柿谷道男坂~荒地山~高座谷【六甲山系】

 2022年2月1日


阪急芦屋川駅から北へ20分ほど、住宅街が途切れたあたりにある水車谷の登山口までやってきた。ここから柿谷道男坂、芦屋ゲートを経由して荒地山に登り、その後キャッスルウォールを見上げる高座谷で再び芦屋に戻るという、比較的しんどそうな道を選んで歩く予定だ。



ガードレールの切れ目の奥に、ひっそりと登山口がある。つい先日柿谷道女坂を下ってここに下りてきたばかりだけれど、今日は男坂で奥池方面へと登っていくつもりだ。



以前から気になっているのだけれど、ここに土石流感知センサーのテレメータ装置がある。どうやらワイヤーにテンションがかかったら土石流アラームが発出される仕組みのようだ。谷筋を通るたびにワイヤーを探すのだけれど、未だに目にしたことがない。



女坂が石ころゴロゴロながらも比較的なだらかな谷道であるのに対して、男坂は岩稜の多い尾根道だ。登るにしても下るにしても、男坂の方がしんどい道だと思う。この道を破線扱いにしている登山地図も少なくないけれど、厳しいながらも特段の危険個所は無い。



芦屋市が立てたと思われる現地の表示は柿谷道男坂ではなく「前山遊歩道」だ。プロムナードと英語表記まで付記されている。こんな険しい道を「遊歩道」と呼んでいいものなのか。とても散歩の道ではない。もっともこのブログのタイトルも閑歩なんだけれど…。



尾根道だけに、谷を進む女坂(単に柿谷道とも呼ばれている)と違って眺望は良いけれど、風は強いし、アップダウンも多い。



縦横に穿たれた矢穴が残る巨岩が多く見られる。徳川時代の大阪城再建のための石垣のために、この辺りの岩が多く切り出されたそうだ。尼崎城主だった戸田氏鉄が大阪城の普請奉行になったので、張り切ってこんな山の中の岩まで切り出そうとしたのだろうか。



ゴロゴロ岳の手前で芦有ドライブウェイの芦屋ゲートに向けて下っていく。しっかりと案内標識はあるものの、登山マップではせいぜい破線で記載されているだけなので、これまで足を踏み入れていなかった道だ。大丈夫だろうか。



歩いてみると、とても歩きやすい道だ。途中にちょっとした広場や何かの苗の栽培所などもある。芦屋森の会の方々が整備をしておられるらしい。どうやら、もともとキャンプ場があったところのようだ。



奥池の方から流れてくる川には、これでもか、というほどに連なった治山ダムの横をすり抜けるように下っていく。



山を下っていくと、芦有ドライブウェイの芦屋ゲートが見えてきた。体調が悪ければ、ここからバスで芦屋に帰ることも考えていたけれど、体力的には全然問題なさそうだ。



が、ちょうど芦屋ゲートまで下りてきたところで、雨が降りはじめた。降水確率30%という予報だったけれど雨雲が西から押し寄せてきている。雨のなかを荒地山に登るのは楽しくないし、かといって次のバスまでは30分もある。しばらくゲート付近で様子見をする。



雨脚はさほど強くなりそうにもないので、予定通り荒地山に登っていくことにする。これから山に登るというのに、標識は斜め45度下方を向いている。まずは道から河原までの崖を下っていかねばならないのだ。



以前、荒地山から下りてきた時に、ちょっと難儀したことを記憶しているけれど、今日は水量も少なく、何の問題もなく渡渉でき、荒地山へと取りついていく。



まあ覚悟はしていたけれど、巨岩・奇岩がゴロゴロと転がる道。勾配もなかなかのものだ。もっとも岩梯子や七右衛門嵓などの難所を通るメイン登山道よりははるかに気楽に荒地山まで登れることは間違いない。



急坂を登り詰めて鷹尾山から荒地山に繋がる尾根道に合流。間違っても鷹尾山に向かってはいけない。登りならともかく、七右衛門嵓や岩梯子などの難所を下っていくだけの力量などあろうはずがない。



荒地山山頂(549m)。幸い雨は降りやんでいる。天候次第では、無難に魚屋道に出ようかと思っていたけれど、体力も天気も問題ないようなので、計画通りちょっと険しい高座谷を下っていくことにする。



どうしたことか、高座谷の登山道はどの市販マップや地図アプリでも十分な記載がない。以前もキャッスルウォールから荒地山に至る道を他のハイカーに道を確認しながら、とても心細い思いで、そしてヘトヘトになりながら登ってきたことを思い出す。



確かにしんどい道なんだけれど、道を外れずに注意して歩けばポンコツハイカーでも何とかなる道だ。YAMAPにも道の記載はないし、奇岩に通じるなどの枝道も多いので緊張感を持って歩いていく。名所の黒松岩を過ぎると、ひたすら岩場歩きの険しい道が続く。



こんな道あったかなぁ…、西側を流れる高座川から大きく外れることなく進めば、大きく間違えるはずはないとは判っているのだけれど、不安がぬぐい切れないままに、よく覚えていない道を進む。



出た~。キャッスルウォールだ。高さ25mもあるはずなのに、写真に撮ると大した高さに見えないぞ。ロッククライミングなどしたくもないし、この横を攀じ登っていく岩梯子への道もあるらしいけれど、試してみる気にもならない。



初めてキャッスルウォールを目指してきたときは、こんな道行けるものではないと登攀を諦めた岩ゴロゴロの谷を下っていく。覚えている道であれば、少々の難路でも不安を感じず進むことができる。



2週連続で高座谷から下山。先週は右岸を中心に歩いたけれど、今日はなるべく左岸を下りて行く。今日もイノシシの姿は見えない。糞や掘り返し跡は目にするので近くにいるはずなんだけれど…。長らくお目にかかっていないけれど、まさか避けられているのだろうか。



芦屋ロックガーデンの最下部付近に合流。芦屋の町がボンヤリ霞んでいる。高座谷でも少し雨に降られたけれど、運よく問題なく予定していたコースを歩き通すことができた。



芦屋川駅でYAMAPの歩行軌跡を見てビックリ。なぜか荒地山から芦屋川までの間のGPS信号が飛んで、直線になっている。まるで高速道路かトンネルでも歩いたような軌跡だ。記録上は8.7㎞だけれど、実際は10㎞くらい歩いているのかもしれない。所要時間は約5時間。