2021年9月7日
大阪府能勢町と兵庫県猪名川町の境界にある三草山に出掛ける。しばらく山歩きから遠ざかっていた体を慣らすには適当そうな低山だ。余裕があれば滝王山まで行ってみよう。それに帰路には黄金色に稲穂が輝く長谷の棚田を楽しめそうだ。
三草山の北東にあたる能勢の神山。曹洞宗の古刹、慈眼寺。境内観音堂の傍らにある高さ2mの宝篋印塔は、かつて三草山山頂にあった旧清山寺からここに移転されたという。
豪雪地帯にありがちな急勾配の屋根を持つ家屋が並ぶ道を、さすが大阪のチベット、と思いながら呑気に急な坂道を登っていったけれど、完全な道間違い。せっかく息を切らして登ってきたのに、早々にやらかしてしまった。
道間違いで20分ほどの時間と結構な体力をロスして、あらためて棚田の横を進むように三草山に向かって登っていく。棚田の様子を一段ずつ確かめていると、ここでは、稲だけではなく、パプリカ、蕗、温室、と段ごとに異なる作物が栽培されていて興味深い。
前方に鹿発見。でも距離が30mほどに近づくと逃げてしまう。山で動物に出会うことは多いけれど、まともな写真が撮れた試しがない。奈良公園の鹿のようなわけにはいかない。
三草山の杉が神功皇后の外征のための造船に用いられたという話を思い出しながら、杉林のなかの平坦な道をズンズン進む。が、これがまたまた道間違い。500mほども全然違う方向に進んできてしまった。やけに平坦すぎるとは思っていたのだけれど…。
結局往復1㎞ほどもロスして、三草山への分岐に戻ってきた。写真の右側から登ってきて、ヘアピン状に分岐する山道に気付かず写真手前に進んでしまった。そう、鹿がいたのだ。鹿に導かれて誤った道に誘われるなって、なんだか古いおとぎ話のようだ。
あらめて三草山の山頂に向けて坂道を登っていくが、雨が続いたせいか、木段の踏み面はすべて池や沼のような状態になっていて、登山靴がズブズブと泥のなかに埋まりこんでしまうような始末。
度重なる道間違いや泥沼化した登山道に、想定外の苦労をしながらも、やっと三草山の稜線まで上がってきた。ここからはゼフィルスの森となる。ゼフィルスってウルトラ怪獣のような名前だけれど、希少なシジミ蝶のことだ。
ゼフィルスの保護のためだろうか、登山道の両端には丸太が設置されて、道から外れて歩かないような工夫が施されている。蝶の季節も終盤ではあるけれど、ひょっとしてゼフィルスに出会えないものかと、周囲に気を配りながらソロリソロリと進んでいく。
なんと一羽の蝶が飛来し、目の前の木に留まった。どうせピンボケだろうと思いつつシャッターを切るが意外にピントが合っている。残念ながらゼフィルスではなく、サトノマダラヒカゲというタテハ蝶の仲間のようだけれど、神秘的な羽根の紋様が観察できて大満足だ。
その後は蝶一匹とも出会うことができず、キノコの観察に終始する。白いのやら黒いのやら、マイタケのような群生がアチコチに見られる。
土から顔を出したばかりと思われる可愛いタマゴ型のキノコも見られる。昨年の山歩きではキノコに嵌ってソコソコ勉強したけれど、種類が多くって覚えれるものではなさそうだ。しかも幼菌から成長するにつれて姿かたちが大きく変わるので、名前の同定は至難だ。
三草山の山頂に向けて、最後の階段のぼり。大した勾配でもないように思うのだけれど、既に疲れているのか、かなり辛い…。数年前に登った際には、もっと楽に登ってきたように記憶しているのだけれど…。
三草山の山頂。丸みのある山容から想像していたとおり、頂上は平坦そのもので、写真を見るだけでは、ここが標高564mの山頂だとは思えないだろう。まるで市街地の公園のようだ。
周囲の木が少々遮ってはいるけれど、眺望もなかなかのもの。右正面の一番高い山が大船山、左端は羽束山、三田市内の山々が見渡せる。大船山の尖がった山容を眺めながら、山頂直前で苦労した急勾配を思い出す。
クヌギ林のなかを才ノ神峠に向かって下っていく。そこそこの勾配で、三草山に戻る気にはなれない。もはや才ノ神峠から滝王山に登るつもりは失せてしまった。そもそも滝王山への道は迷いやすいとのこと。今日のように道間違いばかりしている日は避けるべきだろう。
才ノ神峠。能勢と猪名川の町境にあり、8本もの道が集まる。古くからの交通の要衝だったと思われ、車も辛うじて通行できそうな道もあるけれど、古い石碑や石仏が静寂のなかにひっそりと佇んでいる。
才ノ神峠から、長谷(ながたに)の集落へとのんびりと下っていく。有名な棚田が木々の隙間から見えてきた。
棚田が広く見渡せるところにやってきた。いったい何段あるのだろうか。長い斜面を利用して30段くらいはありそうだ。
棚田の段の境には、何かの草が植えられていて、棚が崩落しないように工夫されているようだ。期待通り稲穂は黄金色に輝き、早くも稲刈りが間近に迫っていることが窺える。
と思ったら、9月の上旬だというのに、既に稲刈りは始まっていた。刈り取られた稲わらを燃やす煙がところどころに立ち上がっている。
見れば柿も色づきを始めている。もうすぐ食べることができそうだ。
栗も立派に育ってきているようだ。既に能勢は秋の気配が色濃い。
6.3㎞を3時間余りかけて歩いた。累積標高はわずか450m。過ごしやすい気温で、ほぼ標準タイムで歩けたとはいえ、予想以上に疲れた。この秋に登りたい1000m級の山がいくつもあるんだけれど、まだまだ難しそうだ。