど、よく判らない。



山の形状のせいか、頂上に近づくにつれて道は緩やかになり、ますます歩きやすくなってくる。何とか水無しでも円教寺まで辿りつくことはできそうだ。参詣者の多い円教寺ならば水の自販機くらいはありそうだ。



のんびり登山道を歩いていくと、唐突に円教寺の奥の院に出てきた。正面が開山堂、右が護法堂…重要文化財だらけだ。西の比叡山とまで呼ばれる数多の堂宇が立ち並ぶ円教寺には何度も参拝したことはあるけれど、奥の院からスタートするというのは新鮮な気持ちになる。



大護堂。書写山は紅葉で有名なところだけれど、まだ殆どの葉は青い。紅葉まつりは未だ一ヶ月ほど先だ。



比叡山と同様、書写山もお寺の参拝目的で訪問される方がほとんどで、山頂を目指す人はごく稀な山だ。大護堂の脇から伸びる細い道を登って書写山頂を目指す。



頂上には白山権現というお社があるばかりで、眺望もなく、あまり山頂感は無い。山頂では円教寺開山以前からここで素戔嗚尊(スサノオノミコト)が祀られていたらしく、素戔(スサ)が転じて書写になったそうだ。



山頂の西側から呑気に登ってきたけれど、東側への道はなかなか険しい。木の根っこに掴まりながら抉れた急坂を下っていく。



円教寺といえば、やはり摩尼殿。このアングルからの写真を撮らない訳にはいかない。岩山を背に建立された荘厳な舞台造りだ。



赤い前垂れを掛けた小さなお地蔵様が無数の並んでいる。どうやら水子供養のものらしい。



伽藍巡りの最後に展望所に立ち寄る。姫路の広畑〜白浜方面が見渡せる。もう少し晴れていれば家島諸島や四国まで見通すことができるはずだ。



古い石垣が残る境内を通って、下山路に向かう。摩尼殿前にある自販機で水分も補給できたので、既に不安は解消されている。



奥の院の脇から、鯰尾坂で下山することにする。おそらく書写山にある6つの登山道のなかでは最もマイナーな登山道のようだけれど、標高線を見る限り、距離は長いもののさほどの急坂とは思えない。



歩き始めると、マイナー登山道とは思えない歩きやすい道が続く。お地蔵様の姿もあり、とても安らかな気持ちで、ゆっくりと下山口へと向かっていける。



もっとも下るにつれて、少々勾配は感じられるようになったけれど、それは問題ではない。厄介なのは背丈以上の高さから覆いかぶさってくるほどのシダの群生だ。刀出坂でも感じたけれど書写山はシダの多い山だ。



のんびり下って無事鯰尾下山口があるキャンプ場に下りてきた。もっともここから車を停めた刀出坂まで地道を戻らなければならない。



心拍数もレッドゾーンに突入することのない落ち着いた登山だった。序盤の黄色い部分が登坂パート、中盤の緑色パートが円教寺伽藍巡り、終盤の黄色が下山パートだ。大した坂ではないものの、下山もそれなりに心拍数があがっているのが判る。



距離8.2km、所要時間は3時間40分。累積標高は340mほど。さほど疲れもしなかったけれど、今の体力では、これくらいの山歩きが丁度いいように感じる。