摩耶山(黒岩尾根・桜谷道)【六甲山系】

 2021年4月5日


悪路とのことで永らく敬遠してきた黒岩尾根で摩耶山に登ってみる。六甲縦走の難所と言われる天狗道と比べても更に等高線間隔は狭く、かなりの急坂が予想されるけれど、最近整備が進んで少しは歩きやすくなっているらしい。摩耶山からは桜谷道、徳川道、高雄山森林管理道、南ドンリッジ道と、なるべく初めての道を繋いで歩く計画だ。



ポンコツハイカーには厳しい山行が予想されるため、少しでも楽をしようと標高400m近い再度公園をスタート地点にしたけれど、再度越、大龍寺を経て、標高250mの市ケ原まで下りて行かねばならない。新神戸から歩いてくるとの比べて大したメリットは無さそうだ。



天狗道(六甲全山縦走路)に向かう大半のハイカーと別れて、黒岩尾根の登り口に向かう。人の気配もなく、薄暗い森の中に不安を抱えながら突き進んでいく。



急坂は覚悟のうえだったけれど、いきなり苦手な丸太階段が続く。もっとも多くの丸太階段は最近整備されたものらしく、それ以前は大きな岩を攀じ登るようなところが多かったと聞く。確かに岩ゴロゴロの個所にやってくると丸太階段の方がマシだと思える。



しかし延々と続く丸太階段を登っていると、岩ゴロゴロの方がいいとも思ってしまう。息はあがり、太腿は悲鳴をあげる。果てしない階段を見ていると目も眩んでくる。単調な登りに気力も萎える。緩んだ靴紐を締め直すために座り込んだら10分ほど動く気になれなかった。



1時間10分、登りに登り続けて(途中10分ほど休憩はしたが)、標高606mの小ピークまで登ってきた。摩耶山までの中間地点だ。丸太階段なんて大嫌いだけれど、丸太階段のおかげでここまで無事登ってこれたことは間違いない。



ここまで殆ど無かった眺望(あったとしても楽しむ余裕もなかったけれど)がようやく開ける。鈴蘭台の街から須磨、明石海峡までがよく見渡せる。



黒岩尾根の後半は大した難路ではないはず。緊張感も緩んで歩いていたせいか、道を誤って谷に迷い込んでしまった。大事に至ることなく尾根道に戻ることができたけど、偶然歩いておられたハイカーの足元に突如攀じ登っていったものだから随分驚かせてしまった。



その後は比較的緩い勾配が続き、快調に摩耶山に向けて進んでいく。それなりに疲労は蓄積しているはずだけれど、平坦な道を歩いていると、疲れなど全く感じなくなっているのが不思議だ。でも自覚できていない疲労はとても危険だとも理解している。



案内標識は登山口にあったきりで、途中ほとんど見られなかったが、摩耶山が近づくと再び現れる。ここまで登ってきた黒岩尾根には「悪路」と注意書きが付されている。厳しい道だけれど、丸太階段のお陰でもはや悪路とは言えなくなっているように思う。



掬星台のアンテナ群が見えてきた。スタートしてから3時間20分。予定より少々遅めだけれど、ここで下山するという最悪ケースも想定していたけれど、昼食休憩をした後に噴き出してきがちな疲労感も大したことは無さそうだ。



掬星台からは桜谷道で北に進んでいく。しばらくは摩耶自然観察園の中の穏やかな道が続く。かつては奥摩耶遊園地だったところだというが、マウントコースターなどのアトラクションがどのように配置されていたのか、想像することさえ困難だ。



自然観察園を抜けると渓流沿いの道となる。生田川の上流に流れ込む川のようだ。何度も渡渉を繰り返していくが、増水時には渡渉に苦労しそうに思える。飛び石もあまりしっかりしておらず、少々靴が水没することは覚悟で川を渡っていく。



桜谷というが、あまり桜の樹は見られず、椿ばかりが目立つ。麓では随分前に花は散っているのに、ここではまだ開花している。落花も多く、華やかな道が続く。



川面にも椿の落花が多く浮かぶ。飛び石にも落花がへばりいている。足を滑らせないようにということもあるけれど、椿の花をなるべく踏みつぶさないように足を置く石を選ぶ。



徳川道への飛び石渡り。川幅は広く、水量も多いけれど、飛び石はしっかりしている。



徳川道を西へと進む。明治維新直前に攘夷派武士と神戸居留の外国人との軋轢を避けるために急遽建設したバイパス道だ。さすがに良く整備されていて歩きやすい。いつか歩き通してみたいと思う。



森林植物園東門からそのまま生田川に沿って南下すればトゥエンティクロスだが、長らく崖崩れのため危険な状態が続いているため、森林植物園の南端を進む高雄山森林管理道で再度公園に戻ることにする。



初めて歩く道だけれど、なかなかの荒れようだ。人の気配はまるで無く、路上にはイノシシが土を掘り返した跡が散見される。傾斜がきつい狭い道でイノシシには出会いたくないなぁ、と思いながら進んでいく。



倒木も多い。さほどの難路ではないけれど、とても寂しく心細くなるような道だ。



橋も完全に崩壊している。まあ、今日は水もないので、橋がなくとも平気なんだけれど、早くこの山を抜けだしたいという思いは強くなるばかり。しかしさすがに疲れてきて足は思うほど前に進まない。



分水嶺越を経て、南ドンリッジ道へと進む。相変わらず寂しい道だ。アップダウンもそこそこあって、どんどんと歩くペースが落ちていくのが判る。



YAMAPの破線ルートを歩くのはちょっと怖いけれど、再度公園へと向かう最短ルートで下山する。幸い大した難路でもなかったけれど、「急がば回れ」と同様に「疲れたなら遠回りでも確実なルートに迂回しろ」が正しい選択だったと反省する。



歩き始めて6時間半、無事スタート地点の再度公園に戻ってきた。計画よりもかなりタイムオーバーだったけれど、ポンコツハイカーにとっては達成感の高いトレッキングだった。



距離11.3㎞、累積標高917m。消費カロリーは3000kcal超(体重が重いだけ?)。