六麓荘~ゴロゴロ岳~飯盛山【六甲山系】

 2021年3月31日


芦屋市六麓荘の登山口から、苦楽園尾根を登り、ゴロゴロ岳、飯盛山、観音山へと歩いてみよう。日本屈指の豪邸街だけど、街の南端に日出橋というバス停があるばかりだ。もっとも住民の多くはもとより路線バスなど必要としないのだろう。



そもそも歩いている人も少ない立派なお屋敷街の坂道をハイキング姿で登っていくのは場違いな気さえしてくる。でも普通の住宅街よりも格段に広々とした美しい街並みと満開を迎えた桜を見ながら歩いていると、とても豊かな気持ちになってくる。



数年前は六麓荘登山口を発見するまでに随分な時間が掛かったが、今日はYAMAPのおかげでスンナリ発見できた。2軒のお屋敷の間にある標識もない細い通路が苦楽園尾根へと向かう登山口になるのだ。



お屋敷の間を抜けると、突如風景は一変して山道となる。しばらくは藪に囲まれた平坦な道が続くが、徐々に岩だらけの道になってくる。



どこで間違ったのか道が無くなった。つい先日も平野谷で道なき道に迷い込み、こんな時は戻るのが鉄則だと思い知ったのだけれど、ガベノ城近辺によく見かける古城の石垣(実際には治山のための土留めらしい)を観察するために敢えて藪のなかに突き進む。




石垣を攀じ登り、藪を掻き分けて、苦楽園尾根らしき道にやってきたけど、記憶とは随分と違う。こんなトコだったかなぁ?と思いながらも、YAMAPで大きく道を外れていないことを確かめながら進んでいく。



藪を掻き分けて進む。こんな廃道のようなトコだっただろうか…。



しばらく進むと岩を攀じ登るところが何度も現れた。これこそ間違いなく記憶に残る苦楽園尾根の景色だ。ちょっとホッとする。



立派な山頂碑が立つゴロゴロ岳の頂上で休憩。予想以上の暖かさのためつい水をガブガブ飲んでしまった。



奥池の住宅街との境界にたつフェンスの脇を北に進んでいく。このフェンスは薄汚いハイカーが静謐な住宅街に侵入しないためなのか、あるいはイノシシ対策なのか。



観音山に向かう前に少し遠回りになるけれど飯盛山に立ち寄ることにする。芦屋市のハイキングコースでも紹介されている道で、歩きにくい道ではないけれど、あまりハイカーは通らないようで、道が草や藪で覆われてしまっているところが多い。



道は荒れていても、芦屋市の標識だけは立派なものが立っている。



軽く寄り道のつもりだったのに、そこそこ上り下りもあって、予想以上に歩き甲斐のある道が続く。もっとも歩くことは問題ないんだけれど、手持ちのペットボトルが空っぽになってしまったことが問題だ。



どうやらここが飯盛山の頂上のようだ。標高は556m。ゴロゴロ岳とは10mも違わないのに頂上碑は見当たらず、おそらく落雷で立ち枯れた巨木が立つばかりだ。



相変わらずフェンスで阻まれた急坂をすべるように下山していく。



観音山・鷲林寺に向かうか、奥池に下りるか、の分岐点が現れたが、迷うことなく奥池への道を進む。喉が渇いた。とにかく自販機のあるところまで歩いていくことが必要だ。



森の隙間から奥池貯水池が見えてきた。ここまでずっと進行方向左側にあったフェンスがようやく途切れ、住宅地に入りこむことができる。



奥池を覗き込んでみると、大型の鯉が大量に泳いでいる。無事自販機を発見し、ようやく水分補給。あらためて観音山に向かって登りなおす気など全く失せてしまい、バスで帰宅する。



本日の歩行軌跡。たったの4.6㎞、累積標高は540m。なんとも中途半端な山歩きになってしまったけれど、後日あらためて、水分を十分に携帯して苦楽園尾根~ゴロゴロ岳~観音山~甲山と歩くことにしよう。



世継山~高雄山~城山【六甲山系】

2021年3月30日


これまで近くを通過しつつも登頂したことがない世継山と高雄山の2山の制覇を目指して新神戸駅から出発する。日本で一番大きいのではないかと思っているハイキング案内標識がある新幹線ホームを潜る通路からまずは布引の滝を目指す。



