醍醐山(京都市)

 2024年2月9日


随分以前に計画していた醍醐寺から音羽山を経て大津まで歩くという計画を実行に移すときがやってきた。総距離13.4㎞、獲得標高1000m超、標準タイムで7時間という、現状の体力ではかなりタフなコースになる。



地下鉄醍醐駅から10分余り、醍醐寺の山門にやってきた。右奥に見えるのが、まず目指す醍醐山のようだ。世界遺産にも登録されている京都を代表する古刹のひとつだけれど、幸いにもここまではインバウンドの波は押し寄せていないようで、境内は静謐さを保っている。



三宝院唐門。秀吉の醍醐の花見に併せて建てられた勅使門で国宝に指定されている。最近解体修理が行われて、当時の輝きが復活したという。いかにも秀吉が好みそうな黒漆に大きな菊紋と桐門をあしらった派手な門だ。



西大門とも呼ばれる仁王門。応仁の乱で焼失したものを豊臣秀頼が再建したという。秀吉お気に入りの寺だけに、秀頼は醍醐寺の再興に相当力を注いだようだ。参道には桜の木が並んでいる。今は観光客も多くはないけれど、桜のシーズンになると凄いことになるはずだ。



三宝院、金堂など有料ゾーンを避けて山に向かっていく。951年完成という京都でも最も古く、応仁の乱の戦火も潜りぬけてきた五重塔も有料ゾーンにあり、無料ゾーンからは木々の隙間から拝むしかない。



下醍醐と呼ばれる広い境内を抜けて、上醍醐と呼ばれる醍醐山山頂付近の寺域へ向かおうとすると、入山料が必要とある。600円はちょっと高いなぁ…とも思ったけれど、これは入山料というより、上醍醐の伽藍の拝観料と考えるべきなのかもしれない。



入山料を支払い、いよいよ醍醐山に向けての登りが始まる。道はよく整備されている。多くの山域が寺社などの私有地であり、境内の整備や参拝のための道を維持してくれている。ハイカーがその道を使わせていただくのだから、無料が当然と考えるべきではなかろう。



鬱蒼とした道を進む。高い木が密集しているせいか、とても暗く感じる。道のところどころに灯りが灯されている。目立たないけれど、山頂まで送電線が繋がっているようだ。



槍山。最晩年の秀吉が諸大名や女房衆ばかりか一般庶民まで数千人が参加したともいう大宴会、醍醐の花見を開催したところだ。秀吉に肖ってここで宴会をする人もいるだろうか、立入・火気厳禁の大きな看板が無粋だし、そもそも桜の木はほんの僅かしか見られない。



槍山を過ぎると道は急峻さを増し、階段が延々と続く。3000回は登っている(年会費を払うと都度の入山料は不要らしい)という地元の方とベンチでお話させていただいていると、上から下から続々と地元の方が集まってくる。



階段地獄をようやくクリアして、上醍醐エリアへとやってきた。ようやく頂上かと思ったけれど、まだ頂上までは15分くらいは歩かなければならないようだ。上醍醐の境内も随分と広いようだ。



醍醐山山頂(451m)に到着。駅から休憩込みで2時間弱。まあまあのペースだ。体調はかなり良く、疲れもあまり感じない。この調子なら音羽山への道も大丈夫そうだ。



山頂に立つ開山堂(手前)と如意輪堂(奥)。もともと空海の孫弟子である聖宝(理源大師)が、ここに開山したのが醍醐寺の起源だ。その後、醍醐天皇がこの寺を手厚く庇護し下醍醐に大伽藍が建立されたという。醍醐天皇の陵墓も近くにあるようだ。



五大堂。お堂の前には開山の祖、理源大師などの像が並んでいるけれど、僧衣ではなく、修験者の恰好だ。山深いところだけに、修験道の霊場、密教寺院としての発展したようだ。



さて、上醍醐を後にして、音羽山へと向かおうとするけれど、五大堂の脇にある道が封鎖され、立入禁止となっている。YAMAPではここを通過した活動記録を多く見たけれど、これでは進めない。自己責任とかの問題ではなく、地主が入っては駄目と言うなら入れない…。



立入禁止の鉄パイプの向こうには、さほど厳しいとは思えない道が続いているのだけれど、その先に何があるのかは判らない。訳知りの地元の方が登ってこられるのを暫く待っていたけれど、何故か誰も登ってこない。



五大院をぐるりと周回するようにして北へと向かう道が境内図にも描かれてはいるのだけれど、この道以外に道が無い。音羽山とは違う方向への道もあるけれど、結局また醍醐寺に戻ってくるしかない。



結局、音羽山への縦走は諦めて上醍醐をもう少し詳しく見て回ることにする。これは薬師堂。檜皮葺きのお堂だ。ちょっと離れたところにあって、大したものでもないと思ったけれど、これも国宝だ。見る目が無さすぎる。



醍醐水。是非見てみたいところだったのに、登りの際には立ち寄ることをすっかり忘れていた。理源大師がこの山を訪れた際に出会った仙人に、ここの水は醍醐味(最高の味)だ教わり、この地を醍醐と名付け開山したという。お堂の前で醍醐水を少し飲ませていただく。



登ってきた道をそのまま下醍醐に向けて下山。登る時には無用だと感じていたロープが有難い。急坂のうえに石が多く、ズルっと滑りやすい道なのだ。



下醍醐から駅までは少し道を変えたけれど基本的にはピストン。醍醐山を制覇しただけに終わった。距離9.1㎞、獲得標高681m、所要時間3時間49分。山科まで来た割にはちょっと歩き足りない気分だけれど、かといってもうひと山、おかわり登山をする気にもなれない。