2022年1月29日
体が重ダルイけれど、とりあえずガベノ城まで登り、そこから先は体調と相談しながら歩こう。臨機応変に行先変更ができるのが登山路が多い六甲山系のいいところだ。苦楽園バス停から30分ほど歩いて高級住宅街のなかに隠れているような剣谷登山口までやってきた。
苦楽園バス停から登山口までが結構な登り坂だったため、登山口に着いた時には既に疲れを感じているような始末。およそ1年振りとなる草で覆われそうな細い道を登っていくが、早くも足取りは重い。
ガベノ城の山頂が近くなってくると、謎の石垣が現れる。どうやら昔の治山工事によるものらしいけれど、素人目には城の石垣に見える。これがあるからガベノ城なんて山名になったようだ。でも「城」の由来は判っても、「ガベノ」って何なのかは不明だという。
ガベノ城山頂(483m)に到着。正面に甲山や北山池が見えるくらいで、特に何もない小さな山頂だ。あまり立ち寄る価値のない山頂だと判ってはいるんだけれど、なぜかガベノ城という名前に惹きつけられて何度も登ってきてしまう。
ゴロゴロ岳はスルーしてガベノ城から奥池までやってきた。さすがにバスで帰るほどには疲れていないので、芦屋の前山公園方面に下山していこうかと考える。
不思議なもので、平坦なところにやってくると元気になってくる。小綺麗なハイカー用トイレを使わせていただき、自販機で暖かいコーヒーを飲んでのんびり休憩していると、思ってもみなかった考えが頭に浮かんできた。東おたふく山まで登ってみよう。
奥池の住宅街(別荘街?)を歩きながら、芦屋に下山することや、標高の低い荒地山に向かうこともチラと頭をかすめたけれど、なぜか疲れが無くなり、敢然と東おたふく山に向かっていく。ある程度疲れてくると、逆に疲労を自覚する神経が麻痺してくるのかもしれない。
この川を渡ると東おたふく山の登山道。もはや後戻りはできない。こんなつもりで家を出た訳ではなかったのに…。
この道で六甲山に登る人も多いようだ。六甲山(931m)の半分に相当する標高460mほどの東おたふく山登山口バス停からスタートすれば、有馬から登るより楽なのかもしれない。東おたふく山への登山道には、六甲最高峰を案内する標識が目立つ。
頂上に近づくにつれてV字型に抉れた道になってくる。しかも狭いしザレている。1組のハイカーとすれ違うが、登り優先なんてルールなんてもともと知らないのか、速く歩ける下りが優先だと勘違いしているのか、挨拶もなく、しかも石を蹴飛ばしながら下ってくる。
東おたふく山(697m)。平べったい山頂はススキや笹で覆われている。確かにお多福(オカメ)の顔は平べったいけれど、あまりいい山名には思えない。なんだか人の顔を踏んづけているような気がするのだ。
山頂部では蔓延っている笹を根伐りして、元のススキ原に戻す取り組みが行われている。その向こう、写真右に見える小さな電波塔があるのが六甲山。左の大きな電波塔があるのが西おたふく山。その間には中おたふく山というのもあるようだ。
東おたふく山から、六甲山への主要登山道である魚屋道へと下りてきた。魚屋道では数少ないベンチが並んでいる雨ヶ峠だ。週末で、まだ2時半だというのに人の姿が見えない。なんだか不気味だ。
人がいないせいで鳥の囀りがよく聞き取れる。お腹が黄色いヤマガラを試しに撮影したら、滅多にないことに、うまく撮れた。ところが、こんな滅多にないことが起こったせいか、この写真を最後にスマホのカメラの調子が急に悪くなってしまった。
さすがに雨ヶ峠から六甲山頂へと向かう気はさらさら起きず、魚屋道を芦屋ロックガーデンに向かって下っていくと、先日歩いた黒五谷への分岐が現れた。さらに寄り道にはなるけれど、先日は北黒五山経由のため半分しか歩けていなかった道を歩き通してみよう。
住吉川と打越峠を繋ぐ道に出てきた。黒五谷はさらに西へ続くけれど相当な難路らしく、そもそも道らしきものが見当たらない。路上の石に顔が描かれている。髪の毛などすぐ吹き飛びそうなものだから、ごく最近誰かが作ったものと思われるけれど周囲に人の気配はない。
八幡谷の超人Fさんが製作した打越峠のベンチで休憩。朝から何も食べていなかったので、ここで非常食として持ってきたゼリーと羊羹を食べる。そもそもこんなに歩くつもりではなかったので、オニギリひとつさえ持って来なかった…。さすがに疲れてきた。
七兵衛山(462m)にも少し立ち寄る。いつの間にやら16時になっている。眼下の街並みにも夕闇が迫っているように見える。さすがにそろそろ下山しなければ…。
が、七兵衛山の東にある謎の道の探検を初めてしまう。登山地図には一切表示されていないのだけれど、明らかにFさんの作と思われる手摺りが延々と続く道があるのだ。一体どこに繋がるのか…。しかし5分ほど登っていった先にあったのは電力会社の鉄塔だった。
標識には「八幡谷森林管理歩道」とあるけれど、ハブ谷と呼ばれることが多い道を使って岡本へと下りて行く。あまりメジャーな道ではないけれど、この道こそがFさんの作品が最も高密度に並んでいるところだ。いくらなんでもベンチ多すぎ、という意見ももっともだ。
予定を大幅に上回る山歩きになってしまったけれど、阪急岡本駅には17時半頃に無事到着。距離14.3㎞、獲得標高は上り1065m、下り1175m。
標高グラフ。ひとつ目のピーク(ガベノ城)で帰るつもりが、そこから更に高い山へと向かってしまうことになるとは思わなかった。歩いているうちはあまり感じなかった疲労が、電車に乗った途端に体中から噴き出してきた。