高取山(宍粟市)

 2022年3月28日


広域な市域の大半が山岳地帯が占める宍粟市では登山にお勧めの山を50選定し、市のHPで詳しい紹介をしている。宍粟50名山にはアクセスが悪かったりレベルの高い山も多く、これまで登頂したのは未だ7山でしかない。今日はそのなかでも登りやすそうな高取山を目指す。



旧山崎町の中心部にも近い揖保川岸にある「觱篥」神社に登山口がある。雅楽器の篳篥(ひちりき)の同音異字らしい。播磨国一宮の伊和神社の遥拝所になっている。僅か10㎞北だというのに、かつては洞門もなく超難路だったようで、神功皇后もここで遥拝したらしい。



觱篥神社の奥から高取山へと登っていく。宍粟市が高取山に付けているキャッチフレーズは「お子様でも楽しく登れる山」…。近くの長水山の「戦国の兵たちが駆けた歴史深い山」などと比較して、何だかショボそうだけれど山頂往復に3時間くらいは掛かるはずだ。



「お子様でも…」とは言うけれど登山口から結構な坂道が続く。もっとも子供たちに追い抜かれることが当たり前になっているポンコツハイカーだけに、お子様の心配をしている場合ではない。気を引き締めて登って行こう。



まずは聖山城跡を目指すが、その手前にあるのが愛宕神社。登りはじめて10分にもならないのに、揖保川が随分と下に見える。



聖山城跡。昨年「西播磨城攻めトレッキングスタンプラリー」で登った長水城や篠ノ丸城に拠った赤松系宇野氏の出城だったらしい。しかし他の播磨の城と同様に、電光石火の如き秀吉軍の進撃により攻め落とされたという。



かつては聖山城の主郭だったと思しき高台には、椅子やテーブルが並べられ、のんびりと眺望を楽しめるようになっている。1580年、秀吉もこの場所から正面に見える篠ノ丸、その右の長水山に籠る宇野氏をいかに攻略するかの構想を練ったに違いない。



聖山城の西側(揖保川側)は急峻な斜面の上にあり、難攻の要害に見える。しかし秀吉軍は東側にある高取山から、容易に聖山城を攻め落としたようだ。



秀吉軍が攻め込んできたと思われる高取山からの尾根道を西へと進んで行く。特段の見どころもない山道だけれど、槍を構えた雑兵や甲冑を着込んだ武者たちが、道の向こうから現れることを想像しながら歩くのはなかなか楽しいものだ。



案内標識が折れて倒れている。高取山への道が「標準コース」と「健脚向けコース」に分かれるポイントだ。この種の分岐点では挑発に乗ることなく、手堅く標準コースを進むことを常としている。



ピンクのリボンは付いているものの、急斜面の上の道が続く。あまり気持ちよく歩ける道ではないけれど、これが標準コースなんだろうか。案内標識が折れ曲がっていたせいで誤まった道を進んでしまったのだろうか。



ちょっと心配になってきたところでYAMAPの道外れアラームが鳴った。先日の白毛山でYAMAPルートが判らなくなってしまったので、設定を変更して道外れの感度を上げたことが早くも奏功したかたちだ。



分岐点に戻って詳しく確認したものの、実は間違っていなかったようだ。YAMAPの赤線は健脚向けコースのみで、標準コースは記載されておらず、道外れと判断されたようだ。あらためて健脚向けコースを進んだけれど、さほどの勾配でもなく誰でも歩けそうな道だった…。



登山口から高取山までのほぼ中間地点にある「深呼吸の広場」。ここにもベンチなどが設置されて展望を楽しめるようになっている。



尾根道に沿って高圧電線が設置されている。今でこそGPSの恩恵で現在地を簡単に知ることができるけれど、かつては山道で最も頼りになる目印は電線と鉄塔だった。



高取山では松茸が採れるようで、秋期の2ケ月は入山禁止になるようだ。確かにアカマツが多く見られる。先日登った松茸山は藪ばかりの山で、松茸が採れそうな山には見えなかったけれど、高取山はいかにも松茸が生育してそうだ。



「お子様でも楽しく登れる」との触れ込みどおり、確かに急坂も難所もないけれど、地味な登りが続き、結構疲れが溜まってくる。春というのに花も見られず、変化のない道が続く。秀吉軍の進軍を想像することにも飽きてきた…。



頂上の手前で、再び「健脚向けルート」と「標準ルート」の分岐が現れた。先の「健脚向けルート」が大した道でもなかったので、珍しく「健脚向けルート」を進む。「お子様でも楽しく登れる」はずだ。



ところが、写真では判りにくいけれど、この健脚向けコースは、かなりの急勾配。やめときゃ良かった…と思いながら、斜面を攀じ登っていく。



休憩を挟みながらゆっくり歩いて1時間40分ほどで高取山(490m)頂上に到着。南側に眺望が開いている。登山口から誰にも出会うことなくここまで登ってきたけれど、頂上にもたくさんのベンチが設置されている。



頂上で休憩した後、来た道を戻っていく。ピストン登山だけれど、目に入る景色は登りと下りではかなり違って見える。木々の向こうには揖保川の上流側が見通せる。



調子良くズンズン歩いてきたところに、突如YAMAPの道外れアラームが鳴る。アレレ?来た道を戻ってきたはずなのに、どこで間違えたんだ? このまま進んでも、どこかに下山できそうに思うけれど、そんな風に考えて何度もひどい目にあったものだ。



間違った地点まで戻ってきた。ベンチの右に進むのが正しい下山道だったところを、誤って左側の道へと進んでしまったけれど、いかにも間違いそうなところだ。経験上、道を間違うのは9割方は下山時だ。



觱篥神社から高取山までのピストン登山。歩行距離は5.7km、獲得標高は590m。所要時間は3時間ほど。最近100m級の山ばかり歩き回っていたせいか、そこそこ疲れた…。