長峰山(~杣谷峠~アイスロード)【六甲山系】

 2021年2月28日


摩耶山の東隣、長峰山に登ってみる。これまで登頂を見送ってきたのは、長らくYAMAPでは山頂を挟んで東西双方に通行止の印が記されているためだ。しかしネットで調べても通行止情報は見当たらないばかりか、最近でも多くのハイカーが長峰山に登っていることが判る。



さらに何の都合かは判らないが、登山口まで私有地のため通り抜け不可との注意看板が杣谷峠などに掲げられている。しかし地図に×印が付いている私有地を迂回さえできれば、長峰山まで行けるのではなかろうか。まさか山までずっと私有地ということもあるまい。



何かあれば引き返せばいいとの軽い気持ちで六甲ケーブル駅に近い伯母野山登山口へと向かう。ネットで調べたところ、元の登山口の近くに通行禁止区間を迂回できる山道があるという。住宅街のなかに何の標札もない、山に入る寂し気な道があるけれど、これかなぁ…。



荒れた道が続くが、方向は間違っていないようだ。右にあるロープは立入禁止地域との境界を示すものだ。




一本道なので迷いようがない。長峰山への登山道へと繋がっていることを祈りながら進んでいくばかりだ。しかし5分ほども歩くと、無事長峰山への登山案内看板のある道に出くわす。麓への道にはバリケードが施されているが、山に向かう道は開放されている。



通行禁止エリアをうまく迂回して、無事長峰山への登山道に入り込めたようだけど、さほど整備された道ではないようだ。ゴツゴツした岩の多い道や、笹で覆われた道が交互に現れる。



YAMAPの地図には通行止の印が記されている地点も何事もなく通過できた。もっとも道は険しく、息があがってくる。楽な道ではない。早めに休憩をして後半でバテないような体力配分を心がけていく。



登り始めて1時間20分、長峰山の山頂に到着。標高687mの山頂を占拠しているのが天狗塚と呼ばれる巨岩だ。



天狗岩の上からの眺望は素晴らしい。右奥に聳えているのが摩耶山だ。その向こうには淡路島も見える。



心地よい風に吹かれながら天狗岩の上で長めの休憩を取った後、急な坂を下って杣谷峠に向かって歩いていく。



かと思えば、道は急な登りに変わる。YAMAPにあった長峰山と杣谷峠の間の通行止の印に釈然としないものを感じながら進んでいく。



結局、特に危険個所に出会うこともなく杣谷峠までやってきた。相変わらず、下山口の私有地が通行止なので長峰山より先には行けないとの注意書が貼られていることにモヤモヤを感じる。進入禁止地域にも入らず、危険個所も通らず、ここまで普通に登ってこれたのだ。



杣谷峠からは、六甲全山縦走路を通って、六甲山上に出てからアイスロードで下山していくことにする。後は大した登りもないので、呑気にいこうと思っていたが、三国池方面へと登り道が続く。長峰山登山の疲労のせいか思うほどに足が動かない。



山上には未だ残雪が見られる。随分と前に積もったものが溶けずに残っているようだ。六甲山上を貫く目ぬき通りにしては足跡も少ない。



六甲山上の交通の要衝、表六甲ドライブウェイの終点になる丁字ヶ辻にやってきた。数多くの観光施設がある六甲山上だけれど、今日は車の往来も少ない。



六甲山ハイカーのオアシスとも呼ばれる藤原商店。ビールやパンをはじめ、夏には冷えたソフトクリームやパイナップル、冬には肉まんといった具合に、ハイカーのニーズに応えた豊富な品揃えが有難い。



藤原商店の脇からアイスロードに入り、下山を開始する。神戸の街までスッキリと見通せる。空気はとても澄んでいるようだ。



木々は葉を落とし、山の斜面全体が白くなっている。何年か前、六甲山系の治山ダムのいくつかを対象にしたスタンプラリーがあったが、アイスロードのダムも対象になっていたはず。延々と登山路を歩いてスタンプひとつをゲットするような骨太なイベントが懐かしい。



