東海道ウォークみちくさコンパス(湖南)

2014年11月23日(日)



旧東海道を舞台にしたスタンプラリーが滋賀県湖南市で開催されるとのニュースを目にしたが、さっぱり中身が判らない。イベント専用のフェースブックにも、県の観光情報のHPにも、地図の掲載さえ無く、一体どこを何km歩くのか不明。それに「みちくさコンパス」って何なんだろう?



しかし、地元での盛り上がり感と、スタンプ台紙が木製の通行手形になっているというユニークさに曳きつけられて、大阪から片道1490円もの電車賃を投じて、草津線の三雲駅までやってきた。駅前に設置された受付で参加費500円を支払って、いざスタートする。



平坦な旧東海道のブラブラ歩きのつもりで三雲駅に着いたのが12時半。ところが受付で貰った地図を見ると、スタンプポイントは29もある。山の上にも設置されているぞ。全部回るとなると20km以上歩かなければならない。もっとも標識が多数掲げられていて、迷うことはなさそうだ。



最初のスタートポイント「天保義民の碑」に到着。過酷な検地に対して庄屋達を中心に命懸けで反抗した結果、検地は取りやめになったものの、一揆に加わった大勢の人が拷問死、獄死に至ったそうだ。相当大規模な一揆で、湖南地域には関連する史跡がいくつもあるらしい。幕府の権威失墜にも少なからず影響したはずだ。



天保義民の碑がある高台から下りてきて、さあ、いよいよ東海道ウォークの始まりだ。この付近の旧街道は、すぐ近くに国道1号線が並行して走っているせいか、車の通行量も少ない。瓦葺の低層日本家屋が建ちならび、古い常夜燈がある。なかなか風情がある。



限られた時間で、街道筋を中心に石部まで歩くか、それとも、三雲地区にある山手のスタンプポイントも制覇していくかを悩んでいたところ、街道沿いに万里小路藤房の碑を発見。平重盛、楠木正成と並んで日本三忠臣に数えられる人の墓所が山手の妙感寺にあることを知る。それにしても微妙大師とは、ビミョーな諡号だ。



街道筋から片道1.8kmの道を上って、妙感寺に到着。建武の親政の大立役者でありながら、諫言に耳を傾けない後醍醐天皇に失望して隠遁した万里小路藤房の終焉の地と伝わる。本堂の横にある紅葉が美しく色づいている。信楽に近いせいか、大きな狸の焼物も見える。



1.8kmを戻り、再び東海道へ。失礼ながら片田舎にしては、力の入ったイベントで、みちくさコンパスと書かれた幟が随所に掲げられている。人口の割に動員数も多く、スタンプポイントには揃いのジャンパーを来た係員が3人以上配置されている。学生ボランティアも大勢見られる。



先日の山背古道ウォーキングでも、いくつか目にしたが、この辺りにも天井川が多い。この大沙川隧道は日本最古の石造道路トンネルなんだそうだ。こんなトンネルの上を川が流れているなんて、天井川が形成される理屈は判っていても、とても不思議な気持ちがする。



随所に「おもてなし処」が設けられていて、飲食が提供される。参加費と引き換えに貰った金券を使って、唐辛子を練り込んだ「弥平うどん」なるものを戴く。程よい辛さが、汗をかいた体に染み入る。



大沙川の隧道の上には、弘法杉と呼ばれる立派な古木がある。樹齢は何と750年とのことだ。



どうしたことか、ほとんど水が流れていない大沙川に沿って、再び山に向かう。目指すは1.5km先にある三雲城址だ。とっても美しくてカッコいい名前にも惹かれるが、猿飛佐助の出身地との説があることも興味深い。



ひたすら山道を上り続けること20分余りで、ようやく城跡の入口にやってきた。六角氏の詰めの城だったことからか、六角氏の四つ目紋の旗が随所に見られる。スタンプ押印の際、記念すべき200人目です、と言われた。



城址の石段を登っていくと、先日登った湖南アルプス・金勝山と同様に、巨岩が多い山城であることが判る。特に山頂付近の八丈岩と名付けられた巨岩は、東海道を見下ろす崖の上に微妙なバランスで立っている。



標高約300mの三雲城址から見下ろす、東海道。山の麓の街並みが旧東海道。その向こう側の街並みは、現在の国道1号線に沿ってできた新市街地だ。



東海道をひたすら歩くだけなら、石部駅まで8kmほどの平地ウォーキングなんだけど、山への寄り道ばかりしていて、時間の余裕が無い。ゴールをコース中ほどの甲西駅と定め、可能な限りのスタンプポイントを回る。小さな石仏がビッシリと並ぶ観音寺に立ち寄る。スタンプだけ押してサッサと次に向かいたいが、係員の人たちが熱心に勧めてくれるので境内を見て歩く。



なんとも不思議な植栽だ。頭の部分だけを残して、キノコのような形になっている。



再び天井川のトンネル。由良谷川がこの上を流れているはずだ。そう考えるだけで、とても涼しく感じる。この辺りで、「東海道ウルトラマラニック」のゼッケンを付けた3人組を追い抜く。本来はかなりの強者達と見えるものの、異様に疲れているように見受けられる。



ウルトラマラニック3人組は、デブの中年ウォーカーに抜かれたことに発奮してか、猛烈に追い上げてくる。先行すること、わずか1分ほどで、逃げるように、東海道を離れて、天保一揆のリーダーのひとり、針の文五郎の碑に向かう。帰宅後調べると、桑名から大津まで110kmを36時間以内に歩くという、とんでもないイベントに参加している人たちだと知る。



北島酒造。勧められるがままに、他ではあまり見られない、ドロリとした濁り酒と、甘い香りのする柘榴酒を試飲させてもらう。他にも何種類もの酒の試飲が用意されていたが、ほどほどにしておく。



甲西駅に近い浄休寺。ここでタイムアップだ。ここから先が、スタンプポイントの密度が高いんだけど、仕方ない・・・。スタンプポイントを歩いて全制覇するためには、朝9時か10時頃にはスタートしなければならないようだ。



木製の通行手形風のスタンプ台紙(台板とでも呼ぶべきかも)には、計15個のスタンプ。辛うじて過半数のスタンプをゲットした。東海道を象ったと思われる破線に沿ってスタンプを押してくれたが、これ以上のスタンプはどこに押してくれるのだろうか。



色々なものを頂戴した。北島酒造の日本酒、お猪口、金券で買ったケーキ、草津線複線化推進を呼び掛けるクリアホルダーなどなど・・・。



甲西駅。単線のため、ホームは一つしかないが、駅舎も用地も複線化の準備は整っているようだ。



東海道を真っ直ぐ歩くと思ってやってきたが、結局寄り道ばかり。妙感寺や三雲城跡には、送迎サービスの車がピストン運転していたが、全て無視。やはり歩かないとねぇ。



町の人々総掛かりで、長い時間をかけて準備をしてくれたことが良く判る。スタンプラリーも自由度が高く、通行手形風のスタンプ台紙や耐水紙に描かれた地図もお洒落だ。景色も史跡も満喫できた。ボランティアの方々のホスピタリティも抜群。とても良いイベントだった。

あとは、遠隔地の人を呼びこむためのPR(コース、訪問する史跡、展示しているアートなどネットでの紹介)に工夫を加えてもらえれば、もっと大勢の人たちが訪れるはずだ。


まとめ


歩行距離   13.9km
所要時間   210分 (3時間30分)
歩数      21500歩