船場を遊ぼうクロスワードラリー

2015年9月21日(祝)


船場の近代建築と古典芸能をテーマにしたイベントが、近年毎年のように大阪市中央区役所などにより開催されている。毎回趣向を凝らしたイベントとすべく工夫が重ねられていて、昨年は謎解きクイズラリーが開催されたものの、変なクイズが多いなど、完成度の低さが感じられた。舞台は同じ船場だが、今年はクロスワードラリーと装いもあらためて開催されている。



船場の北東端にあたる北浜の「大阪取引所ビル」からスタート。「船場を遊ぼう」のパンフレットには、未だ「大阪証券取引所ビル」となっている。東証との経営統合から、既に2年ほども経っているのに・・・。なんだか、今年のイベントの完成度も怪しそうだ。



ビルには、クロスワードのカギとなクイズが掲示されている。昨年は、ヘンテコなクイズが多く見られたが、今年のものは、船場に因んだ、良質のクイズだ。ところが、所定のクロスワードパズルに文字を埋めようとして、今回のイベントの稚拙さ、レベルの低さに愕然とする。この辺りについては後述することにしよう。



厄介なことに、クイズが掲示されているという27のうちの4割ものビルが日祝休館なのだ。北浜にあるルポンドシェルも今日は休業。仕方なく、金色のティーポットがトレードマークになっている北浜レトロビルに向かう。

もっとも、カギの全てが解けなくとも、タテヨコに隣接する文字の羅列から、答が類推できるところがクロスワードパズルの面白さなんだけど、今回のクロスワードラリーでは、クロスワードパズルの常識を完全無視したトンチンカンなものになっている。(詳細は後述する)



気持ちの良い晴天の休日だけに、土佐堀川にテラス席を設けた飲食店は随分賑わっている。未だテラス席が設置されていない店が多いのは、構造上の問題なのか、法律の制約か、資金不足なのかは不明だが、せっかくの好立地を生かせず、何とも勿体ないように思う。




今はマンションとなった旧三越の裏手にある高麗橋トキワビル。超高層ビルの陰になっているうえに、1Fも派手な商店ではないため、つい見逃してしまいがちなレトロビルだ。



こちらは船場レトロビルの代表選手格ともいえる、ツタが壁面を覆った青山ビルと、逆にさっぱりとした壁面の伏見ビルだ。



レトロなビルを大切にし、風格ある街並みづくりを志向する動きが強いなか、それとは逆方向のエキセントリックな建物も見受けられる。



大阪を代表する老舗料亭、船場吉兆。しかし、パンフレットのレトロビルマップには記載がない。利用する機会があるはずもなく、内部を覗きこむことも難しいが、建物としては比較的新しいものなのだろうか。



三休橋筋に面した日本基督教団浪花教会。1930年に建てられたものだ。しばしば近くを通る機会はあるが内部を見たことはない。今日こそ可能なら中に入れてもらおうと思ったが、残念ながら固く施錠されていた。



芝川ビル。エントランスに設計者や請負者の名前が立派なレリーフに刻まれている。昭和初期に美しく頑強で機能的な鉄筋コンクリートビルを竣工させた関係者の誇らしげな気持ちが感じられる。


御霊神社の向かいにひっそりと佇む北野家住宅。大大阪時代と呼ばれた昭和初期、都市の高密化に伴い、多く建設された3階建の町家だ。奇跡的に戦災を逃れて今も当時のままに残されている貴重な文化財だ。



船場を北から南にかけて、ジグザグに進んでいく。一旦御堂筋の西まで行きながら、再び東の三休橋に戻ってきた。ガス燈が建ち並んだ無電柱の美しい町並みが形成されている。良く見ると、昼間にもかかわらずガス燈の仄かな灯が見て取れる。



麺業会館ビル。かつて大阪が糸ヘン企業で、どれだけ繁栄していたかを伺うことができるルネッサンス調の豪華ビルだ。満州事変に際してリットン調査団が滞在したことでも知られる。



大切に保存されるビルがある一方、解体されてしまうビルもある。四ツ橋筋近くでは、情け容赦ない重機によるビル解体の真最中だった。みるみるうちに、ビルが崩壊していく。



四ツ橋筋にある立売堀ビル。クロスワードの答を導きだすためには、このビルのクイズに答えることが必須なんだけど、土日祝は休館。ビルの壁面にでもクイズが貼りだされていないかと、微かな期待を持ってやってきたが、どこにも見当たらない。



北心斎橋筋の三木楽器。個人住宅のように「三木佐助」という表札がかけられているが、大正末期から昭和初期にかけて、三木楽器は「大阪開成館三木佐助商店」という社名だったらしい。



マップの最南端、心斎橋大丸にやってきた。長堀の南になるので正確にいえば船場の外になるのだが、立派なビルであることに変わりはない。多くの人が、大丸の正面玄関は御堂筋側と考えているようだが、こちらには大丸マークが描かれているだけ。



正面玄関は、心斎橋筋側のはずだ。その証拠に、大丸のシンボル、ピーコック像が玄関の上に鎮座している。



これが「クロスワード」の一部。ヨコ1と、ヨコ2の間に黒マスが無い、ヨコ1はあるがタテ1のカギはなくタテ5がある、といった具合に、クロスワードパズルの規則も常識も完全無視した画期的(というより稚拙)なもの。苦労していることは重々理解できるが、立派な冊子を大量に刷って、多くのビルの協力を得た大都市中心部での大きなイベントだけに、パズルの完成度が低すぎるのは、何とも惜しい限り。誰かクロスワードパズル作成の経験者に手伝ってもらうべきだ。



船場を北から南へ、東に西にブラブラとジグザグ歩きなので、大した運動量にもなっていないが、それでも歩数は1万歩を超えていた。