天井川左俣〜馬の背【六甲山系】

 2023年1月28日


昨夜の降雪で、自宅から仰ぎ見る六甲山系も標高500mあたりから上は真っ白になっている。標高300m程度の須磨アルプスなら薄っすら雪に覆わつつも、無難に歩けるのではないかと期待してホームが白く凍てついた午前9時頃に月見山駅にやってきた。




65歳以上の無料特典を生かして須磨浦離宮公園の中を通過して六甲縦走路を目指す。月見山駅から離宮公園の間にコンビニが見当たらず、昼食の買い出しができなかったのが想定外だったけれど午後の早いうちには下山できるはずだ。無人の噴水広場を登っていく。



気温は2度。意外にも噴水池は凍結していなかったけれど、池の畔に植えられているパンジーは残雪のなかに埋もれかかっている。寒さに強いと言われるパンジーだけれど、大丈夫なんだろうか。



須磨離宮公園のなかを北に進むと、展望台へと続く階段が現れる。この道が栂尾山・横尾山の稜線へと繋がているはずだ。



北に進んでいくと、いつの間にやら普通の山道へと変わっていく。公園の出口もなく、境界も定かではない。静かな尾根道のようだけれど、真下には第二神明道路のトンネルが貫いているため、自動車が通行する音が結構うるさい。



四差路にやってきた。ここから栂尾山に登る道、水野に下る道は、かつて歩いた道だ。降雪のため無難に栂尾山へと向かうつもりだったのだけれど、思ったほどの積雪していない。いつもの悪い癖で予定変更し、天皇の池へと向かうことにする。



天皇の池へと向かう道は、YAMAPには記載がないけれど、六甲山系登山詳細図では赤線(一般登山道)と示されていいるので大丈夫と思い進んだけれど、結構油断のならない急な下りが続く。



おお、これが天皇の池か。須磨離宮に浄水を送るため、天井川を堰き止めてできた池だという。遠目には木漏れ日を反射して幻想的とさえ感じる濃いエメラルド色だけれど、近づいて池を覗き込むと、驚くほどに澄んだ水を湛えていることが判る。



増水時に水を逃がすための隧道も残っている。ちょっと中を覗き込んでみたいと思ったけれど、倒木に塞がれているうえに不気味な雰囲気でもあったので、自重する。



天皇の池から先は天井川左俣と呼ばれる難路。六甲山系登山詳細図にも「探検的沢ルート、降雨時には絶対立ち入るな」とある。でも他の山行記録を読む限りは、迷いやすい個所はあるものの道はしっかりしているとのこと。危なそうなら引き返そうと考えて進んでいく。



歩きだして早々に道を間違えている。倒木に遮られる谷筋(前の写真)を登っていったけど、堰堤に遮られて引き返す。右が進んでいった谷道。谷の上へと続く左の斜面を登っていくのが正しい道だ。この数mの僅かな差は地図でもGPSでも判別することは難しい。



しかし深い谷を右手に見下ろしながら進む斜面道はひどく狭い。しかも路肩は緩い。まず無いとは思うものの、もし前方から他のハイカーがやってきたら、どうやってすれ違うのだろうか、などと考えながらも、恐る恐る進んでいく。



冷や汗ものの斜面道をクリアすると、ロープで攀じ登る急斜面が現れた。危なそうなら引き返そう、と思っていたはずなのに、やっとのことでクリアした細い斜面道を戻ることなど考えられず、既に引き返すに引き返せなくなっていることに気付く。



しかし再びか細い斜面道。右側の谷はさらに深いが、進むしかない。右手のストックでいかにも崩落しそうな路肩の緩さを確認しつつ、左手は木の枝や根っこなど、とにかく掴めるものに掴まって、慎重に前進していく。



さらに道が紛らわしいところにやってきた。結局谷道を進むが、どんどん道が荒れ、さらに勾配がキツくなってきた。かといって登ってきた荒れた谷道を下ることもヤバそうだ。危なそうなら引き返す、というシンプルなことができそうでできない…。



