角尾山(西脇市)

 2021年6月2日


西脇市発行のマップを参考に、角尾山に出掛ける。標高343mの低山だけれど、室町幕府の初代将軍、足利尊氏の両腕ともいえる足利直義と高師直の対立に端を発した「観応の擾乱」で、直義方が堅守して攻め寄せる尊氏方を撥ね返した光明寺合戦の舞台だけに楽しみだ。



五峰山の山麓に建つ光明寺からスタート。角尾山は西脇市だけれど、登山口になる光明寺は加東市になる。本堂へと続く道はかなりキツイ。観応の擾乱では尊氏の弟、足利直義方の石堂頼房が拠ったところで、かつては19もの僧坊を持つ大寺院だったという。



おっ、物見台跡と書かれた古い案内板がある。さては直義方が尊氏や師直の軍を見張っていたところに違いないと思って、わざわざ寄り道したけれど、何の案内板もなく、樹木に遮られて眺望もイマイチの高台があっただけだった。



本堂裏に光明寺合戦本陣跡の碑がある。この合戦の後、尊氏、直義、直冬、高師直を始めとする幕府幹部、さらには南朝や北条氏まで絡んで、「昨日の敵は今日の友」のような節操のない合従連衡を繰り返す。室町幕府がその後120年続いたのが不思議でならない。



本堂から奥へ、まずは扇山を目指す。光明寺の山号のままに五峰山とも呼ばれている山だ。YAMAP赤ルートではないけれど、安心して歩いていける道だ。



五峰山の山頂にやってきた。加東市からだけでなく、加西市から登ってくるルートもあって、地元の方が日々登ってこられる山のようだ。頂上にはイ草を貼ったような、ちょっといいベンチがある。



扇山の山頂付近には何本もの道が錯綜している。角尾山に向かう途中で道が心細くなり、YAMAP赤線コースから外れていることに気付いたけれど、大まかな方向に違いはないのでそのまま赤テープに誘導されて進む。



赤テープのおかげで角尾山に向かうメイン登山道に戻ってくることができた。この先には足利尊氏が陣取った引尾山もある。きっと光明寺合戦の際には、この尾根筋で戦闘が繰り広げられたに違いない。



道の脇には「除草剤使用」と書かれた杭が立っている。このあたりの野草は食べない方がいいということだろうか。あらためて見ると道には草が全くなく歩きやすい。杭の裏側には光明寺の文字がある。この辺りずっと光明寺の所有地になるようだ。



前方にピークが見えてきた。角尾山なのか?と思ったけれどいくら何でも近すぎる。この後、角尾山までいくつもの名も無いピークを越えていかねばならないということをこの時点では知らない。



遠目から岩っぽいのが多いなぁとは感じていたけれど、かなりしっかりとした岩稜地帯が現れた。グリップも効いて、危ないとは感じないけれど、日射しを遮る木々が無くなって汗が一気に噴き出す。



宝塚ロックガーデンや小野アルプスの紅山を彷彿とさせるような立派な一枚岩の斜面が現れた。のんびりとした山歩きのつもりだったけれど、結構歯ごたえがあるぞ。



岩稜を登り切って振り返ると登ってきた尾根道の向こうに播磨中央公園が見渡せる。それにしても暑い。水分はたっぷり(2リットル)持ってきているので、存分に水分補給する。



その後もいくつものピークを越えていく。どのピークも岩場になっているようだ。長い年月を掛けて岩を残して土は崩れてしまったのだから、ピークは岩になっていて当然といえば当然なのかもしれない。



ピークなんだから、登りもあれば下りもある。かなり急勾配の坂もあって、ロープに助けられながら、へっぴり腰になって進んでいく。



さすがに光明寺の所有地外になったのだろうか。いつの間にか除草剤の杭も無くなり、道も草で覆われるようなところが出てきた。



引尾山への分岐点。足利尊氏が陣を敷いたところだけに寄り道したかったのだけれど、「この先通行止め」とある。八王子池の手前にある引尾山までなら大丈夫とも解釈できるけれど、登山道を塞ぐように通行止標識が設置されているだけに、自重するのが賢明そうだ。



そろそろいい加減に山頂に到着してくれ~、と思いながら岩場を進んでいく。暑さのせいもあって、思った以上に疲れている。引尾山に立ち寄らなかったのは、体力面でも賢明だったかもしれない。



登り始めてちょうど2時間でようやく角尾山(343m)の山頂に到着。岩がゴツゴツの山頂からは360度パノラマが楽しめるうえに、とてもいい風が吹く。



麓の集落が手に取るように見える。麓からは山頂で休憩しているハイカーの姿が見えるのかもしれないけれど、構わず汗でグッショリとしたシャツを脱ぐ。



30分ほども休憩した後、下山する。同じルートを往復するピストン登山は何だか面白みが半減するような気がしてならないのだけれど、実際には登りと下りでは見える景色が違う。往路では苦労して下った急勾配の坂を、復路では苦労して攀じ登っていく。



登りではそれほど苦労しなかった岩場も、下りでは油断できない。足場をよく確認しながら得意のへっぴり腰で下っていく。



扇山には立ち寄ることなく、メイン登山道でそのまま光明寺まで下りて行く。ピストン登山も悪くないものだ。



歩行軌跡。距離はたったの6.7㎞だというのに、暑さのせいもあってか結構疲れてしまった。光明寺境内を含めて、誰ひとりとも出会わなかった。



スタート地点が約150mで、山頂が343mだから、たった190mしか登っていないはずなのに、累積標高は524mもある。小さいアップダウンが数多く続く道だった。