20222年10月19日
西宮市の観音山は何度も登った山だけれど、麓にある案内図で山頂マークがあるところは、大岩に「観音山」と筆書された展望台。半端ない登頂の達成感が得られるところなんだけれど、実は山頂ではないらしい。今日はもっと西にあるというホントの山頂に登ってみたい。
バスで鷲林寺まで行くつもりが、慌てて数百m手前の鷲林寺南口バス停で下りてしまった。おかげで、幽霊とか妖怪が出るとかの伝説が多いため、県道のど真ん中に残された夫婦岩をゆっくりと観察できた。他所の夫婦岩と異なり、ひとつの巨岩が2つに割れたものだ。
既に2時半。随分と遅い出発だけど、欲張らずに観音山の登頂だけを目指して鷲林寺参道の石段をテクテクと登っていく。名高い紅葉は未だ先だけれど、石段には無数の銀杏が落ちていて、秋の到来を嗅覚に訴える。
観音山への東側の登山口となる鷲林寺。ここから4本のルートがあるのだけれど、これまではパノラマコースと呼ばれる登山道しか経験していない。今日は未踏の「せせらぎコース」で登り、「南コース」で下りることにしよう。
山頂を巻くように観音山の西側へと向かう「せせらぎコース」へと向かう。しばらくは予想通りなだらかな道が続く。
ところが少しずつ道は険しく、そして寂しくなってきた。なんだか想像していたのと違うなぁ…。
せせらぎコースというだけあって、道の右側には渓流があるのだけれど、水量も少なく、あまり川のせせらぎを楽しめる道ではない。
なんだか平衡感覚が狂いそうな植生の森を抜けるトラバースが続く。道もゴツゴツしていて歩きにくい。
見どころと思われる旭滝(「天鼓の滝」というカッコイイ別称がある)に向かうには、この沢を登っていかねばならないようだ。ちょっと危なっかしそうなので、旭滝は断念。
ガベノ城同様に、この辺りにも城跡かと思わせるような古い石垣が散見される。城跡ではなく、治水のための土留めのようだけれど、こんなところに石垣を積むのは相当な労力が要ったはずだ。この地域の石垣を見る度、誰が?いつ?という疑問が湧いてくる。
諦めていた旭滝だけれど、木の隙間から覗き込むことができた。下から見上げなければ、なぜ「旭」とか「天鼓」とかの名が付けられたのかを理解することは難しそうだ。
せせらぎコースを小一時間歩き、観音山の西側にある奥池やゴロゴロ岳へと続く道に合流。ここから東に転じる。観音山のホントの山頂の探索を始めるが、それっぽい道もなく、GPS地図を頼りに道無き道を行ったり来たりする。
ようやく見つけた観音山山頂(526m)。雑木林の真っ只中で、眺望は皆無で山頂感もない。これまでYAMAPでは何度もピークハントの認定がなされていたけれど、実は20mほど離れた登山道を通過していてオマケで認定してくれていたようだ。
麓の案内地図にさえ山頂と紹介され、大多数の人が山頂だと信じて疑わないであろう展望台はホントの山頂から100mほど西になる。等高線図を見るとホントの山頂と同じ520m以上はあり、その差はごく僅かのはずだ。誰かが勝手に取り付けた526mの山頂札もある。
優しい風に吹かれながら岩の上に腰かけて、北摂の山々から大阪港まで広がる景色を堪能する。こちらの方が遥かに山頂っぽい。山頂ではないかもしれないけれど、屈指のお気に入りポイントであることに変わりはない。たぶんホントの山頂には二度と登ることもなかろう。
展望台から少し引き返し、未踏破の南坂で下山する。YAMAPでは実線だけれど、ヤマレコでや麓の地図では破線で表示されている道だ。予想していたとおり、かなり岩っぽい急坂が多く慎重に下っていく。
かと思えば背の高さを超すススキを搔き分けて道を探して進むようなところも現れる。
晴れているせいもあって、時折見える北摂平野や北山池の眺望が美しい。甲山が残丘であることもよく納得できる。
かなり勾配のある長いズリ場が現れた。自分の技量ではこれを下りるのは危険すぎる、と一瞬焦ったけれど、右手に岩だらけとはいえ、下りれそうな道があることに気付き、ホッとする。
ザレ場を滑り落ちるよりはマシとはいえ、結構なアドベンチャーコースだ。しかし、YAMAPのフィールドメモによれば、この先にかなりの難所が待ち構えているようだ。
写真真ん中あたりで岩場がストンと突然途切れている。ゲゲッ、ここを下るのかぁ?ロープにしがみつきながら、超狭い岩の隙間を下っていく。
下りてきた岩場。写真では寸法が判り難いけれど、真ん中の隙間は体が容易に引っ掛かりそうなほどの狭さ。登りはともかく、下りは相当な注意が必要だ。
あとは石がゴロゴロした平坦な道を鷲林寺まで下るだけ、のつもりだったけれど、道を間違えたのか、これで合っているのかは判らないけれど、フェンスに阻まれて、修道院と鷲林寺の墓地の間の沢を進む。靴が少々水没したけれど沢歩きはごく短距離だったので助かった。
今日も心拍数が過負荷ゾーン(レッド)にならないようスローペースでの山歩き。ようやくこの歩き方にも慣れてきた。ホントは無酸素ゾーン(オレンジ)でさえ望ましくなく、有酸素ゾーン(グリーン)で歩き続けるのが最も疲労が少ないようだけれど、そんなのムリだ。
午後2時半にスタートして、日暮れ近くまでの3時間近くを観音山を探索して歩いた。限られた時間のため、距離は4.8㎞、獲得標高は330mと小さな数値だけれど、色々と発見の多い面白い山歩きだった。