2024年3月13日
薩摩富士とも呼ばれる秀麗な山容を誇る開聞岳に挑戦だ。ホントは長崎鼻から見える東シナ海に浮かぶような開聞岳も見たかったのだけれど、時間が無く立ち寄れず。指宿観光協会の写真を借用させていただく。
朝一番の飛行機で鹿児島に飛び、慣れないレンタカーで道間違いを連発しながら登山口に到着。写真で見ていたのとは異なり、目の前に聳える開聞岳は貫録たっぷり。早々に威圧される。
標高924mの山頂までの道はらせん状の一本道。ひたすら登りが続くはずだ。睡眠不足のうえに、長距離のフライト&ドライブで背中が痛い。しかも登山開始は11時半。色んな面でギリギリの状態で登山開始だ。
さすがに南国。3月とは思えない植生だ。火山からの堆積土を抉ったような道は自然にできあがったものなんだろうか。わざわざ掘削したものにも感じられる。何もかもが目新しい。
3合目。頂上まで合目表示が設置されているのは有難い。とにかく草木が生い茂っていることもあり、視界が完全に塞がれていて、景色はまるで変わらない。大海に沿って山を登っているという感覚はまるでない。
晴天だけれど幸い気温はさほど高くなく、樹木に遮られているせいか風も感じない。おそらく最高レベルのコンディションのはずだ。勾配は思ったほどに大したことはない。路面も荒れてはいるけれど、何とかなりそうだ。(と思っていた)
5合目。背中は痛いけれど、ここまでは元気に登ってきた。5合目なんだからここが中間点、と思ったけれど、これがとんでもない間違いであることに、後に気付かされることになる。
5合目展望台。登山開始以来、ここで一瞬眺望が開ける。長崎鼻が良く見える。ここまでずっと南に向かって登ってきたけれど、この後は山頂に向けてらせん状の道が続くはずで、道の方向は西、北、東へと巡っていくはず。楽しみだ。
が、5合目を過ぎると道はさらに歩きにくいものになってくる。まず路面に多数の石がゴロゴロとしている。ほぼ全てが浮石だから、登るのはともかく、下りは特に注意しなければ簡単に転倒してしまいそうだ。
さらに登っていくと、石の大きさがどんどん大きくなってきて、岩と呼ぶのが相応しいサイズになってくる。火山から吹き上げられた岩が坂を落ちていくにつれて割れたり削れたりしていくのだろう。
路面に気を取られていると、道に突き出した枝に頭を強く打ち付けてしまった。あわや脳震盪だ。さらに岩を登る際に滑って左ひざを打ち付けてしまう。背中は痛いし、頭は打つし、膝は怪我するし、満身創痍状態だ。でも開門岳に登りたいという気持ちだけは萎えない。
ごくたまに下界が広がるところがあるけれど、大半はあまり変化の無い閉ざされた道を歩くだけ。開聞岳の山容を思い描きながら、その山肌を登っていることを想像することでモチベーションを高めていくしかない。
7合目を過ぎると、勾配はさらにキツクなってきたように感じる。疲れているせいかもしれない。アチコチが痛いけれど、さらに古傷の股関節が痛みだした。下手に休憩を取るとますます歩けなくなりそうなので、ゆっくりと、開口部や洞窟がある危なっかしい道を進む。
8合目。下山してくる方から「今からですか?」と声を掛けられる。かなり危なっかしい歩き方に見えるのかもしれない。5合目付近で風のようなスピードで登っていくハイカーに追い抜かれた後、誰も後ろから来ない。ひょっとしてこの日のアンカー?になっているようだ。
8合目から9合目まで、随分と時間が掛かった。もう少しスピードアップしなければとも思うけれど、下山の足をしっかりと残しておかねばならない。久々に見える眺望は東側(頴娃、枕崎方面)の海岸になっている。
有名な梯子が出てきた。ただでも足がふらついているような状態だけに注意深く登る。でもこれって下る時の方がヤバイよなぁ…とまだ登頂もしていないのに下山の心配ばかりしてしまう。
鎖にしがみつきながら岩の斜面を進む。もういい加減山頂に着いてくれ~、との思いが益々強まってくる。右股関節もさらに痛くなってきた。
山頂まで52m。なんと半端な標識だ。でもここから山頂までの道は決して半端ではないに違いない。もうすぐと思いながら、もう何十分も歩き続けているような気がする。
たぶんこれが最後と信じて、大きな岩を攀じ登っていく。登った先がゴールではなく、折り返し地点でしかないことは判ってはいるんだけれど、とにかく痛む股関節を叱咤して登り続けるしかない。
ついに山頂。岩だらけだ。幸い風もなく、晴天であることを改めて有難いと思う。なんと予定の2時間半を大幅に超えて3時間以上もかかったぞ。休憩してしまうと益々股関節が痛くなるのでここまで座りこむことなくやってきたけれど、さすがに休憩なしではもう歩けない。
山頂には先行ハイカーが一人だけ。でもその一人もしばらくすると下山してしまい、山頂は独り占めだ。山頂から眺望はさすがに凄い。正面の湖は、かつてイッシーと呼ばれる怪獣が棲んでいると言われた池田湖だ。屋久島や種子島は残念ながら確認できなかった。
20〜30分ほど休憩し、股関節をほぐして、下山開始。とにかく注意の上にも注意だ。自分の後ろにハイカーがいないし、今から登ってくる人もいないだろう。ここでトラブルを起こせば誰にも気づかれないのだ。日没までに間に合えばいい、ゆっくりでも確実に下っていく。
岩は少しずつ小さくなり石ころになる。この石ころが要注意で石車とまで呼ばれるのだ。誤れば簡単に転倒や滑落に繋がる。しかも石は黒、赤、白の三種あって、それぞれ、滑りやすさとか、柔らかさが違う。これほどストックを多用・重宝することはかつて無かった。
最後の最後に一人を追い抜いたとはいうものの、超ヘトヘト状態で開聞岳を下山。よくまあ大きなトラブル無しで下山できたものだ。登る時はたくさん駐車されていた車も随分と少ない。開聞岳に別れを告げてレンタカーで帰路につく。たぶんもう二度と登らない…。
しかし最大のトラブルは下山後に訪れた。レンタカーを運転していると足が痙攣したようになり、路肩に退避。芍薬甘草湯もいつものようには効かず、長々と車の中で足をマッサージしながら待機する羽目に陥った。歩行距離7.7㎞、獲得標高843m、所要時間6時間19分。