善防山・笠松山(加西市)

 2023年4月24日


久しぶりに加西アルプスへと向かう。不摂生な生活が続きすっかり体は鈍っているけれど、善防山と笠松山を周回する道はさほど厳しくなかったと記憶している。これまでは法華寺口駅に近い西側から登ったけれど、今回は南側の大手門登山口から登ってみることにする。



大手門というからには、南北朝時代から室町時代にかけて赤松氏が山城を構えていた善坊山への正面ルートとなるのだろう。登山道には城の遺構と思われる石垣が見られるとの説明がある。



登山口から間もなくいきなり岩稜が現れる。西側の登山道に比べると比較的小ぶりの岩稜に見えるが、ザレていて滑りそうなところもある。



登山道は十分に整備されているし、標識やテープも過不足なく、安心して登っていけそうだ。どうやら南側の尾根全体が城の縄張りの一部になっていたようでだ。



しかし決して呑気な道ではなく、結構な急坂も多いけれど、そんなトコにはちゃんとロープが張られている。意外に気温が低くちっとも汗をかかずに済むのが有難い。



登山口から30分ほどで善防山(251m)の頂上まで登ってきた。そしてここがかつての善防山城の本丸だ。嘉吉の乱での攻城戦はかなり熾烈なものだったそうで、明治初期まで白骨が散乱していたとの説明板がある。



確かに眺望は良く見張り台としては好立地だけれど、急峻とはいえ、標高は低く、攻め口が多いため守りにくい城のような気がする。岩稜を登ってくる敵を滑らせようと油を浸み込ませた竹の葉を敷いたものの、逆に火責めに遭ったというお間抜けな話も伝わっている。


笠松山に向かうためには一旦急坂を下らなければならない。体幹や柔軟性の衰えなのだろうか、年をとるにつれて、どんどん下りが苦手になってくる。かといって登りが得意という訳でもない。



どれが笠松山なのかは判らないけれど、細く長い尾根道を北に向かってどんどん進んでいく。低山とはいえ、稜線歩きは気持ちいい。



名物の吊橋が現れた。ちょうど善防山と笠松山の鞍部にあたるところだ。吊橋特有の気持ち悪い揺れを感じながらも、目線は吊り橋を渡った直後に控える大岩稜に釘付けだ。



こんなの登れるんかいな…、と思わずにはいられない。意を決して鎖にしがみつき、斜度50度くらいはありそうな岩稜に取りつく。鎖無しではとても登れたものではない。



向いの山肌に摩崖仏が見える。さほど古いものには見えないけれど、だとしてもどのようにしてあんな岩肌で作業したのだろうか。



古法華寺を通過。石仏見物は後回しにして、七福神像に見送られるように笠松山への登り道に取りつく。



ここも厄介な岩稜から始まる。こんな道だったかなぁ…。もっと軽いハイキングコースだったように記憶しているのだけれど…。体力が衰えた分、山道も険しく感じられるのだろうか。



吊り橋を渡ったところの大岩稜に異なり、ちょっとザレている。同じ山なのに、花崗岩の風化具合が場所によってかなり違っているのは興味深い。



結構な急坂が続く。手を使わずに岩を攀じ登るのは難しい。左奥に見えるゴツゴツした岩が多そうなピークが笠松山だろうか。だとすれば、もうひと息のはずだ。


見えてきたピークまでやってきたけれど、ここは笠松山ではないようだ。山火事でもあったかのようにさえ見える黒土が露出している。



偽ピークに翻弄されてきたけれど、今度こそ笠松山のピークを目に捕らえることができた。頂上に展望台のような構築物が見える。まだ遠いなぁ…。いい加減疲れてきたぞ。



頂上に到るまで岩の急坂が度々立ち塞がる。以前登ったときのブログには「楽しい」と書いてあるけれど、今日はあまり楽しむ余裕が無い。



やれやれ、ようやく展望台までやってきた。ここが笠松山(244m)の頂上だ。もっと高くまで登ってきたように思うのだけれど、244mという数字にちょっとショックを受ける。



展望台から善防山方面を見渡す。歩いてきた尾根道が白くくっきりと浮かび上がるように見える。



笠松山からは再び激下り。転ばぬ先の杖の教えどおり、ストックを組み立てて進む。最近はストックは激下りでしか使用しなくなった。



再び古法華寺へと戻り、石仏を見て回る。古いものもあるけれど多くは比較的最近寄進されたもののようだ。ずらりと並ぶ丸顔短躯の石仏群は1990年のもののようだ。沢山あるけれど、一体ずつ製作されているようで、お顔は少しずつ違う。



往路で渡った吊り橋の下を潜るようにして、スタートポイントの公民館に戻る。目の前の大岩稜にばかり気を取られて下を見下ろさなかったけれど、結構な高さの吊橋だったようだ。



この季節にしては肌寒さを感じるくらいの低気温だけれど、山歩きには絶好のコンディションとも言える。しかも歩行距離4.5㎞、獲得標高390m、所要時間3時間という数字の割にはタフに感じられた。