高尾山(東京都)

 2023年1月3日 ①


正月休みの3日間を利用して甲州街道を歩くつもりだったけれど、この季節に標高1000m超の笹子峠はちょっと危なそう…。ということで予定を変更して初日は甲州街道歩きの忘れ物を取りに行くノリで世界一登山者数が多いとまで言われる高尾山に登ってみることにする。



始発を乗り継いで高尾山口駅に到着したのは10時半。人気のハイキングコースであるうえに、中腹にある薬王院に初詣で訪れる人も多い。覚悟はしていたけれど大混雑だ。電車から吐き出された人の多さに気圧されて、多くの人が山に向かうのを待ってから出発する。



見たところ7~8割の人は、ケーブルカーやリフトの乗り場(写真左)へと向かう。残る2~3割が徒歩組だが、若者のグループもいれば、シニア夫婦もいるが、目立つのは小さな子供連れだ。ベビーカーを押している人も散見されるけれど、坂道で危なくないのだろうか。



この高尾山の登山口が東海自然歩道の東の起点になっている。箕面の駅前に西の起点を示す石柱が立っていたはずだ。



高尾山にはいくつもの登山道が整備されているようだけれど、やはり最初は王道ともいえそうな1号路を進むべきだろう。路面はしっかりと舗装されているけれど、勾配は結構きつい。



九十九折になってはいるけれど、厳しい坂が延々と続く。子供でも登る山だと舐めていたけれど、息を整えるため、つい立ち止まってしまう。



大正時代の奉納石柱が並んでいて苗木壱萬本と刻まれている。古い奉納石柱にある金壱百圓といった現在の物価とはかけ離れた金額に当惑させられるものだけれど、苗木の本数なら現在の価値観で何となく寄進額の大きさが掴めるような気がする。



急な坂道を40分ほど登り続けて、ようやくケーブルカーの降り場までやってきた。ケーブルカーなら所要時間6分で料金は490円…。長い行列に並んででもケーブルカーに乗る方が間違いなく合理的と考える人が多数派であることには納得せざるをえない。



リフトやケーブルカーの利用客と合流して道は再び大混雑。名所と言われる蛸杉の前は人が多すぎて説明板が読めず写真だけ撮ってそのまま進む。後で知ったことだけれど、この杉の根っこが蛸のように曲がっているらしい。まるで的外れな写真を撮っていたようだ。



行基による開基と伝わる薬王院の浄心門をくぐる。行基って、こんなトコまで出張っていたのかぁ…。まさに超人だ。人が多すぎてカメラのアングルはどうしても上方向ばかりが多くなる。



「三密の門」なるものが目に飛び込んできた。どうやら三密とは真言宗の教えにある言葉、身密・口密・意密(正しい行い・正しい言葉・正しい心)のことなんだだそうで、もちろんコロナ禍以降誕生した三密とはまるで意味が異なる。



おでん、天狗焼、とろろ蕎麦、味噌団子などなど、数々の名物がある高尾山だけれど、どの店もあまりに長い行列で並ぶ気にもなれない。それに行楽地、しかも山上なんだから仕方無いとは思うけれど、ちょっと高いなぁ…。



薬王院の参道の杉並木は見事。樹齢は700年ほどだという。そして驚くことに、ここまでの道は都道189号なんだそうだ。男坂の108段の階段も含めて都道らしい。



今でも杉苗の奉納が盛んに行われているようだ。参道には奉納者の名前を記した木札がずらりと並んでいる。



都道とはいえ、車両は通行できない歩行者専用道だけれど、例外はある。珍しい緑色のパトカーが停車している。警視庁山岳救助隊だ。最近テレビで見たばかりだけれど、高尾山では事故・遭難・体調不良などで驚くべき数の救助要請があるらしい。



薬王院の仁王門。とにかく人が多くて、門全体を写真に撮るためのシャッターチャンスは稀にしか訪れない。



仁王門をくぐると、さらに大混雑。本社へと登るためには長い行列に並ばなければならない。どこに進んだらいいのか、判らない…。



どうせ並ぶなら、ということで団子屋に並んでしまう。味噌をタップリつけた団子を炙ったものだ。一串400円。並んで食べるほどの美味さとは思えなかったけど、縁起物だと割り切るべきなのだろう。



さらに本社では何かの行事が執り行われるらしく、美しい法衣を纏った多くの僧侶が石段を静々と登っていく。その間、行列を作って並んでいる一般参拝客はさらに待たなければならない。



本社に参拝することは諦めて3号路で高尾山の山頂に向かう。どうやら薬王院から先に進む人はかなり少ないようだ。道は舗装されていない自然道だけれど、平坦なのでむしろ歩きやすい。



多くの人は薬王院まで、と思って登ってきたけれど、それは大間違い。標高599mの山頂には何百人とも思えるほどの人がいるではないか。いまだかつて、これほど混雑した山頂は経験したことがない。



あまりの人の多さに辟易として、さっさと下山しようとしかけたところで、山頂広場の端っこに黒山の人だかりがあり、その向こうに冠雪した美しい富士山が聳えていることに気付く。これこそ高尾山の最大の見どころだ。危うく見逃すところだった。



下山は、遠回りで一番ハードだと言われる稲荷山コースへ。最も人が少なそうだと期待していたのだけれど、登る人も下る人も多い。急坂が続くけれど、序盤は延々と木道が整備されているので安心して歩ける。



中盤以降は杉林のなかを抜ける自然道。多くの杉苗(の名目で現金?)の奉納があるはずだけれど、杉の木は枝打ちもされていない。材木にするつもりがないのなら、枝打ちなど不要なのかもしれない。



距離8.3㎞、獲得標高687m、所要時間は3時間19分。これがミシュラン3つ星というやつか?大混雑の大衆食堂で定食をかきこんだような気分だ。思ったより疲れたけれど、今日はもう一つ登っておきたい山があるのだ。土産物屋にも立ち寄らず急いで八王子に向かう。