甲州街道(13)富士見〜青柳

 2023年11月18日


6月とは思えない酷暑のなか、やっとのことで山梨県から長野県に入ったというのに、5ヶ月ぶりの富士見駅は正午過ぎなのに激寒。八ヶ岳もすっかり冬景色だ。早朝に出発しての長距離移動のため、妙な疲れはあるけれど早速出発だ。今日の目的は13㎞ほど先の茅野だ。



聞いてはいたけれど、長野県のガソリン価格は異様に高い。兵庫や大阪と比べても10円以上は高いようだ。海なし県のため、どの製油所からも遠く離れているからだろうか。



富士見駅付近に適当な食堂も見当たらなかったため昼食も摂らずにスタートしたものなので、寒いうえに空腹。大して歩いてもいないけれど、偶然見つけたコンビニで腹ごしらえ。セブンイレブンでは、ななチキとは別に信州名物山賊焼きが販売されている。



アップダウンの無い道が続くけれど、ここって標高1000m近くもある。すぐ目の前にはスキー場らしき雪渓があるし、屋根の上に雪の載せた車も多く見かける。



30分ほど歩いていると、雪もチラついてきた。天気予報では諏訪地区の降水量はほぼ無いとのことだったけど雪のことなど考えもしなかった。ここに来る際に電車で通過した木曽谷ではみぞれが見られただけに、少し不安になってきた。



原の茶屋、桔梗屋。蔦木宿と金沢宿の間が三里四町もあったため、旅人が不便だろうと、何も無い広々とした原っぱに茶屋が建てられ、その後茶屋を中心に集落ができたという。



今もかなり原っぱ感の強いところにカゴメの大きな工場がある。おそらくこの地の高原野菜などを原料にしているのだろう。更に原っぱの真ん中に、野菜の体験型テーマパークなるものが立てられている。近くまで行きたかったけど、寒すぎて寄り道する気に慣れない…。



温室というには、かなり規模が大きいものだ。これもカゴメの関連施設なのだろうか。内部はうかがい知れないけれど、野菜工場とでも呼んだ方が良いのかもしれない。



茅野市に入る。市境の看板には標高(888m)まで記されている。市境の看板だけではなく、道を歩いていると、方々に標高の表示が見られる。



茅野市内に入ると、大して標高が下がった訳でもないのに、それまでの冬景色から秋景色に戻ったような、色づいた山肌が現れる。途中気温も低く、雪もちらついたりしたので、歩くのが辛かったけれど、気温も少し上がったのか、体も軽くなってきたような気がする。



JRの青柳駅を越え、しばらく進むと金沢宿が現れる。元は青柳が宿場町だったのが、大火事のため宿場町が金沢に移ったそうだ。しかし本陣跡も石碑ではなく、安っぽい立て看板が立つだけ。ちょっと寂しい旧宿場だ。



元は旅籠屋だったという松坂屋。古い看板をよく見るとHOTELの文字がある。明治になっても長らく旅館を営んでいたのだろうけれど、この看板、いつ作られたものだろうか。



金沢宿を過ぎ、殺風景な国道を西へと進んでいく。時刻は14:29。



ところが1分後、あたりの状況は急変する。14:30激しい風雪が襲いかかる。スマホって、写真の撮影時刻までしっかりと記録されているのが今更ながらスゴイことだと思う。



さらに1分後の14:31。吹雪と言って良い状態になってきた。しかも強い風が進行方向(西)から吹いているものだから、まっすぐに前を見ることさえ困難な状態になってきた。わずか1~2分での天候の急変は驚異的だ。



一体何を撮ったのだろうか。川かなぁ…。とにかく酷い吹雪で、写真を撮ることさえ困難になってきた。顔面を吹雪が襲い、上着にも帽子にも雪がどんどん付着し、このままでは雪だるまのようになってしまいそうなほどだ。



14:32。視界もどんどん悪くなってきた。はじめのうちは、周囲に人家もあり、道も舗装されているので、楽観的に考えていたけれど、標高800mの山地と思えばホワイトアウト→遭難→凍死と至るような気象条件ではなかろうか。



もはや風上に向かっての前進は物理的にも困難。体は急激に冷えてきた。とにかくこの吹雪から身を隠さねばと、鎮守の森のようなところに逃げ込む。



大木の影で吹雪が過ぎ去るのを待つ。しかしスマホで調べたところ、しばらくは天候回復しそうにないことを知る。体も冷え切り、もはや撤退するしかない。できれば5㎞先の茅野駅まで行きたいけれど、風下になる2㎞先の青柳駅に戻るのが賢明だろう。



吹雪の勢いが収まってきた頃合いを見計らって、青柳駅へと戻っていく。雪が降り出してわずか15分ほどしか経っていないというのに、歩いてきた時とは風景が全く異なっている。



西向き(吹雪が吹き付ける方向)に立った看板には雪がビッシリと付着し、文字など到底読めなくなっている。繰り返しになるが、わずか15分で風景は一変してしまった。



こんなトコ歩いたかなぁ…。来た時とは違って完全に真っ白な世界となってしまい、つい先ほど歩いた道を戻っているとは思えない。



何がどうなっているのか、青柳駅に着いた頃には急に雪も収まり、空も明るさを取り戻している。ただ寒さばかりは半端ない。モダンな造りの駅舎だけれど、自販機さえ無い寂しい駅でボンヤリと1時間後の電車を待つ。疲れた~、というより、危なかった〜との思いが強い。



結局所要時間3時間ほどで総歩行距離は10㎞弱。もっとも結局青柳駅に戻った訳だから、有効歩行距離は6㎞ほどでしかない。今日茅野まで辿り着かないと、明日中に甲州街道の終点(下諏訪宿)まで行くことは困難になるが仕方ない。明日は青柳から再スタートになる。