的形アルプス(姫路市)

 2022年2月23日


姫路市の「的形ふるさと里山回廊」に出掛ける。姫路市の的形を取り囲む低山群は的形アルプスとも呼ばれているけれど、標高100m内外の超低山ばかりだ。大きな登山マップが掲げられている山陽電車の的形駅から、まずは看板の向こうに見える坂の山に向かう。



駅からしばらくは住宅街を抜けて登山口へと向かっていく。全ての曲がり角には登山口への案内標識が設置されている。地域のボランティア団体が精力的に整備を進め、老若男女が楽しめるハイキングコースに育て上げようとしていることがよく窺える。



登山道に入ると、多くの木々に名札が吊り下げられている。裏面には名札を製作・取付したと思われる地元の小学生の名前が記されている。あらためて多様な樹木が共生していることがよく判る。



「坂の山」という山名から予想されたような急坂はなく、駅から30分ほどで標高110mの坂の山の山頂まで登ってきた。山頂部適度に樹木が伐採された山頂部にはベンチ類も設置されていて、高砂から姫路にわたっての海浜部を広く見渡すことができる。



坂の山を一旦下って、続いて大日山に向かう。よく整備された登山道が続く。さほどの急坂でもないけれど、ロープも張られている。



坂の山から15分ほど歩いて大日山(107m)に到着。頂上には小綺麗な東屋が建っている。東屋には時計も設置されていて、ここまでの健康登山を日課にしている人も多いことが窺える。



泥濘の多い道には木道が設置されているなど、相当念入りに道は整備されている。



分岐点には例外なく案内標識があるうえに、登山道にはかなり多数のピンクリボンが取り付けられている。ここまでされると、迷うにも迷いようがない。



山塊の東から西に縦走し、青の山(97m)までやってきた。この山も眺望は良く、西側に広がる姫路の工業地帯や住宅街がよく展望できる。駅をスタートしてここまで1時間ほどだ。



ここまで山頂ごとに休憩施設が設置されているけれど、これは何だろうか。草がきれいに刈り取られた登山道にテーブル付きの椅子が並んでいる。軽食や飲み物でも売っていそうな雰囲気だ。



的形ふるさと里山回廊のルートを少し外れて、丸山(81m)のピークを踏みにやってきた。山頂部は意外に広く、3段の台地状に整地されている。ちょっとした城郭の跡のような雰囲気だけれど、おそらく近年整備された地形のように思える。



山陽電車と国道250号線を南に渡り、高坪山に向かう。ここまで岩っぽいところが少なかったが、初めて岩稜らしいものが登場する。



高坪山山頂(105m)。眺望はないけれど、ベンチはある。



高坪山から南に下っていく。下山路は分厚い竹林。しかし竹林のなかの道にありがちな躓きやすい地下茎も取り払われている。



高坪山の南麓は四国八十八ヶ所霊場巡りの石仏が立ち並ぶ道となっている。どこにでもあるような里山だけれど、歩くにつれて雰囲気は次々と変わっていく。



一旦福泊の街に下りて、海岸沿いにある木庭山(61m)までやってきた。山から海までの絶壁は三国志における最大の決戦地である赤壁を想起させると、頼山陽が「小赤壁」と名付けた名勝となっているけれど、小公園となっている山上からは小赤壁を確認できない。



海岸に沿って燈篭寺山(54m)にやってきたのが丁度正午。10時半に的形駅を出発して2時間半で予定の7山を制覇したことになる。



燈籠寺山を下りて、海岸に出て小赤壁を確かめる。実際の赤壁は見たことも無いけれど(頼山陽もそのはずだ)、もっと赤茶けているのではなかろうか。しかし多くの三国志ファンが「小赤壁」という名前に惹かれて、この地を訪問していることは疑う余地がない。



海岸に突き出したようなお堂に祀られている八家地蔵。鎌倉時代から沖合を行き交う船を見守ってきたお地蔵様だけれど、今では防波堤に囲まれて、お地蔵様の視点からは船も海も見えなくなってしまっている。



的形の海水浴場。東西を化学やガスの工場、発電所などに挟まれているとは思えないほど、とても穏やかで美しい海岸が伸びている。予定より早く山歩きを終えたので、わざわざ砂浜を歩いて的形駅を目指すが、砂浜が実に歩きにくく疲れることを思い知らされる。



予定はしていなかったけれど、的形の西側にある山塊にも登ってみよう。「行基が鼻」と呼ばれる海に突き出した岩稜を登って、まずは磯山へと登っていく。



磯山の頂上手前に媼が懐(おんばがふところ)と呼ばれている古墳がある。石を積み上げて作られた横穴式古墳だ。



磯山(60m)。眼下には太陽光パネルが広がる。おそらく元々は塩田だったところではないだろうか。



磯山に続いて向山(67m)も制覇。さらには泊山に向かう(山頂は確認できず)。残念ながら磯山・向山・泊山のいずれもが、YAMAPには掲載されておらず、登頂山数にはカウントされない。



的形地区を馬蹄形状に取り囲む山々をグルっと歩きとおした。距離は10㎞、累積標高は500m、所要時間は3時間45分。よく整備された道だけれどアルプスというには標高も低く、岩場も少なく急峻でもない。里山回廊と呼ぶ方が相応しいようだ。