2021年3月3日
芦屋から六甲山を越えて有馬温泉を目指す。今回のポイントは、初登頂となる西おたふく山(標高878m)と、土砂崩れのために長らく通行止めになっていた紅葉谷道を歩くことだ。少々遠回りの行程にはなるけれど、今日は歩くぞと気合を入れて阪神芦屋駅を出発する。
芦屋ロックガーデンから雨ヶ峠を経由して西おたふく山に向かうつもりだったのだけれど、阪急芦屋川駅でロックガーデンを目指す大勢のハイカーと遭遇する。密の登山を避けるため、急遽予定を変更して会下山遺跡まで歩き、まずは打越峠を目指す。
さらに遠回りのルートを選んでしまったような気がするけれど、体調もいいし、天気もいい。会下山遺跡からの急な坂も苦にすることなく、ちっとも蛙には見えない蛙岩までやってきた。
数か月前にも歩いたばかりの道だけれど、山椿の多いことに驚。悲しいことに、一度や二度歩いたくらいでは、危険個所の有無や、よほど特徴のある地形くらいしか覚えていない。初めて歩くような新鮮な気持ちで、道に落下した椿の花びらをなるべく踏まないように進む。
しばらくは平坦な道が続いていたが、七兵衛山の手前から再び急な坂道へと変わる。ほんの5分もあれば七兵衛山の山頂にも立ち寄れたけれど、先は長い。序盤からの寄り道はやめておこう。
打越峠を過ぎ、住吉道に合流すべく黒五谷を越えていく。既に歩き始めて2時間半以上を経過しているけれど、未だ休憩無しだ。なまじ休憩を取ると疲れが噴き出すことが多いので、今日はできるだけゆっくり歩き、座り込むような休憩はなるべく取らない方針を試している。
住吉川の左岸を進んでいくと、いよいよ頂上の電波塔が特徴的な西おたふく山が見えてきた。3時間歩いて未だ標高は400m付近をウロウロしている。標高900m近い西おたふく山までの道が思いやられる。
住吉川を右岸に渡渉する。昨日の雨での増水が心配だったけれど、問題無さそうだ。ここで渡渉できなければ、西おたふく山登頂が難しくなるだけにホッとする。
ところが、西おたふく山への登頂口に、道の崩落のお知らせが掲示されている。今後の雨によっては更に崩落が進み、道が無くなるかもしれないとのことだ。迂回路も無く、もし崩落していれば、再びここに戻ってくるしかない。
長く急な坂道を登っていく。4時間近く無休憩で歩いてきただけに足腰も心臓も悲鳴をあげ始める。適当な場所がないため狭い道を塞ぐように座り込んで昼食を取っていると、2人のトレイルランナーが駆け下りてきて、あわてて道を開ける。
ランナーが下りてきたので、大したことは無いのだろうと思って進んだが、崩落はかなり大規模なものだった。わずかに残った道で体を山肌に押し付けるようにして滑落しないよう慎重に進んでいく。
西おたふく山の山頂が近づくと、あたりは笹が広がる原野のようになっている。東おたふく山では笹を刈り取りススキの再生をしているが、ここも元々はススキ原だったのかもしれない。写真では緩斜面に見えるけれど、笹が繁茂する山頂への道は結構急なものだ。
西おたふく山の山頂は、阪神間の市街地からも良く目立つ電波塔のあるところだと思っていたが、もう少し北にあるらしい。山頂碑を探したけれど、結局見つけられなかった…。
市街地から西おたふく山が良く見えるのだから、当然西おたふく山からも神戸から阪神間、さらには大阪湾を越えた町々まで広く見通すことができる。町との間に視界を遮るほどの山が無いのだ。
山頂碑は見つからなかったけれど、西おたふく山から六甲山上に向かう道では、美しい樹氷を見ることができた。青空に映えて、樹氷が白くキラキラと輝いている。
温度が上がってきたせいか、時おり樹木から細長い氷の塊がポトンと落ちてくる。道の上には樹氷の破片のようなものが散乱している。
西おたふく山登頂は予想以上に疲れたけれど、樹氷も見ることができ、疲労感を上回る満足感をもって六甲山上まで登ってきた。六甲ガーデンテラス付近のアンテナ群を横目に、極楽茶屋跡から紅葉谷道を下り、有馬温泉へと向かう。
紅葉谷道は季節が変わったように真っ白だ。同じ山でも南斜面と北斜面では全く温度が違うんだということを、この冬の登山では実感することが多々あったが、感心している場合ではない。急遽トレッキングポールを組み立て、滑りやすそうな雪の下り坂に備える。
氷柱もアチコチにみられる。紅葉谷道は決して難路ではないのだけれど、最近も大きな土砂崩れがあり長らく通行止めになっていたし、積雪が残る状態だけに緊張感を緩めずに歩いていかねば、と気を引き締める。
ある程度下ってくると、積雪は無くなるが、石がゴロゴロする沢を歩いていく道となる。とにかくゆっくり、フラットフッティングを心がけ、浮石に注意しながら進む。情けないことだが、最近の登山では「転ばないこと」が目標のひとつになっている。
紅葉谷道の周囲には滝が多く、気温が下がれば氷瀑となるらしい。ちょっと立ち寄ってもいいかな、とも思ったけれど、どの滝に向かう道も崩落危険や迂回せよの看板で塞がれている。もっとも今日の気温では氷瀑は望めないし、疲労状態で難路に挑むほどの余裕も無い。
狭い山道から突如河原が広がった寂し気な場所に出てきた。紅葉谷と書かれた標識がある。ここが紅葉谷の中心なんだろうか。山に囲まれて薄暗く、賽の河原を想起するような不気味な雰囲気だ。
紅葉谷はその名のとおり紅葉の名所と聞いているけれど、ここまで木を観察することもなくやってきた。紅葉って落葉すると存在感が薄くなるものだけど、河原にも見あたらない。でも春の訪れを告げるネコヤナギが開花しかけているのを見つけてチョット嬉しい。
のんびりと、でも気を緩めることはなく、無事有馬温泉まで下りてくることができた。久しぶりに炭酸源泉公園に立ち寄る。喉が渇いていたこともあって、はじめて炭酸源泉を飲んでみたけれど、鉄っぽくサイダーとは程遠い味だ。はっきり言って不味い…。
ゆっくり歩いたつもりだったけれど、休憩込みでの所要時間8時間というのはヤマレコによれば標準タイムとの評価だ。ペースには拘らず、楽しく安全な山歩きを第一に考えてはいるけれど、標準タイムと聞くとやはりちょっと自信に繋がる。
上に掲げたのはヤマレコの記録で、歩行距離は17.7㎞になっている。一方でYAMAPでは16.2㎞。この差は大きい。累積登りも1708mと1351mと大違いだ。どちらか一方に絞らないとスマホのバッテリーが厳しいのだけれど、どちらも素晴らしいアプリなので悩ましい。