2021年6月5日
大阪・京都・兵庫の三府県境にある舩谷山と深山を目指して、ささやまの森公園にやってきた。一般的にはるり渓(京都府)から登る山のようだけれど、丹波篠山市側からも整備された登山道があるようだ。
ささやまの森公園は自然学習や里山体験の活動拠点として兵庫県が開設したもので、森林浴を兼ねた生物観察を目的にやってくる人が主流のようだ。子供たちの姿も多い。今日出会えるかもしれない「生きもの情報」が掲げられた事務所に登山届を提出して、さあ出発だ。
しばらくは、渓流に沿ってよく整備された林道を進んでいく。大きなカメラを抱えて我慢強く野鳥の姿を狙っている人が多い。カメラの前を通過する際には、鳥が逃げるような音を立てないよう、フレームインしないように、とても気を遣う。
道はだんだんと険しいものになってくる。深山古道という名前のイメージどおり、鬱蒼とした森林のなかの苔むした沢沿いの静かな道だ。
「深山→」と書かれただけの木製の素朴な案内標識が立っている。道は益々険しくなってくるけれど、適所に設置された標識と赤テープのおかげで迷うこともなく登っていける。
小さな滝のようになった沢に加えて、何本かの倒木が道を塞ぐように横たわっているところが現れるが注意して進めば問題ない。ここが深山古道唯一のちょっとした危険個所。もっとも危険個所が無いから、楽に登れるという訳ではない…。
扇岩という巨石を右に迂回して進む。登り始めて50分ほど経つけれど、やはりバードウォッチャーがカメラを構えておられる。少しお話をさせていただくと、いい写真が撮れないのでどんどん登ってきたとのこと。鳥を撮影するというのは体力と忍耐力が勝負のようだ。
さらに登っていくと、森林を抜けだして広々としたところに出てきた。今まで選択肢のない狭い道を歩いていたのが、急にどこでも歩けるようなところに出てきて、逆に進むべき方向が判らなくなってしまう。
適当に斜面を登っていくと、幸い庫坂峠の標識があるところに出てきた。兵庫・大阪の県境となる舩谷山の西尾根まで登ってきたので、この後は歩きやすい稜線歩きになるはずだ。
庫坂峠から舩谷山へ向かう稜線上の比較的日当たりの良い雑木林で、真っ黒なキノコを2つ発見。まるでバーベキューで焦がしたような炭色だ。直径数センチの椎茸に似たフォルムの黒キノコは傘も分厚く、軸もしっかりしている。不気味なので触ることもできなかった…。
登山口から約80分で標高730mの舩谷山に到着。「船」ではなくて「舩」だ。読みも意味も同じはずだけど…。大阪・京都・兵庫の三府県の境界の上に立ったことはチョット嬉しいけれど、残念ながら眺望もベンチも無い。
舩谷山から深山までもアップダウンの少ない快適な尾根道。幹曲りの木が多い雑木林のなかを進んでいく。
登山口から舩谷山を経て1時間20分ほど歩き続けたところで、ススキ野原の向こうに深山の頂上らしきものが見えてきたけど、なんだ、アレは?
深山の頂上は神社になっている。こんもりとした頂の上にある岩は御神体なのだろうか。社務所も見当たらないし、岩の周囲は立入禁止の柵が張り巡らされている。何だか最近造られたばかりに見えるし、岩も元からあったものではないように感じられる。
神社にさえ目を瞑れば、完全な360度パノラマ(わずかに降水レーダー塔だけが視界を遮っているが)を満喫できる。低山では滅多にない展望ポイントだ。空はどんよりとしているけれど、京都、大阪、兵庫の山々が見渡せる。
一旦、舩谷山まで戻り、東尾根から下山する。西尾根が大阪・兵庫の県境であるのに対して、東尾根は京都・兵庫の県境になる。登ってきた深山古道と違って案内標識はちょっと草臥れ感が強い。それに登ってくるときには随分心強かった赤テープが見られない。
以前は階段があったのだろう。横材の木材が朽ち果てているのに、黒い樹脂製の杭はしっかりと残っている。そのせいで進むべき道がはっきりと見て取れる。急坂だけに補修てほしいけれど、横材に自然になじむ木材を使うか耐久性のある樹脂を使うか悩ましそうだ。
往路の谷道では20~30人ほどは見かけたカメラを抱えたバードウォッチャーを、帰路の尾根道では一人も見かけない。水場が多い谷筋の方が鳥たちが好んで棲息しているのかもしれない。
時間的にも体力的にも余裕があるので、寄り道して満塔山(案内標識は万燈山になっている)へと登っていくことにする。登っていくはずなのに、長い下り坂から始まる…。
とても倒木が多い。そして急斜面が続く。オマケのつもりの満燈山への登りが一番キツかった…。
満燈山(561m)。判ってはいたけれど何もないところ。YAMAPで登頂した山の数がカウントされるため、最近ピークハントにちょっと拘るようになった。六甲山でも金剛山でも山頂行かないよハイカーが多いのと同様、以前はピークへの拘りなんて無かったんだけれど…。
満燈山から、ささやまの森公園に直接つながる道があるのだけれど、事務所で貰ったマップには「わかりにくいので通るな」とある。他の方のYAMAP日記を読んでも苦労して下山しているようだ。来た道を戻るけれど、掴まる木も少ない下りの急坂は決して楽な道ではない。
往復40分ほどかけての寄り道を終えて元の道に戻り、蛇岩からの展望を楽しむ。松の木の向こうに見えるのは、おそらく舩谷山だ。
坂をどんどんと下って、無事登山口がある、ささやまの森公園に帰ってきた。所要時間はちょうど4時間。木彫りの動物たちが出迎えてくれた。
本日の歩行軌跡と標高グラフ。距離は6.8㎞、累積標高は673m。YAMAPでは丹波篠山市と紹介されていたけれど、よく地図を見れば、大阪・京都の府境だった。コロナで兵庫県内の山歩きだけに留めてきたのだけれど、ちょっとだけ越境してしまった…。