ピッツバーグ・インクライン探訪

2018年11月5日(月)


ピッツバーグでの仕事を終えた後の空き時間、以前から気になっていたインクラインを探索に出掛ける。南北戦争を機に飛躍的な成長を重ねた鉄鋼業に従事する工員の住宅用地として開発されたワシントンヒルズとダウンタウンを繋ぐ通勤用として開発されたというが、今は半ば観光名所となっている。(写真は一昨年の夏のものを再掲)


2本あるインクラインのうち、西側にあるモノンガヒラ・インクラインに乗ることにする。操業開始から130年以上も経つというが、駅舎も当時とあまり変わっていないように思える。



駅舎では無愛想な係員がひとり座っていて、乗るなら早く金を入れろ、と言うばかり。EXACT CASHが偶々あったから良かったけど、お釣りください、なんて言えるような雰囲気ではなかった・・・。



レトロな客車に感動してしまう。ベンチや窓枠は木製、天井の装飾や灯りもお洒落だ。他の客はおらず、独り占めである。



斜度30度を超える急坂を時速10kmくらいで登っていく。なかなかの迫力だ。わずか100m余りの高低差というが、ワクワク感、ドキドキ感が半端ない。



 下を振り返れば、南東(写真右)からのモノンガヒラ川と、北東(写真右上)からのアレゲニー川が合流してオハイオ川となるところが良く見える。この後、合流を重ねてミッシシッピ川になり、メキシコ湾流入するまで、2~3000kmはあるはずだ。



山上駅にはわずか1分ほど(たぶん)で到着。山上の駅舎の横には展望台があり、ピッツバーグのダウンタウンを見渡すことができる。



このワシントンヒルズは河岸段丘らしい。日本のものとは規模が違う・・・。ここに来ればピッツバーグの地形や都市概観がすべて判ったような気になる。この町がゴールデントライアングルと呼ばれるのもよくわかる。



下の駅舎が赤褐色であるのに対して、山上の駅舎は青い空にマッチした薄緑色だ。



駅舎の下を覗き込むと、大きな駆動輪が見える。当然電気で駆動しているのだが、昔は蒸気機関でインクラインを動かしていたらしい。



以前は観光地には必ずといって見られた1セントを押しつぶして記念メダルを作るペニープレスと呼ばれる機械がある。古い機械なんだけど根強い人気があるようだ。1セントを潰すのに別途50セントの料金が必要というのがちょっと引っ掛かる・・・。



ワシントンヒルズの上をテクテクと歩いていく。山の上とは思えない平坦な道だ。



歩道には落ち葉がうず高く積もっている。もう秋も終盤。間もなく厳しい冬がやってくるはずだ。



ワシントンヒルズに繋がるもう1本のインクライン、デュケイン・インクラインが道を跨ぐように設置されている。支柱もなければ保護壁もなく、なんとも弱弱しい構造だが、これで130年以上やってきているのだから大丈夫なんだろう。斜度は40度くらいはあるように思える。



道からインクラインの上に飛び乗れるようなくらいにガードされていない・・・。そんな奴がいないかどうかは上の駅舎から見張っているということなんだろう。



中間選挙が近い。トランプ大統領への批判的な落書きが見られる。かつて米国経済を牽引した北東部の工業地帯は錆びついたラストベルトと呼ばれ、これらの地帯の復興が選挙の争点のひとつになっている。もっともピッツバーグはデトロイトやクリーブランドと比べると随分生まれ変わっているようにも感じる。



モノンガヒラ川の南岸には何本もの鉄道が通っている。かつては東海岸からの貨物がここで船に乗せ換えられてミシシッピ川の水運を利用して中西部、南西部の町々に運ばれたと聞くが、何十両(100両以上かも)を連結した長~い貨物列車が頻繁に通過していく。



ワシントンヒルズを下山し、モノンガヒラ川を渡ってダウンタウンのホテルに戻る。なぜか、この角度から見るとワシントンヒルズがさほど急峻な高地には見えない。



ピッツバーグ市庁舎。早くも巨大なクリスマスの飾りつけが出来上がっている。アメリカはいち早く政教分離を実現したと言われる国だけど、大統領就任で聖書に手を置いての誓約とか、クリスマスツリーへの公金の支出とか、どう理解すればよいのか判らない・・・。