1月にこの道を登ったときは、アチコチが凍り付いていたため、ビクビクしながら歩いたものだが、今日は凍結や残雪も見られない。



1月には完全凍結し、氷瀑と化していた小さな滝でも、今日は勢いよく水が流れている。アイスロードの途上、何度かある渡渉でも凍結を気にすることなく川の中の石を伝って歩いて行ける。



表六甲ドライブウェイの下を潜る薄気味悪いトンネルを抜ければ、アイスロードの終点は近い。



先日は立ち寄ることなく通り過ぎた六甲登山ロープウェイの廃墟を探索する。戦時中、金属類はすべて供出し、駅などのコンクリート構造物だけが残されたようだ。廃止後80年近くも、山中に眠っているこの廃墟も、ある意味で戦争遺跡のひとつだと言えそうだ。



アイスロードは表六甲ドライブウェイに突き当たるように、唐突に終点となる。歩行者通行禁止でもなければ、横断禁止でもないんだけれど、ドライバーはここで歩行者の存在などありえないと思っているのではなかろうか。ここで道を渡るのが怖いんだよなぁ…。



しばらく表六甲ドライブウェイの路側を歩かなればらないんだけれど、何とかハイキング道を渓谷沿いに作れないものだろうか。滝もあって一見いい感じなんだけれど、車窓から投げ捨てられたと思われるゴミが散乱しているのがとても残念だ。



本日の歩行軌跡。今日もヤマレコのマップだ。個人的には軌跡マップはYAMAPよりヤマレコの方が好きだけれど、両方作動させているとスマホのバッテリーがしんどそうだ。



この1年間カバーする山域が広いYAMAPに全幅の信頼を寄せてきたけれど、長峰山の通行止サインをどう理解すればいいのだろうか。類似機能を有するヤマレコとの併行使用はナンセンスだとは思うけれど、今回の歩行距離も8.4㎞(YAMAP)と9.0㎞(ヤマレコ)と無視しがたい差がある。しばらくはできる限り併行使用して両者を比較していきたい。

鍋蓋山(平野谷リベンジ)【六甲山系】

 2021年2月24日


3日前、道を誤って軟弱な地盤の急斜面で全身を蔓に絡まれ棘に刺され、進むことも退くこともできないという大ピンチに陥った平野谷。性懲りも無く、同じルートで鍋蓋山を目指すため、再び五宮神社にやってきた。



念のため、手元の六甲山系の地図は勿論、YAMAPに加えてヤマレコまでスマホにセットし、先日首や足に纏わりついてきた蔓に備えてナイフまで持ってきたぞ。まあ安全に正しい道を歩けばいいだけのことなんだけど。いつもにも増して緊張感をもって山に入っていく。



歩き始めて20分ほどで先日道を間違ったところまでやってきた。なんと迷い込んだ道の入口を塞ぐように木の枝が3本ほど置かれている。自分の足跡を見て、どなたかが設置してくれたのだろうか。色々な人に心配を掛けてしまったようで申し訳ない限りだ。



先日歩いていたのはこの崖のような急斜面の上だ。藪を掻き分けて少しでも安全に下りれるところまで頑張って進んで良かった。このあたりの崖を降りたなら無傷では済まなかった可能性が高かっただろう。



「落石注意」、「路肩注意」の看板がある。先日も藪を掻き分け山中の斜面を強行突破した際には、ボロボロと崩れる軟弱な地盤に怖い思いをさせられ続けた。



平野谷コースを30分ほど歩けば平野谷西尾根コースと二本松林道に合流する。どちらからでも鍋蓋山に向かうことができるが、比較的起伏の激しい西尾根コースを往路に選ぶ。谷道を離れ、ここからは笹が生い茂る尾根道を進むことになる。



道は半ば笹に覆われているけれど、危険個所もないし、息切れするような急坂もない。調子に乗って歩いて行けるが、大体トラブルはこんな時に発生するものだ。3日前のトラブルを思い出しながら、何度もGPSで道が間違っていないことを確認しながら進んでいく。



鍋蓋山が見えてきた。菊水山とか摩耶山とか、恰好いい名前が多い六甲山系のなかでは、かなりダサい名前を授かっている。西側からはちっとも鍋蓋には見えないのだけれど、南方から見れば鍋蓋の形状に似ているといえなくもない。



