西神戸低山縦走

 2022年3月16日


神戸電鉄の藍那(あいな)駅にやってきた。山歩きや里歩きのスタート地点として時々利用している無人駅には、いつの間にか代用駅員の人形が設置されていた。今日は藍那駅から南へ、西神ニュータウンにかけて点在する未踏の低山を歩きまわりたい。



藍那駅から舗装路とはいえ、かなりの急坂が続く。このあたりは源義経が平家の本拠地、福原京(神戸)に搦手から攻め込んだ際に進軍した道だと伝えられている。



少し寄り道して、あいな里山公園を覗き見する。USJ6個分に相当する広大な公園では、農業体験や自然観察ができるらしいが、そこそこの入場料が要る。短時間の見学では勿体なくて未だ入場したことがない。申し訳ないけれど、今日も外周道路からの内部を窺うだけだ。



義経が一旦軍を止め、どの道に進むかを相談したと呼ばれることから「相談が辻」と呼ばれる三叉路にやってきた。大切にすべき場所だと思うのだけれど、説明板どころか標識さえない。どうしてだろうか。義経が進んだと伝わる左ではなく、今日は右の道を進んで行く。



徳川道を進む。外国人居留地の神戸を迂回させるため幕府が整備した西国街道バイパスだ。今では神戸市の「太陽と緑の道」にも指定されている快適ハイキング道だ。ただ両側に延々とフェンスがあるのが気にいらない。フェンスって要るのかぁ。息苦しいとさえ感じるぞ。



ようやくフェンスが無くなったかと思えば、両側が土の壁になった溝のような道だ。モトクロスやマウンテンバイクの轍が多く、路面が抉れたところも多々見られる。



ハイキング道の脇にある松茸山(251m)のピークを確認しにいく。ハイキング道から直線距離で20mほどだけれど、道らしいものも見えず藪を掻き分けながら坂を登っていく。山頂碑は無いけれど、たぶんこの辺りが山頂のはずだ。でも松茸なんて採れそうには見えない。



阪神高速北神戸線を渡る。もう建設後30年ほどは経つはずだけれど、上から見下ろすと随分と綺麗な高速道路に感じる。



阪神高速を過ぎ、どこかで道を間違ったようで、徳川道を外れてしまった。でも下山したところにあった「白川の石抱きカヤ」は一度見てみたかった有名な古木。道間違いもたまには結果オーライだ。



阪神高速神戸山手線の橋脚を潜って、西神ニュータウンへと向かう。遠くに高層住宅群が見える。次の目標はニュータウンの真ん中にある落合山だ。ここからニュータウンを進んで3㎞ほど先にあるはずだ。



ニュータウンとはいえ、元は山だったところなのでアップダウンの多い道は足腰に堪える。ようやく落合山があるはずの松尾公園にやってきたけれど、山らしきものが見当たらない…。



こりゃあ天保山みたいな山かな?と思ったけれど、公園の奥へと入っていくと計100段くらいの緩やかな階段が続いている。



どうやら階段を登り切ったところが頂上らしい。登った後はすぐに下り階段が現れるという公園道路の通過点でしかなく山頂碑もない。ガッカリ登山だけれど、落合山(168m)の登頂を果たす。



落合山に続いては、神戸地下鉄(このあたりでは高架路線だけれど)を南に越えて、ボンボン山というふざけたような名前を持つ山を目指す。再び2㎞以上のニュータウン歩きが続く。



海からは随分と離れているというのにテトラポットをいくつも置いている公園の向こうにボンボン山と思しき山影が見えてきた。落合山と違って、ちょっとは山っぽいぞ。



須磨区、西区、垂水区の3区の境界線が複雑に入り組む友が台公園からそこそこしっかりした登山道が続く。とはいえ、整備された歩きやすい道が続き、登山口から山頂までは5分そこそこ。付近には毎日登山をしている方も多いようだ。



標高145mのボンボン山。北摂にあるポンポン(PONPON)山と違って、こちらはBONBON山だが、このふざけたような山名の由来は山頂に来ても判らないままだ。山頂からは須磨の海や山が一望できる。六甲山系の西端の尾根や旗振山の無線塔もよく確認できる。



大した標高もあるいていないはず(どちらかといえば下りが多いはず)なのに、結構疲れてきた。最後の目的地は西に3㎞歩いたところにある高塚山だ。山麓から坂道には住宅街が延々と続く。



結局頂上付近まで住宅街は続いていた。これって登山といえるのだろうか。でも結構キツイ道だったことは間違いない。遠く淡路島や明石海峡大橋まで見渡すことができる。明石海峡大橋に繋がる神戸淡路鳴門自動車道は高塚山をトンネルで貫いている。



高塚山山頂(185m)には高塚龍神社がある。縁結び、安産、病気、商売、事業、進学等にご神徳があるとの説明があるけれど、竜神というのは本来、水の神様じゃないのかなぁ…。まあ、神様というのはオールマイティなのかもしれないけれど…。



高塚山から北へ向かう尾根道は、なんと徳川道だった。白河で別れたはずの徳川道に再会できたことも嬉しいし、徳川道の立派な石標があるのもまた嬉しい。



東から住宅街を抜けて高塚山に登った道とは異なり、北へと続く道はとても良く整備された快適ハイキングコース。頂上には散策マップも置かれているし、道中の案内標識も過不足ない。地域の方々が大切に保全しておられることがよく判る。有難いことだ。



いい加減疲れたけれど、さらに遠回りして、今が満開と聞いていた総合運動公園の菜の花を見に行く。園内のコスモスの丘は菜の花の黄色で一面が染めつくされている。菜の花独特の香りに包まれ、春の到来を実感する。



そうこうしているうちに、あたりは徐々に暗くなってきた。菜の花畑の上にはほぼ丸いお月様が顔を覗かせている。与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」の情景そのままだ。



4つの山頂をクリアし、歩行距離は18.1km。低山ばかりなので大した標高は稼いでいないと思われたけれど、それでも700mあった。里歩きではなく、山歩きにラベリングしておいても良かろう。所要時間は6時間半。