2024年8月6日
今回の中山道歩きはJR高崎線の行田駅から。駅舎だけが行田市で、すぐ南は鴻巣市、北は熊谷市、という不思議な立地。高崎線が行田市を通過しているのは僅か200mほどだ。行田市の中心は秩父鉄道の行田市駅になるようだ。
行田駅から再び荒川の堤防の上を通る中山道へ。途中から車両通行止めになっているのが嬉しい。もっとも今日は自動車よりも、日射が気になる。昨日より少し涼しいようだけれど、厳しい埼玉の日射を遮る木もビルも無い道を進むのは、実に無防備な行動に感じられる。
熊谷の街並みが遠くに見える。昨日の川越歩きの疲れが残っているせいか、とても遠く感じられる。まだ午前9時半でさほど気温は高くないけれど、湿気が酷く高く、身体にまとわりつくようなベタベタした空気感だ。
荒川に架かる久下橋。橋長は778m。長くて橋の末端が確認できないほどだけれど、航空写真で見る限り、平時の荒川の川幅はせいぜい50m。残りの700mは荒川が氾濫した時に備えた堤外地であり、いざとなれば遊水池となる地帯に架けられている。
久下橋を横から見ると、橋の下部には何もない草原が広がる。その名のとおり荒川が荒ぶる川であったことが知れる。
橋が架かる前には渡し船だけが荒川を渡るための手段だったようで、この辺りに渡船場があったようだ。昭和30年についに架橋したものの、その橋長は100m弱。川が氾濫したら冠水することを前提に設計されたものだったらしい。
荒川の堤防から市街地へと入っていくと、熊谷の手前に、八丁の一里塚があったという。ようやく江戸日本場から16里めになる。塚は残されていない。まあ、説明板があるだけでもヨシとしよう。
熊谷駅の手前で新幹線の高架を潜り、高崎線を渡る。踏切の名前が第六中仙道踏切。第六というけれど、どこから数えて6番目なんだろうか。これから踏切を渡る際には、踏切名にも注意することにしよう。
熊谷の中心部を流れる星川。整備された川の両岸には、様々な屋台が並ぶ夜市が毎月開催されるところらしい。
日本最高気温41.1度という記録を有する熊谷市に、最も暑い季節、最も暑い時間帯にやってきた。しかもまたまた国道17号線に戻っての舗装道歩きとなる。もうかなりバテているけれど、大丈夫かぁ…。街路樹は木陰を期待できるほどには成長していない。
熊谷市も日本一暑いという状況に無策であろうはずもなく、遮熱性舗装を導入するなどを進めているようだ。でも地図を見る限り、1㎞ほどしか対策されていないようだ。
期待はしていなかったけれど、旧宿場町の雰囲気はほとんど感じられない。札ノ辻跡にも簡単な説明板が立つだけだ。説明板には、「中山道の記憶を今に伝える貴重な文化財である」とあるけれど、復元さえされていないし、何が文化財なんだろう…。
残念ながら本陣跡も説明板だけ。火災や空襲で主だった旧宿場の遺構はあらかた焼失したようだ。中山道では板橋宿に次ぐ大きな町だったというけれど、忍藩が厳しく風紀を取り締まり、飯盛女を置かせなかったことなどで、あまり人気のある宿場町ではなかったらしい。
熊谷市内唯一の百貨店、八木橋百貨店の前には、「熊谷夏の陣」という大きな看板がある。まあこれだけ暑いと、その暑さを逆手にとって街の活性化に繋げようとすることも理解できる。ただ残念なことに、午前11時(30.6度)から気温の更新がされていない。
百貨店のレストラン街で昼食。ちょっと高そうだけれど、とにかく涼しいところでゆっくりしたい…。あんかけ焼きそばのランチセットを注文。当然ライスが付くと思っていたけれど、蒸餃子と杏仁豆腐だけ。炭水化物定食に慣れた関西人にはちょっと物足りない…。
店を出ると気温は33.4度。まだ13時20分だから、さらに34~35度くらいまで上昇しそうだ。おそらく20度台前半に冷房が効いたレストランですっかりクールダウンした体にとって、この温度差はキツイ。再び歩きだす力が出ない…。
歩道橋がメチャクチャ辛い。なんで横断歩道にしてくれないんだ、とボヤきたくもなる。体がとても重く感じられる。
国道17号線から分岐して少し狭い道となる。車両通行量が多い国道では、歩道が分離されていても、気分も載らず、何故かとても疲れが溜まる。これくらいの道でも有難い。
と思ったら、間もなく再び国道17号線に再合流。高いビルも街路樹もなく、ロードサイド型店舗ばかりが並んでいる。もっとも辛い道だ。目に付くのは「雪くま」という熊谷ブランドの高価なかき氷の看板。喫茶店だけでなく、定食屋や中華でも雪くまを扱っている。
熊谷の市街地を離れ、少しずつ田園風景が楽しめるようになってきた。田んぼの上に何羽もの大きな鳥が舞っている、と思ったら、空飛ぶ案山子のようなものらしい。ポールから紐で結びつけられた鷹?型の凧が、縦横無尽に飛び回って、小鳥たちを追い払っているようだ。
JR籠原駅。せめて深谷駅まで歩きたいと思っていたのだけれど、ここでギブアップ。北上するについれて駅間距離が長くなり、次の深谷までは5㎞強。まだ熊谷市を脱出できてもいないけれど、もう十分疲れたし、明日もあるので無理は禁物だ。
籠原駅から、立ち寄ることができなかった熊谷駅に電車で戻る。駅前にはこの地出身の熊谷直実の銅像がある。須磨寺にある銅像と同じように扇を手にしているけれど、これは一の谷の合戦で逃走する平敦盛を呼び止めている有名なシーンだそうだ。
秩父鉄道の改札前にある「熊たまや」で肉ネギつけうどん。カウンターだけの小さな店だけれど、とても評判の高い店。小麦粉もネギも熊谷産を使い、七味は自分でブレンドする。細めの麺はとても喉越しが良く、暑い日には持ってこいだ。埼玉のうどんのレベルは高い。
7時間半も掛けた割には歩行距離は13.3㎞。統計を見ると3時間15分も休憩しているのだから、こんなものだろう。この季節、休憩時間は歩行時間と同じくらい欲しいところだ。