四苦八苦して、なんとか尾根道へと登ってきた。全然歩きやすさが違う。どこでどう間違ったのかは判らないけれど、とにかく良かった。積雪があれば、さらにヤバイことになっていたに違いない。六甲山系登山詳細図のとおり、ポンコツが挑むようなルートではなかった。



無事六甲縦走路に合流することができた。獣道から国道に出てきたような気分だ。なんだかすっかり疲れてしまったけれど、気を取り直して、あらためて馬の背へと向かう。



いかに階段が続いていても、滑落と隣り合わせのような道を進むのと比べれば、全然楽チンだ。六甲縦走路に合流して間もなく横尾山(312m)に到着。須磨の町を見ながらひと息つく。須磨海浜公園の前に立つ高層マンションがやけに目立っている。



六甲縦走路に登るまでは基本的に南斜面だったせいか、ほとんど積雪は無かったけれど、山稜の日陰部分にはまだそこそこ雪が残っている。シャーベット状になっているところや、アイスバーン状になっているようなところもあって、いかにも滑りやすそうだ。



いよいよ馬の背が現れた。もともとは雪に覆われた馬の背を期待してチェーンスパイクまで持ってきたのだけれど、雪が無くて残念という気持ちと、ホッとしたという気持ちが、半々といったところだ。



馬の背までの岩場を攀じ登る。岩がとても冷たい。



これだけ日当たりが良ければ多少の雪は容易に溶けるのだろう。路面もすっかり乾いている。雪を期待して登ってきたけれど、こんな天気だから登山を中止した人の方が圧倒的に多いのだろう。休日だというのに、人の姿は疎らだ。



東山(263m)の山頂から板宿に向けて下山。あとはダラダラと下っていくだけだ。



正午を過ぎ、お腹も減ったけれど、昼食を買い損ねたので非常食のチョコレートや羊羹をパクつく。幸いこの道には何ヶ所か、眺望のよいベンチが設置されている。



麓の板宿八幡神社にもお参りしたり、駅前商店街でちょっとした買い物をしながら板宿駅へ。無茶なコースを進んだけれど無事登山できた。歩行距離7.3㎞、所要時間は3時間55分。獲得標高は529m。




天狗岩南尾根【六甲山系】

 2023年1月17日


2年振りに天狗岩南尾根から六甲山上を目指す。スタートは六甲の山腹に拓かれたニュータウン、渦森台。ここをスタートにするのは、どうもチートっぽくて後ろめたさを感じてしまうのだけれど、住吉から渦森台までの自動車道をテクテク登ってくるのは実に億劫なのだ。



渦森台の住宅街のはずれから登山道へと繋がる道があるはずなんだけれど、なんだか注意標識ばかりが目立つゲートだ。こんなトコだったかなぁ…、と思いながら、ゲートの脇をすり抜けて山の中へと進んでいく。



案内標識がある。このまま進むと「西山谷(熟練者向)」とある。西山谷って、メチャやばいトコのはず。ポンコツハイカーが立ち向かえる道ではない。よく見ると微かに「天狗岩南尾根」の文字も読み取れるんだけれど、誰かの手によってほとんど消されている。



YAMAPによれば渦森台から天狗岩南尾根に向かう道は2本。以前下りで使ったのは、この道ではなくもう一本の方だったのだろう。しばらく進むと、西山谷と天狗岩南尾根の分岐標識が現れた。よしよし大丈夫そうだ。注意深く渡渉して天狗岩方面へと向かう。



ところが全然大丈夫な道じゃない。急斜面を攀じ登るような道が続く。もう一本の道は階段の多さに苦労したものの、こんな難路ではなかったはずだ。



不安な道が続くけれど、行けなくもない。GPSでYAMAPの登山道上を歩いていることが確認できるので、引き返したくなるような崩落しかけたトラバース道もロープにしがみつきながら進んでいく。