新神戸から布引・市ケ原に向かう。最近は下山にばかり使っていて登りは久しぶりだ。こんなにキツイ階段だったかなぁ、とあらためて思う。3月とは思えない暖かさのため、早くも汗が噴き出す。



布引の滝の先にある展望台では、桜が満開。黄砂の影響だろうか、晴れているはずだけれど、視界は悪く空はどんよりしている。



布引貯水池。市ケ原に向かうハイカーと別れて、ひとり一般車両は通行できない舗装路を経て布引ハーブ園に向かう。新神戸駅周辺には「ハーブ園には車で行けません、徒歩かロープウェイで」と書かれた看板が目につくが、実際のところ徒歩で行く人はごく僅かのはずだ。



布引ハーブ園の入口。イノシシ対策のためにゲートが閉まっているが、右の小扉を手動で開くことがでいる。ゲートのすぐ内側には新神戸からのロープウェイの中間駅が設置されている。



このゲートから入場する人など滅多にいないのだろう。ゲートには誰もおらず、入場料の徴収もされない。よく整備された公園を歩いていくのは何だか悪いことをしているような気分になるが、ゲートからしばらくの間は無料ゾーンになっているはずだ。



ハーブ園の東側のフェンスを開けて、ハイキング道へと入っていく。ハーブ園の敷地の一部になっているようだけれど「この先はハイキングの足ごしらえが必要」と、気軽に入り込まないように注意喚起がなされている。



所詮はハーブ園の附属道路だと完全に舐めてかかっていた。丸太階段が延々と続く険しい道は本格的な登山道ではないか。樹林の向こう側から子供たちの歓声が聞こえるなかで、息つく暇も与えられない急坂のため、腰を下ろしての休憩を余儀なくされる。



完全に息が上がった状態でロープウェイの終着駅があるハーブ園の最奥部に近くに聳える世継山(417m)を目指すが、どうしたことか山頂部はフェンスで囲われている。少なくともハーブ園内からでは世継山の山頂には到達できないようだ。



ハーブ園(無料ゾーン)を少しだけ散策する。初めての訪問になるけれど、人の多さにちょっと驚いてしまう。花は美しいし、様々なグルメも楽しめるようになっている。新神戸から1時間半近くも歩いてきたけれど、ロープウェイなら10分もかからない至便の立地だ。



ハーブ園を北に抜け、市ケ原へと下りていく。右は天狗道へ登っていく道だけれど、左側の市ケ原に向かう道は、なだらかな下り道だ。ハーブ園での想定外のダメージから立ち直るべく、のんびりと歩いていく。



市ケ原。次に目指す高雄山は、生田川の上流西側にあるはずだけれど、その山容は確認できない。トゥエンティクロスと再度公園という人気スポットに挟まれているにも関わらず、立ち寄るハイカーはあまり多くないようだ。



市ケ原東岸の登山口から高雄山に向かうが、噂に違わぬ急坂が続く。落ち葉が多い季節などなら、ひどく滑りやすそうな急斜面だ。登りならともかく、下りにはあまり使いたくない道だ。



急な登りの後には、再び下り、また登り返すということを繰り返す。ひどく疲れるけれど、それ以上に厄介なのは、小さな虫が顔のあたりをブンブン飛び回ることだ。まだ3月というのに、この数日の暖かさのせいか虫が大量に発生しているようだ。



市ケ原から登り始めて40分ほどで高雄山(476m)の頂上に到着。しんどい登りが続いたせいか、もっと長い時間歩いてきたような気がする。残念ながら頂上は樹木に囲まれて眺望はほとんど無い。



高雄山からは蛇が谷方面へと下山。決して呑気な道ではないけれど、市ケ原からの登りと比べれば何倍も歩きやすい道に感じる。



大龍寺を建立したと言われる和気清麻呂が道鏡の刺客に襲われたという蛇が谷。1200年も昔の話だ。その頃はこんな整備された呑気に歩ける道ではなかったはずだ。



大龍寺の門前の桜は、早くも散り初め。一部、葉桜になっているところもある。なんだか一気に春が通り過ぎていくようだ。



大龍寺から二本松を経て新神戸駅方面へと下山していく。ドライブウェイに沿ったアップダウンの少ない快適な道だ。



二本松から久しぶりに滝山城跡に立ち寄っていこう。神戸市のお城ってピンとこない人が多いようだけど、権力闘争が繰り広げられたところだけに、源平、南北朝から戦国時代にかけての山城は数多い。なかでも滝山城は最大級の規模を誇るという。



