尼子山(赤穂市)

 2021年9月12日


YAMASTAが西播磨の8つの山城を対象にしたトレッキングスタンプラリーを開催している。山歩き、スタンプラリー、史跡探訪の3大好物勢揃いの嬉しいイベントだ。もっとも半数の山城は昨年登ったばかりなのが悩ましいけど、まずは未踏破の赤穂市の尼子山を制覇しよう。



スタート地点の坂越大橋から見た尼子山。手前のはげ山(これが正式名称らしい)の奥に聳える三角錐の美しいシルエットだ。赤穂富士とも呼ばれているらしい。



標高259mとはいえ、今回対象となっている8つ西播磨の山城のなかでは唯一の「上級者」対象。必要体力度も技術度も5点満点の4と高いスコアだ。山の難易度は標高や外見では窺い知れないとはいえ、そんなに難しい山なんだろうか…。ちょっと不安だ。



朝からの雨模様に躊躇したこともあって、高野の集落から登山口へと向かったのは正午を少し過ぎた頃。気温はさほど高くはないけれど、ひどく湿度が高い。鄙びた木製の案内表示に導かれて、山道へと入っていく。



登山道には「山城へGO」の幟が何本か立っている。西播磨県民局が、この地に多い山城跡をアピールするために往時の山城の様子をスマホで閲覧できるARアプリだ。今回のYAMASTAのイベントとも連携しているようだ。



しばらく登っていくと、かつての城主、尼子将監義久の墓所がある。全盛期には8ヶ国を領有した尼子の跡取り息子が最前線の播磨に配置されていたことに驚く。義久は月山富田城落城後は毛利家で飼い殺し状態だったから、ここに眠っているとは思えないのだが…。



2合目。かなり新しい標識だ。”山城へGO”キャンペーンを機に建てられたものかもしれない。尼子山の前衛峰、はげ山も気になるけれど、まずは尼子山の山頂へと向かう。



2合目を過ぎると、徐々に斜度が厳しくなってきた。以前の「ガシガシ」登る、という感覚が蘇ってこない。「ガシ」の時点で息切れを起こしてしまう。悲しいかことだけど、この数ヶ月で体力低下したことを認めざるをえない。



勾配はキツくなる一方。危険は感じられないし、特に高い技術も不要だ。ただ体力の消耗は激しい。



休憩を挟みながら、少しずつ登ってくと、尼子山の山頂部が見えてきた。なんと岩だらけではないか…。西播磨県民局のサイトで「上級者向け」となっていたことを思い出し、無事頂上に辿り着けるのか、ちょっと不安になってくる。



登山道の大部分には補助のためのトラロープが張られているのだけれど、これもかなり新しいものだ。”山城にGO”キャンペーン開始に合わせて、少しでも登りやすいものに工夫したのではなかろうか。もっともこの種のロープが有効なのは登りよりも下りの際だと思う。



登ってきた道を振り返ると、風化による小石や砂が多く、いかにもズルズルと滑りやすそうなところが多い。こんな道を下るとき、ロープがあれば心強いものだ。



大岩の横を攀じ登っていく。攻城する敵に向けて落とすためにここに据えられたとも伝わるらしいけど、見た目と違って押してもビクともしない。



汗だくになりながら、頂上手前の急な岩場を登り続けると、ようやく山頂にある尼子神社の石鳥居が頭上に見えてきた。いやぁ、しんどかった…。



頂上には至ってシンプルな祠が祀られている。標高は259m。残念ながら石垣や掘割のようなものは見当たらないし、素人目には縄張りも想像することが難しい。ただ主郭の平坦部は大きなものではなく、さほど大勢の兵士を収容できるような城だったとは思えない。



尼子神社の前で、YAMASTAにチェックイン。GPSで位置検知をしてくれるようで、無事尼子山城のスタンプをゲットできた。味気ない旗マークを使いまわしているデジタルスタンプラリーと違って、このような凝ったスタンプがゲットできるのは嬉しいものだ。



山上からの眺望。足元に千種川が流れている。写真左手の山が茶臼山・宝珠山、右手の山が雄鷹台山、昨年登った山々だ。この辺りでは尼子山だけ登っていなかった。



山頂から北に下りる道に「尼子山湧泉」の標識がある。何だか判らないまま、赤穂藩家臣が松の廊下事件でお家の一大事を知らせるべく日に夜を継いで江戸から赤穂に駆け戻った早駕籠の像がある高取峠に向かう道を下っていく。



道にはゴムホースが敷設されている。おそらく湧水に繋がるホースなんだろうけれど、どこへ向かっているのだろうか。



古い井戸汲みポンプやバケツなども見られるけれど、長い間、使われるなく放置されているもののようだ。



どうやら湧水と思われるところまで下ってきたけれど、そこにあるのは水溜まりにしか見えず、想像していた滾滾と湧き出る泉とは似ても似つかないもの。尼子山城は水の手も問題なかったことを言いたいものなんだろうか。案内するなら説明板くらいは欲しかった。



いい風が通り抜ける山頂でのんびりとし、ロープに助けてもらいながら急な岩場を下っていく。確かにしんどい道だったけれど、上級者向きということはない。せいぜい初級と中級の間くらいだろう。



往路ではやり過ごしたはげ山に立ち寄る。麓から見て判ってはいたけれど、ちっとも禿げていない。集落に近いだけに木々があらかた伐採されていた時代もあったのかもしれないけれど、一度付けられた不名誉なレッテルはなかなか消えないのだろうか。ちょっと気の毒だ。



赤穂市の観光協会で、尼子山制覇の缶バッジをいただく。各山城で先着1000人にプレゼントらしい。全部集めたいけれど、この種のものは異様に人気があるからなぁ…。一気に8城回ってしまうべきか、悩んでしまう。