2023年6月19日
韮崎から甲州街道を西に向かう。韮崎市役所には信玄から遡ること14代、源平合戦でも活躍した武田信義の像が立っている。当時の武田家の本拠地はこの韮崎だったことから、韮崎は「武田の里」を称している。
2日続けて予定を下回る距離しか歩けていないだけに今日は頑張りたいところなんだけど、大丈夫かなぁ…。今日も猛暑が予想されている。七里岩トンネルを横目に七里岩の上へと登っていく。
七里岩の上には意外なほどに広い県道が通っている。もともと甲州街道が釜無川の氾濫で通行できない時には七里岩の上の道を歩いていたらしい。今ではさらに岩を開削しているのだろうか。アップダウンも少なく歩きやすい。もっとも日射しはキツイ…。
七里岩の上にある小さな小山のうえに新府城はある。県道から本丸跡に向けて急勾配の石段が設置されているけれど、早くも足腰はクタクタ気味で登っていく気になれない。
階段を避けて、巻き道を進む。本丸に直接向かうのではなく、大手門、三の丸、二の丸を観察しながら登っていく。
大手門跡。韮崎方面を向いている。デカすぎて写真がうまく撮れない…。正面のこんもりとした小山が丸馬出し。人の通路は馬出しの左右に配置されている。その向こうには武田氏得意の三日月堀があったようだ。
二の丸などは草に覆われている。考えてみれば勝頼が築城間もない(というより未完成の)新府城に火を放って退却して以来400年以上、放置されてきたところなのだから当然と言えば当然だ。城郭ファン以外に訪問する人も少ないようだ。
さすがに本丸跡は広く万余の兵が籠ることができる規模を感じさせてくれる。本丸跡には勝頼らの慰霊塔や神社が立つものの、石垣なども見られず、知らなければここが城跡だと気づかない人も多そうだ。
七里岩の断崖の上にあるはずだけど、深い草むらに阻まれて眺望は無い。標高500mを超えるとはいえ釜無川からの比高は150m程度。躑躅ヶ崎館に比べれば防御力は高いのは間違いないけれど、離反する家臣が増えるなかで無理して築城するほどのものだったのだろうか。
本丸跡にある勝頼の霊社。左右には勝頼を支えた重臣の名前が刻まれている。勝頼がこの地にいたのは僅か68日で、結局自ら火をかけて退却した訳だから何だかこの地に霊社があることに違和感も感じてしまう。
城の西側は七里岩の絶壁で守られているのに対して、北側や東側には広い堀があったようだ。今では堀の跡も見られないけれど、堀に突き出して築かれた出構えの跡が残っている。
新府城跡を一巡した後、七里岩の上を北西へと進むと、桃の果樹園が広がっている。高級なものなのだろうか、実のひとつひとつに袋が被せられて大切に育てられている。
中央本線も七里岩の上を通っている。急峻な岩壁の上ではあるけれど、意外と岩の上は平坦な台地になっているようだ。
七里岩の上から釜無川に向かう数少ない急坂のひとつを下っていく。大した山歩きでもないのだけれど、昨日までの疲れの蓄積のせいか、暑さのせいか、体は怠く、足取りも重い。最悪でも台ケ原宿までは歩かなければと思っていたけれど、自信が無くなってきた。
釜無川に沿った道から七里岩を振り返る。岩肌がところどころ露出した急峻な山地で、台地の上に鉄道が走り、桃園が広がっていることなど信じられない。
あまりの暑さに冷たい飲み物を頻繁に購入する。山梨県の幹線道路沿いには数多くの「ハッピードリンクショップ」の看板を掲げた自販機コーナーが見られる。コーナーというより店扱いのようで、ここは「穴山店」だ。今やすっかりハッピードリンクのヘビーユーザーだ。
釜無川。川からの浸食を受け続けてきたせいか、七里岩の絶壁はますます険しい。正午を過ぎてますます暑い。空はすっかり夏空の景色だし、風も吹かない。
七里岩の向こうには八ヶ岳がうっすら見えてきた。8つの山が連なっているけれど、確かに伝承にあるように富士山に殴られて凹んでしまったようにも見えなくもない。
トラックが多数立ち寄っている飲食店を発見。あまりに暑いので躊躇したけれど、人気メニューらしいチャーシューメンを注文。最初スープがひどく塩辛く感じられたけど、やがて塩分が体中に心地よく浸み込んでくる。水分は十分でも塩分不足だったことに気付かされる。
石の坪の畑のなかに「縄文美人の郷」の看板が立っている。このあたりは縄文遺跡が多く発掘されたところらしい。なかにはミス縄文とまで名付けられるような可愛い土偶が見つかっているようだ。
北杜市に入る。山梨県最北端の市で、ここを越えればいよいよ長野県なのだけれど、かなり広大な市で20㎞ほどは歩かなければならない。ながらくこの市がキノコで有名なホクトの本拠だと思っていたのだけれど、まったく関係ないようだ。
歩いても歩いても七里岩は途切れる気配はなく、むしろますます険しさを増しているように感じる。
北杜市の武川で採れる農林48号は生産量が少なく、幻の米とまで呼ばれるほどの美味さだという。街道沿いの農産物直売センターでおにぎりなどが売られている。さらにこの幻の米で作ったサイダーも売られている。ちょっと高かったけど、カルピスのような円やかな味だ。
牧の原までやってきた。この辺りは中央本線と遠く離れて韮崎との間のバスしか交通の便が無い。15時のバスを逃すと、次は17時50分の最終便になる。あと1時間半もあれば最低目標だった台ケ原宿までは行ける距離だけれど、もう歩く気にもならない。
情けないことに今日も目標未達で終了。15時のバスで牧の原から韮崎へと戻る。歩行距離は13.8㎞、所要時間は6時間。明日は多少涼しくなるようだけれど、ますます交通の便の悪いところに突き進むことになる。難しいことになりそうだけど、明日のことは明日考えよう。