2021年9月10日
丹波篠山市の筱見(ささみ)四十八滝に出掛ける。8つの滝が始終流れて四十八滝とダジャレめいた名前だけれど、なかなかの名瀑だと聞く。あるいは多数の滝が連なっているところは総じて四十八滝と呼ばれるらしい。
岩場があるので装備を整えて登れとの注意書がある。案内板の周回コースの一部が点線になっているのは気になるけれど、クサリ場は1ヶ所しか示されていない。まぁ、どうってこともなかろう。この後に待ち構える難行苦行など夢想だにせず出発する。
一番上の一の滝まで1時間との案内がある。多紀連山の稜線まで登って、周回ルートで戻ってくるとしても2時間ほどで戻ってくることができるようだ。出発が遅くなり、既に午後1時に近いけれど、時間には十分余裕がありそうだ。
登り始めて間もなく、第一の滝「手洗いの滝」がある。小ぶりながらも、勢いのある清流が水しぶきを上げている。滝壺の前の石を伝って渡渉していく。なかなか楽しいルートのようだ。
渓流に沿った苔むした山道を登っていく。気温は高いけれど日射しは木々に遮られ、涼やかな水音を楽しみながら次の滝へと向かっていく。
弁天滝(下)と肩ヶ滝(上)の二連の滝が現れた。2番手、3番手の滝ではあるけれど、なかなかの迫力だ。この後、どんな滝が登場するのか、楽しみが増してくる。
が、この後、ルンルン気分が吹っ飛ぶことになる。おいおい、こんなトコを登っていくのかぁ…。ちょっと険しい道があるとは聞いていたけれど、一の滝のあたりのクサリ場だけじゃないのか。
油断のならない道が続く。確かに、これでは半端な装備では進んで行くことはできない。この辺りから、手を使わなければ進めないところばかりが登場する。
第4の滝である長滝を遠目に確認し、第5の滝、シャレ滝までやってきた。名前の由来は判らないけれど、細いながらもほぼ垂直に落下する滝は見事。滝の真ん前に長々と座り込み、気力・体力の回復を図る。
第6の滝、大滝へと向かう道は、沢登りのようになっていて何度も渡渉を繰り返す。かなりの急坂で、時に手を使わないと登っていけない。
大滝。名前のとおり豪快な滝だ。その気になれば滝壺まで入って滝行だってできる。誰もいないし、服を脱いで入っていこうか、なんてことまで、ちょっと思ってしまう。いい滝だ。写真を何枚も撮りながら、ここでも再び大休憩。
大滝を過ぎると更に道は険しくなる。危険とまでは思わないけれど、かなりシンドイ。ところが、ここで下山してきたソロハイカーを見ると、ヘルメットを被っている。そういう山なのかぁ、ここは。
クサリ場は1ヶ所だと思っていたけれど、何ヶ所もある。ロープが張られたところは数えきれない。しかも、道は益々厳しいものになっていく。登っていくのはまだしも、この道を下山するのは相当難しそうだ。滑ったらひとたまりもない。
登り始めて1時間、ようやく一の滝(上)、二の滝(下)まで辿り着いた。ここでも大休憩。というより、この先どうするかを本気で悩み始めた。
というのも一の滝から尾根道へと登る道は、とんでもない岩場。相当な勾配だ。さらにこの先、どうなっているのかも判らない。悩んでいるとヘルメットを被った別のソロハイカーがクサリ場を下りてきた。ここを登るのも怖いけれど、来た道を下りて行くのも恐ろしい。
一の滝・二の滝の前に座り込み、散々悩んだ後、意を決して岩場に挑む。下るのがヤバいのなら登るしかないのだ。斜度60度以上もありそうな岩の壁をクサリの助けを借りて攀じ登っていく。えらいトコに来てしまったものだ。
何とか岩場をクリアしたものの、道がよく判らなくなる。登山口の案内板ではルートが点線になっていたところだ。トレースのありそうな方向に歩いてきたけれど、YAMAPの赤線ルートを外れて、破線ルートを進んでいるようだ。まあいいや、このルートで進んで行こう。
ズルズルと滑る坂を攀じ登り、縦横に錯綜する木々を潜ったり跨いだり、ハチに追われたりしながら進んだけれど、もはやこれ以上進むことは困難だ。引き返すしかないけれど、登ってきた急坂を下っていくのも難儀なことだ。
とにかくYAMAPの赤線ルートの方向へと進んで行くしかない。何度も方向を確かめながら、安全そうなトコロを選んで下っていく。空は晴れてるし、山々も美しいけれど、気分は晴れない。深刻な状況だとは思わないけれど、これって軽い遭難状態だぞ。
GPSというのはホントに有難いものだ。登山の革命といってもいい。現在位置も判るし、登山路も判る。標高線情報もあるので、進むべき方向を自信をもって決断できる。かなり苦労はしたけれど、黄色いロープがある坂に出てきた。一安心だ。
倒木の多い道だけれど、これまで歩いてきた道と比べれば、なんと歩きやすいことか。YAMAPの赤線ルートに乗っていることも確認し、のんびりと歩いていく。
多紀連山の山稜まで登ってきた。このまま進めば小金ヶ嶽や三嶽へと繋がっていく。どちらも険しい山で苦労して登ったけれど、この辺りは平坦そのものだ。3頭の鹿が道を駆け抜けていく。
周回ルートの下山路との分岐点までやってきた。これだけ苦労して、ひとつのピークも獲得できていないのは残念。20分ほども歩けば隣の峠山の山頂まで行くことができそうだけれど、やめとこう。
下山路は、登ってきた道とは打って変わって普通の登山道。それなりの勾配はあるけれど、手を使うことなく登り下りできるのは有難い。
軽い山歩きのつもりが、大変な難行苦行になってしまった。筱見四十八滝には大満足だったけれど、下調べ不足や道間違いもあってドッと疲れた。休憩や写真撮影ばかりしていたとはいえ、3時間もかけたのに距離はなんと2.4㎞! 信じられない思いだ。