城山頂上にたつ滝山城跡の碑。赤松円心、三好長慶、松永弾正など、日本史ファンなら誰もが知るビッグネームがこの城を拠点としてきた。神戸市はもっとPRしてもいいと思うんだけどなぁ…。



山頂ばかりではない。何気なく歩いている谷のような道は堀の跡だし、ちょっとひと休みしたくなるような平坦地は廓の跡だ。市街地からこれだけ近くで中世の山城を実感できるところは少ないように思うんだけどねぇ…。



岩がむき出しになった急な坂を新神戸駅に向かって下りていく。急坂の正面にはハーブ園に向かうロープウェイ、その向こうには神戸の高層ビル群が見える。神戸以外でこんな珍妙ともいえる組み合わせの景色はなかなか無いはずだ。



本日の歩行軌跡。そんなにゆっくり歩いたつもりはないのだけれど、予定を1時間もオーバーして5時間40分も掛かってしまった。



世継山も高雄山も予想以上に厳しい登り道だったけど、一番の急坂は城山から新神戸への下り道だったようだ。距離は9.2㎞、累積標高は865m。




高座谷から荒地山【六甲山系】

 2021年3月26日


これまで到底歯が立たないと考えてきた高座谷~キャッスルウォール~荒地山のコースが、芦屋市が発行するハイキングマップに「中級向け」として紹介されていることに気づく。基準が曖昧な「中級」だが、他の中級コースは全て踏破しているだけに何とかなりそうだぞ。



しかし芦屋市提供のマップ(写真左)はごく簡易なもので詳細の道が判らない。キャッスルウォールから岩梯子まで赤い線が繋がっているけれど、山と高原地図(右)やYAMAPには該当部分に道など無く、付近には「!(注意)」や「?(迷いやすい)」の印ばかりがある。



他ハイカーのYAMAPの活動日記を読んでも「迷った」「危険」の文字が散見される。行く手は不安だが、これ以上は望めないほど天気もいいし、体調もいいが、無理は禁物だと自分に言い聞かせながら、満開近い桜に見送られながら芦屋ロックガーデンに向かう。



歩きなれた道を歩いて25分ほどでロックガーデンの茶屋に到着。時刻は既に11時半。これから登っていくハイカーも多いが、早くも下山してくるハイカーも多い。



高座の滝から岩を少し攀じ登っていったところに、「高座谷を経て荒地山へ」と書かれた分岐標識がある。標柱には、芦屋市のハイキングマップにある「高座の滝・荒地山コース」と書かれている。中央稜を進む多数のハイカーと別れて、ひとり高座谷へと入っていく。



岩がゴロゴロと転がっている高座川に沿った道はさほどの悪路でもない。遅い出発のため既に11時半。空腹を感じるけれど、この辺りはイノシシ村と呼ばれるところ。おにぎりなどパクついているところをイノシシに襲われては堪らない。



高座滝から風吹岩に繋がる中央稜と、鷹尾山から岩梯子へと続く馬の背に挟まれた道で、芦屋・西宮の市境になっている。東西の2つの人気登山路とは共に僅か200mしか離れていないが、全くその気配は感じられない。路傍には古い石仏も見られる静かな道が続く。



六甲山系の川沿いの道では当然のことだけれど、砂防ダムの堰堤をいくつも越えていかねばならないのだけれど、その堰堤の数がひどく多いように感じる。岩だらけの山に囲まれているだけに土石流対策も厳重になっているのだろう。



覚悟はしていたけれど、堰堤に左右いずれから登るかなど、道の分岐が多い。堰堤に気を取られて呑気に歩いていくと、通行禁止の標札に行き当たったり、どう見ても難路すぎるだろうと思える道になったりしていて、道を少し戻ってより安全そうな道を探す。



荒地山第二堰堤には、誰が設置したのか、1対の犬の像がある。一見したところでは生きているのでは?とも思えるほど精巧な出来栄えだし、風雪に耐えて立ち続けているところを見ると、何らかの方法で堰堤に固定されているようだ。誰が何のために置いたのだろうか。



さらに堰堤の池には、体長50㎝はあろうかと思われる見事な錦鯉が泳いでいる。なんだか不思議な世界に足を踏み入れてしまったぞ。いや、不思議というより不気味に感じる。



荒地山第二堰堤の南側に登り切ったところが、キャッスルウォール方面と風吹岩方面の分岐点。この先は山と高原地図でもYAMAPでも黒い破線の道(それも途中まで)しか示されていない。立派な芦屋市の標識はあるけれど、ホントにキャッスルウォールに辿り着くのかぁ?



