中山道(6)(籠原~本庄)

 2024年8月9日


JR籠原駅から中山道歩き再開。昨日は所用のため、体力は多少回復したようだけれど、今日も暑い日になりそうだ。さらに雲が少なく、日射しに苦しめられそうだ。ツバの広い帽子と長袖の速乾シャツ、そして秘密兵器?の空調服でどこまで対応できるだろうか。



比較的快調に熊谷市を抜け、深谷市にやってきた。かつては400本ほどの松や杉が並んでいたというけれど、今ではほとんど残っていないようだ。道の拡幅に伴い、植栽を進めているらしいけど、旅人を日光から守るまでにはまだまだ長い年月が必要となりそうだ。



深谷宿の東西入口にある常夜燈。当時のものが残っているようだ。今と異なり、当時の旅人にとって、常夜燈はとても明るく、有難いものであったに違いない。



文政八年から営業しているという旅館が今も営業している。創業200年にもなり、今の建物の築年数は浅そうだけれど、かつての建築様式を可能な限り継承しているように見える。最盛期には深谷宿に80軒ほど旅籠が並んでいたという。



旅館だけではなく、酒蔵、茶舗、製菓、など、古くからこの地で営業していたと思われる老舗の多くが古い建築様式となっている。ただその数は限定的で古い街並みを形成するほどではない。でも新しい建物も和風になっているものが多く、今後街並みの整備が進みそうだ。



深谷駅。街の規模とは不釣り合いなほどの豪華な駅舎だ。深谷は煉瓦生産が盛んで東京駅の煉瓦の大半は深谷産らしい。もっともここで使われているのは重厚な煉瓦ではなく、煉瓦風のタイルのようだけれど、それでも相当な力の入りようだ。誰が費用負担したのだろうか。



深谷は渋沢栄一の故郷。駅前には立派な渋沢栄一の銅像が建てられている。NHK大河の主役に続き、新一万円札の肖像となり、大いに盛り上がっている。町中に渋沢栄一のバナーやポスターが溢れかえっている。



もっとも深谷の一番の誇りといえば、もとは深谷ネギだったはず。マンホールには、深谷ネギをモチーフにしたゆるキャラ、渋沢栄一に加えて、一の谷の戦いで馬を担いで坂を駆け下りたという畑山重忠、市の花の椿と特産の煉瓦…、と深谷市のウリの多さが判る。



もっとも中山道の旧宿場町としては、ちょっと寂しい。本陣跡に立つ碑もかなり老朽化している。街並みの整備も少しずつ進んでいるようだし、今後の発展に期待したいところだ。



古い酒蔵を活用した街の活性化が進んでいるようだ。広い敷地にある多様な建物が開放され、飲食店や書店や映画館など、様々な業態のお店となっている。



鬼瓦工房なんてのもある。市が古い酒蔵を借り上げ、ありきたりではなく、ユニークな取り組みをしている芸術家や起業家にシェアしているようだ。覗いて回るだけでも楽しく、深谷の新たな名所になりそうなところだ。



深谷の地域通貨はネギーというらしい。地域通貨で買い物をするとさらに抽選で地域通貨が貰えるらしい。ネギージャンボとは軽いノリだけれど、人口10万前後の都市が数多く並ぶ埼玉北部にあって、地域経済振興にあの手この手を駆使しているようだ。



日射しがキツく、日陰のベンチを見つけるたびに座り込んでしまう。一旦座り込むと日陰から強い日射しを見つめ、雲が太陽に掛かるタイミングで再び歩きだすことを繰り返す。これがかなり効果的。日陰で休憩中こそ空調服は威力を発揮し、体力回復を助けてくれる。



岡部藩の陣屋跡に立ち寄る。譜代の安部家が江戸時代を通じて治めた2万石ほどの石高が合った藩だけれど、驚くほどに何もない。



岡部駅を過ぎると次の本庄駅まで7㎞も駅がない。バスも走ってない。やめるならココなんだけど、頑張って本庄を目指そう。途中で地元の方と長い雑談をし、飲み物やタオルまで戴く。ご厚意に応えるためにも歩き通さねば…。でも、暑い…。



深谷市も端っこの方までやってくると、急に視界が広がり、群馬県の山々が薄っすらと見えるようになる。手前の畑は、ネギ畑。あっ、深谷ネギだ。



利根川と荒川に挟まれた深谷は土地が肥沃で、良い農作物が採れるところだそうだ。何故か関西では深谷ネギを見ることが少ないのだ。糖度の高くてすき焼きなんかには最高なんだけどなぁ…。深谷ではネギ料理でも食べたいと思っていたのだけれど見当たらない。



岡部消防署第一部と書かれた要塞のような倉庫。消防車が格納された車庫なのかもしれない。明らかに戦前の建物だから元は防空壕のようなものなのかもしれない。興味は尽きないけれど、何の説明もない。火の見櫓と拡声器が併設されている。



市街地から離れて完全に田園風景のなかのウォーキングになる。国道歩きよりも何十倍も楽しいはずなんだけど、暑さに参ってしまう。とにかく日陰が無いのだ。



小山川という川を渡る。調べてみると利根川水系だ。ここまで荒川に沿って北上してきたけれど、この後しばらくは利根川沿いに歩くことになるようだ。橋を渡るといよいよ本庄市だ。



お日様が雲に隠れるのをじっと待つ。慌てる必要もない。いや慌てるだけ疲れる。とにかく日射しが弱まるのをゆっくり待つことにする。



旧本庄宿に入ってきたときには西日がギラギラ。気温は少し下がったけれど、眩しいうえに、空調服のバッテリーが切れてしまう。空調ファンが止まって初めて空調服の効果が実感できる。これまで主に北に向かって歩いてきたのが、西に針路が変わってきたのが判る。



本庄駅。今回の遠征はここまで。群馬県入りを目指していたけれど、まあこんなものだろう。次回はいつになるか判らないけれど、いよいよ埼玉県を脱出できるはずだ。



歩行距離18.8㎞。所要時間9時間40分、うち休憩時間が4時間半! 所要時間の46%が休憩だけれど、これでいい。時間を削るよりも、疲れを最小化させることが優先だ。