やれやれ、谷から攀じ登って尾根まで辿り着き、もう1本の登山道に合流することができた。神戸の町が見渡せるところで、ちょっとひと休みする。



あとは大した道ではないはず、と思っていたんだけれど、マイナーな道だけに藪に覆われたところも多い。



段差が大きい石段が多い。石段を作ってくれているだけ有難いことなんだけれど、古傷のある股関節にかかる負荷は大きい。



しかし登るにつれて勾配は緩やかになってきた。序盤の急斜面でのダメージも癒えて、ほとんど足跡が見られない林の中の道を快調に進んでいく。



ふとYAMAPの歩行軌跡を見ると、随分と端折られた直線状の軌跡になっている。たまにこんなことが起きるんだけれど、これはGPSの受信状況が悪いというより、スマホの負荷が高いせいだと最近気が付いた。スマホを再起動すると、細かな軌跡を残してくれるようになる。



天狗岩に向けての最後の登り。いつものことだけれど、目の前に青空が広がる頂上や尾根に向かっての登り道になると、どこからかエネルギーが沸き上がってくるような気がする。



天狗岩到着。アチコチに天狗岩なるものがあって、その名の由来は天狗が座っていそうな崖に突き出したような巨岩に名付けられていることが多い。でもここは、どこかの方向から岩を見ると天狗の姿に見えるという。でも未だにどこが天狗に見えるのかが判らない。



天狗岩を有名にしているのは、六甲山系屈指の眺望。特に夜景は素晴らしいそうだ。ケーブル山上駅からなら、少々暗くともほぼ舗装道ばかりなのでここまで歩いてくることは難しくないようだ。



六甲ケーブルの山上駅からガーデンテラスまでを繋いでいたロープウェイが休止されてから20年ほどが経つ。休止といっても、劣化は激しく天狗岩にあったという中間駅の面影も残されていない。運転再開する日が来るようには思えない。



無線塔。パラボラの数が多く、阪神間から六甲山を見上げたときに最も目立っている無線塔のひとつだと思う。でも、セキュリティのためか、多くの無線塔は、何の用途なのか、誰の所有なのか、という情報は現地でも開示されていない。興味あるんだけれどなぁ…。



かつて一世を風靡した六甲オリエンタルホテルは、完全に更地になってしまい、白いフェンスで囲まれている。眺望もいいし、アクセスも悪くないのに、六甲山中にはこの種の廃墟が少なくない。星野リゾートあたりが進出しても不思議はないんだけどねぇ…。



日本最古のゴルフ場、神戸ゴルフ倶楽部のなかを通る六甲縦走路。登山道とゴルフ場が隣接している例は数多いけれど、ここではゴルフ場のど真ん中を登山道が走っているため、安全のため歩道は鉄網で守られている。



日陰には少し雪も残っていたので、このあたりで下山開始。太陽に向かっていくように六甲ケーブルの山上駅へと続く林道を下っていく。



山上駅のすぐ西側にある登山道で油コブシへ。かつて油商人が険しい道のため油をよくこぼしたと言われる道だけれど、整備が進んだせいか、今では比較的歩きやすい道になっているように思う。



寒天山道から渦森台に戻ることも考えたけれど、さほど疲れもないので、ケーブルに沿ってケーブル下駅まで歩くことにする。



途中2度、「きつい道」と「ゆるい道」の分岐がある。なんとも挑発的な選択肢の提示だけれど、下りの場合は「ゆるい道」に限る。険しい下りは苦手だ。



油コブシとは道であると同時に、山の名前でもある。三角点はあるけれど、さほど山頂感のない油コブシという山が登山道の途中にあるけれど、つい見逃して通過しがちだ。



神戸の町を見渡しながら、ゆっくりと六甲ケーブル下駅へと下りて行く。



体調も良かったので、六甲ケーブル下からバスに乗らず、阪急六甲駅まで歩く。歩行距離は10.4㎞、獲得標高652m、所要時間は4時間48分。