分岐点からしばらく進むと、奥高座の滝方面とキャッスルウォール方面の分岐点が現れたが、どちらの道もかなりの難路に見受けられる。ホントにここを登っていくのかぁ? ホントに中級コースだろうか…。登れなくはないが、先が判らない岩稜を進む気になれない。



それにYAMAPの地図には荒地山第二堰堤の南側ではなく、北側に道があるように描かれている。一旦堰堤を降りて、北側に抜ける道を探すが、見つからない。(青色は歩行軌跡)



結局、意を決して芦屋市の標柱を信じて急坂の岩稜を攀じ登っていく。その先は確かな地図もなく、歩けそうで、戻ることが容易な道を選んで歩いていく。滝の音が聞こえる方向に下りていくと期せずして奥高座の滝が現れた。



さらに、それっぽい方向へと突き進んでいくと、ついにキャッスルウォールに辿り着くことができた。よくまあこんな切り立った壁を攀じ登っていく人がいるものだ。見上げているだけでも首が痛くなってきた。



キャッスルウォールから荒地山への道は、地図には全く記載されていない。キャッスルウォールの左側の急な岩稜を攀じ登っていくと岩梯子方面に行けそうなんだけど、とても無理だ。が、引き返そうと思ったところで、荒地山方面と書かれた小さな標識を発見する。



岩梯子方面ではなく、荒地山へと直接向かう道のようだけど、それで構わない。岩だらけだし、分岐も多い。この近辺では何者かがハイカーを惑わす矢印を付けるということをよく耳にする。特に一度消された形跡がある赤ペンキの矢印は迂闊に信じられない。



高座谷ではほとんど人とは出会わなかったものの、キャッスルウォールからは何人かのハイカーと出会えたので、道を確認しながら進むことができた。普段なら躊躇してしまうような難路も、この道で間違いないと判ったなら元気を出して登っていくことができる。



ランドマークにもなっている荒地山の手前にある黒岩。岩の上に一本の黒松が立っている。ちょっとおっかないけれど、岩の上からの絶景を確認するために登っていく。



おお、芦屋から西宮にかけての景色が緑の稜線の向こうに広がっている。黒岩の上に座り込んでしばらく眺望を堪能する。



さらに進んでいくと幹に「プロペラ」と彫られた木がある。どうやら噂に聞くプロペラ岩に向かう道らしい。矢印に従い少し下りていったけれど、それっぽいものは現れないし、方向も怪しく、道も険しくなってきたので、諦めて戻ることにする。



何度も道に迷い、急坂と岩稜に苦しめながらも、なんとか荒地山山頂に辿り着いた。予想をかなり上回る疲労を感じる。あまり歩きたくない道だけれど、鷹尾山から岩梯子、七右衛門嵓を経て登ってくる方がまだしも楽だったように思える。



芦有道路の芦屋ゲートに向かって下山していく。倒木が多いもののさほどの急坂も難所もなく、安心して歩ける。道の分岐も少ないけれど、登山路の要所には丁寧に巻かれた赤いテープが見られる。景観も気にせず殴り書きされた赤ペンキの矢印よりも遥かに信頼できる。



1時間に1本しかない芦有道路の芦屋ゲートからのバス発車時刻に合わせるべく、のんびりと山を下っていく。芦屋ゲートの直前で芦屋川に出合う。大した流れではないけれど浮石に足を掛けてしまい、ちょっと危なっかしい渡渉になってしまう。



芦屋市のHPでは所要時間3時間、距離7.2㎞と書かれていたけれど、今日の所要時間は4時間20分、距離5.4㎞。道が判らず、結局芦屋市が推薦していたルートとは違う道を歩いたのだけれど、帰宅して地図と睨めっこしても正解ルートは判らないままだ。