2021年3月23日
3日かけての六甲全山縦走。今日は鵯越から六甲山記念碑台までの第二区間に挑む。目標は58歳時の8時間40分。健脚者には鼻で笑われそうなスローペースだが、63歳のヘナチョコハイカーには高い目標だ。摩耶山に辿り着けるかさえ自信は無いが、頑張って歩いていこう。
神戸電鉄鵯越駅を8時過ぎに出発。体慣らしには有難いことに、しばらくは平坦な道が続く。山頂のアンテナが目印になる菊水山が見えてきた。六甲全山縦走における最大の難所と言われる急坂がこの後待ち構えている。
丸太階段や岩ゴツゴツの急坂が続く。先日この道を下ったばかりだけれど、さすがに登りはキツい。ちょっと腰を降ろしたくなるけれど、YAMAPの歩行軌跡に休憩の印が多く残るのは恥ずかしい…など、どうでもいいことを思いながら頑張って登っていく。
鵯越駅を出発して1時間20分で菊水山(459m)の山頂に到着。予定より少し早い到着だけれど、急ぐ必要など無い。ゆっくりマイペースでバテることなく、目標区間を歩き切ることが大切だ。抜けるように青い空を仰ぎつつ小休憩。
菊水山を東に下っていくと、天王吊橋の手前で道が崩落・通行止めになっているところがあるが、しっかりとした迂回路が用意されている。次に目指す鍋蓋山の山容がはっきりと見えてきた。
天王吊橋で有馬街道(現国道428号線)を渡る。旧道も残るという有馬街道は一度歩いてみたいと思っているのだけれど、旧道以外は歩道もなくとても歩きにくそうに見える。
天王吊橋を渡りきると、直ちに鍋蓋山の急登が待ち構えている。菊水山ばかりに焦点があたりがちだが、こちらの急坂もかなりのものだ。
トレランの集団に何度も道を譲りながら、鍋蓋山(486m)の頂上にやってきた。先月に平野谷から登ったばかりなのに、登山路が違えば景色もキツさも全然違っていて新鮮に感じられる。
鍋蓋山から市ケ原までは、比較的なだらかな道が続くのだけれど、摩耶山(写真右前方)が遠すぎて、先行きは不安でいっぱいだ。菊水山と鍋蓋山の二山に登っただけで、普段なら十分な山歩きだというのに、今日の行程ではまだ序盤でしかない。
再度山の南を抜け、鍋蓋山と摩耶山の鞍部に広がる市ケ原までやってきた。計画どおりの正午前の到着だ。新開地駅構内の店で買ってきたおにぎりで昼食休憩を取る。暖かさのせいか予想以上に水分を摂るが、大龍寺、市ケ原、掬星台と自販機が随所にあるのが有難い。
休憩の後、摩耶山に向かって再び歩き始めるが足腰は重い。いつものことながら、なまじ休憩を取るとそれまで体の奥底に溜まっていた疲労が噴き出してくるようだ。チラホラ咲きの桜に励まされながら、この先の難所、稲妻坂、天狗道へと向かっていく。
菊水山に並ぶ難所と言われる稲妻坂にこれまでさほどの苦手意識は無かったのだけれど、今日は勝手が違う。岩だらけの急坂で次第に足が上げることが苦痛になってきた。特に以前の滑落で痛めた右足が上がらない…。
右足が上がらないものだから、左足で庇いながら岩を攀じ登っていくが、左右両足が均等に使えない状態になると、足腰には加速度的に疲労が蓄積する。右の股関節からお尻にかけて鈍い痛みが走る。
天狗道では一気にペースダウンしたものの、何故か計画時刻よりも少し早い時間に摩耶山まで登ってくることができた。桃の花が美しく咲き誇る掬星台で長めの休憩で右足の回復をはかる。
掬星台の近くに立つお洒落なホテル。20年前に国民宿舎を大改造してオープンしたのだけれど、寂しいことに今月末で閉館だという。ここだけ六甲縦走路が洒落た石畳になっているのが滑稽に思っていたのだけれど、ホテルが無くなると一層おかしな風景になりそうだ。
掬星台で休憩したものの、足腰はさらに重い。いつもはアゴニー坂なんて大層な名前は付いているけれど、どうってことは無いと思っていたのに、今日に限っては登りばかりか下りもしんどい…。
三国池へ向かうごく段差の低い階段でさえ辛くなってきた。元気と時間があれば記念碑台まで歩いた後は、歩いて下山するつもりだったけれど、ケーブルで下山することにしよう。
三国岩にチョコっと立ち寄る。長らく三国とは播磨、摂津、丹波の三国だと思っていたのだけれど、説明板をよく見ると武庫、莵原、有馬の三郡の境界にある岩なんだそうだ。丹波や播磨の国境までは遠すぎると長年訝しく思っていたのだけれど、ようやく合点がいった。
摩耶山から更にペースダウンしたものの、なんとかゴールの記念碑台まで辿り着いた。なんとタイムは8時間40分。5年前と全く同じだ。当時と比べれば靴やリュックもグレードアップしたけれど、その間の老化を考えれば同タイムとは上出来だ。
5年前には阪急バスで下山したけれど、今は15分ほど歩いて六甲ケーブル駅まで行かねば下山の交通機関が無い。ところが軽い下りの舗装路を歩いていると不思議なもので何だか元気になってきた。歩いて1時間のところをケーブル運賃に590円払うのは勿体無く思えてきた。
どんなにゆっくり歩いても日没までには下山できるだろう。しかも油コブシは勝手知ったる道だし、急坂もない。と考えて六甲ケーブル駅の横手から下山を始める。日没直前の下山なんて避けるべきなのは判っているけれど、歩きすぎたせいか気分だけは元気になっている。
以前歩いた寒天山道で渦森台へ下りれば良かったと気づいたが、既に時は遅し。岩のなかにポツンと三角点が立つ油コブシまで下りてきていた。
寒天山道は逃したけれど、しばらく下りていくと、先日歩き損ねた高羽道で渦森台に抜けれることに気づく。遠回りにはなるけれど、この際未踏の道を制覇しておこう。幸い渦森台までは比較的平坦な歩きやすい道で、幸いにも無事日没前に渦森台に到着できた。
よく歩いたものだ。疲労があるレベルを超えると、逆に気分が高揚してくるというランナーズハイのような状態だったのかもしれない。山歩きで18.5㎞というのは長らく経験のないことだが、それよりも10時間を超えて歩いていたという達成感は大きい。
標高グラフを振り返ると、最初の二座(菊水山、鍋蓋山)もキツイけど、やはり主役は摩耶山に思える。累積標高は1679m。58歳当時の自分に勝ったようで気分はハイだけれど、YAMAPによれば消費カロリーは5000kcal超。2~3日は歩くのが辛くなるだろう。