高座谷から荒地山【六甲山系】

 2021年3月26日


これまで到底歯が立たないと考えてきた高座谷~キャッスルウォール~荒地山のコースが、芦屋市が発行するハイキングマップに「中級向け」として紹介されていることに気づく。基準が曖昧な「中級」だが、他の中級コースは全て踏破しているだけに何とかなりそうだぞ。



しかし芦屋市提供のマップ(写真左)はごく簡易なもので詳細の道が判らない。キャッスルウォールから岩梯子まで赤い線が繋がっているけれど、山と高原地図(右)やYAMAPには該当部分に道など無く、付近には「!(注意)」や「?(迷いやすい)」の印ばかりがある。



他ハイカーのYAMAPの活動日記を読んでも「迷った」「危険」の文字が散見される。行く手は不安だが、これ以上は望めないほど天気もいいし、体調もいいが、無理は禁物だと自分に言い聞かせながら、満開近い桜に見送られながら芦屋ロックガーデンに向かう。



歩きなれた道を歩いて25分ほどでロックガーデンの茶屋に到着。時刻は既に11時半。これから登っていくハイカーも多いが、早くも下山してくるハイカーも多い。



高座の滝から岩を少し攀じ登っていったところに、「高座谷を経て荒地山へ」と書かれた分岐標識がある。標柱には、芦屋市のハイキングマップにある「高座の滝・荒地山コース」と書かれている。中央稜を進む多数のハイカーと別れて、ひとり高座谷へと入っていく。



岩がゴロゴロと転がっている高座川に沿った道はさほどの悪路でもない。遅い出発のため既に11時半。空腹を感じるけれど、この辺りはイノシシ村と呼ばれるところ。おにぎりなどパクついているところをイノシシに襲われては堪らない。



高座滝から風吹岩に繋がる中央稜と、鷹尾山から岩梯子へと続く馬の背に挟まれた道で、芦屋・西宮の市境になっている。東西の2つの人気登山路とは共に僅か200mしか離れていないが、全くその気配は感じられない。路傍には古い石仏も見られる静かな道が続く。



六甲山系の川沿いの道では当然のことだけれど、砂防ダムの堰堤をいくつも越えていかねばならないのだけれど、その堰堤の数がひどく多いように感じる。岩だらけの山に囲まれているだけに土石流対策も厳重になっているのだろう。



覚悟はしていたけれど、堰堤に左右いずれから登るかなど、道の分岐が多い。堰堤に気を取られて呑気に歩いていくと、通行禁止の標札に行き当たったり、どう見ても難路すぎるだろうと思える道になったりしていて、道を少し戻ってより安全そうな道を探す。



荒地山第二堰堤には、誰が設置したのか、1対の犬の像がある。一見したところでは生きているのでは?とも思えるほど精巧な出来栄えだし、風雪に耐えて立ち続けているところを見ると、何らかの方法で堰堤に固定されているようだ。誰が何のために置いたのだろうか。



さらに堰堤の池には、体長50㎝はあろうかと思われる見事な錦鯉が泳いでいる。なんだか不思議な世界に足を踏み入れてしまったぞ。いや、不思議というより不気味に感じる。



荒地山第二堰堤の南側に登り切ったところが、キャッスルウォール方面と風吹岩方面の分岐点。この先は山と高原地図でもYAMAPでも黒い破線の道(それも途中まで)しか示されていない。立派な芦屋市の標識はあるけれど、ホントにキャッスルウォールに辿り着くのかぁ?



分岐点からしばらく進むと、奥高座の滝方面とキャッスルウォール方面の分岐点が現れたが、どちらの道もかなりの難路に見受けられる。ホントにここを登っていくのかぁ? ホントに中級コースだろうか…。登れなくはないが、先が判らない岩稜を進む気になれない。



それにYAMAPの地図には荒地山第二堰堤の南側ではなく、北側に道があるように描かれている。一旦堰堤を降りて、北側に抜ける道を探すが、見つからない。(青色は歩行軌跡)



結局、意を決して芦屋市の標柱を信じて急坂の岩稜を攀じ登っていく。その先は確かな地図もなく、歩けそうで、戻ることが容易な道を選んで歩いていく。滝の音が聞こえる方向に下りていくと期せずして奥高座の滝が現れた。



さらに、それっぽい方向へと突き進んでいくと、ついにキャッスルウォールに辿り着くことができた。よくまあこんな切り立った壁を攀じ登っていく人がいるものだ。見上げているだけでも首が痛くなってきた。



キャッスルウォールから荒地山への道は、地図には全く記載されていない。キャッスルウォールの左側の急な岩稜を攀じ登っていくと岩梯子方面に行けそうなんだけど、とても無理だ。が、引き返そうと思ったところで、荒地山方面と書かれた小さな標識を発見する。



岩梯子方面ではなく、荒地山へと直接向かう道のようだけど、それで構わない。岩だらけだし、分岐も多い。この近辺では何者かがハイカーを惑わす矢印を付けるということをよく耳にする。特に一度消された形跡がある赤ペンキの矢印は迂闊に信じられない。



高座谷ではほとんど人とは出会わなかったものの、キャッスルウォールからは何人かのハイカーと出会えたので、道を確認しながら進むことができた。普段なら躊躇してしまうような難路も、この道で間違いないと判ったなら元気を出して登っていくことができる。



ランドマークにもなっている荒地山の手前にある黒岩。岩の上に一本の黒松が立っている。ちょっとおっかないけれど、岩の上からの絶景を確認するために登っていく。



おお、芦屋から西宮にかけての景色が緑の稜線の向こうに広がっている。黒岩の上に座り込んでしばらく眺望を堪能する。



さらに進んでいくと幹に「プロペラ」と彫られた木がある。どうやら噂に聞くプロペラ岩に向かう道らしい。矢印に従い少し下りていったけれど、それっぽいものは現れないし、方向も怪しく、道も険しくなってきたので、諦めて戻ることにする。



何度も道に迷い、急坂と岩稜に苦しめながらも、なんとか荒地山山頂に辿り着いた。予想をかなり上回る疲労を感じる。あまり歩きたくない道だけれど、鷹尾山から岩梯子、七右衛門嵓を経て登ってくる方がまだしも楽だったように思える。



芦有道路の芦屋ゲートに向かって下山していく。倒木が多いもののさほどの急坂も難所もなく、安心して歩ける。道の分岐も少ないけれど、登山路の要所には丁寧に巻かれた赤いテープが見られる。景観も気にせず殴り書きされた赤ペンキの矢印よりも遥かに信頼できる。



1時間に1本しかない芦有道路の芦屋ゲートからのバス発車時刻に合わせるべく、のんびりと山を下っていく。芦屋ゲートの直前で芦屋川に出合う。大した流れではないけれど浮石に足を掛けてしまい、ちょっと危なっかしい渡渉になってしまう。



芦屋市のHPでは所要時間3時間、距離7.2㎞と書かれていたけれど、今日の所要時間は4時間20分、距離5.4㎞。道が判らず、結局芦屋市が推薦していたルートとは違う道を歩いたのだけれど、帰宅して地図と睨めっこしても正解ルートは判らないままだ。