いくつもの登山路が交叉する七三峠とは、このあたりのようだが、何の標識も見当たらない。西六甲の要衝としてはちょっと寂しい…。



鍋蓋山頂に向けて登っていく。菊水山方面から登る六甲全山縦走路と比べると、鍋の蓋の上のように随分と緩やかな登り道に感じる。



山頂直前で広々とした六甲全山縦走路に合流する。1車線の村道から4車線の国道へと出てきたような気分だ。



標高486mの鍋蓋山からは、隣の菊水山から須磨の旗振山、鉢伏山に至るまでの六甲全山縦走の山々が一望できる。明石海峡の向こうには淡路島まで見通すことができる。



山頂碑には「トイレまで1800m」の標札が掲げられている。要するに菊水山の山頂までトイレは無い、ということだ。あと1時間くらい我慢しろということのようだ。



七三峠に戻るが、下山に予定していた二本松林道への道が災害復旧工事のため通行止になっている。やむなく猩々池から諏訪山へと迂回していくことにする。



が、猩々池へと向かう道で途中行き交ったハイカーから、二本松林道は通れるよ、との話を聞き、途中から二本松林道へと向かう。遠回りとはいえ、車も通れる平坦な道は快適そのものだ。



もっとも切り立った崖が多く、平野谷と同様に地盤は緩そうだ。路肩の崩落や崖からの落石が多発する道に感じる。



谷は深い。もし道が崩落すれば復旧にはかなり時間が掛かるのだろう。幸い崩落現場に出会うことなく二本松林道を通過できた。一旦猩々池へと向かったことで偶然にも回避できたのかもしれない。



二本松林道から平野谷西尾根ルートを下山するつもりでやってきたが、西尾根ルートの南側に向かう入口には「迷いやすく危険、他のルートを利用せよ」との注意看板が立っている。つい3日前にこの近くで道に迷っただけに、無理に危険ルートに突入できるはずもない。



結局、今や勝手知ったる平野谷を再び歩いて下山する。道を塞ぐ倒木を潜るのも、今週4回目になる。



3日前にはしっかりと立てられていたはずの、東尾根ルートへ向かう道(たぶん)の入口に掲げられていた「この道は通るな」の注意看板が破壊されていた。この3日間は強い風雨も無かったはずだけれど…。



平野谷を横目に見ながら下山していく。3日前に何事もなければ、さほど印象に残る山行ではなかっただろうが、危ない思いをした平野谷は永らく記憶に残る道になりそうだ。



3時間半ほどの山歩きを終えて、今日も無事下山のお礼を兼ねて五宮神社に再詣する。何年か前に一宮神社から八宮神社まで生田神社の八裔神を祀る8つの神社を巡るスタンプラリーに参加したが、今も開催中のようだ。



本日の歩行軌跡。ヤマレコのマップだ。歩行距離は8.2㎞。



平野谷(あわや遭難)【六甲山系】

 2021年2月21日


平野谷から鍋蓋山へと登ってみることにする。天気も良く、体調も悪くない。遭難寸前の大トラブルに見舞われることなど予想することもなく、何度かこのブログでも取り上げた五宮神社前の風見鶏風の案内標識に見送られて山へと入っていく。



神戸の街並みを横目に見下ろしながら、平野谷へと入っていく。難度の高い東尾根ルートのほかに、西尾根コースと谷ルートの3本の登山路があるが、今日は平野谷川沿いを歩く谷ルートを歩いていくことにする。川沿いなので大きく道を間違うこともなさそうだ。



人気はないけれど意外と歩きやすいとの評価が多い平野谷ルート。しかし、この道を忌避する人が多いのは、多数の廃バラックが道沿いに立っているからのようだ。バラック集落ができた経緯は知らないが、今では住む人の気配は感じられない。



バラックエリアを過ぎると、決して悪くない道が続く。ちょっと狭いところや、路肩の緩いとこなどもあるけれど、危険は感じない。



勾配も緩やかだ。藪で覆われたようなところもあるけれど、道はしっかりと続いている。



登山路としての整備はあまり行き届いていない。標識もないし、倒木はそのまま放置されている。でも、これくらいの荒れようなら、むしろ自然と触れ合いを楽しめるというものだ。



調子よく30分近く登り、レンガ造りの堰堤の残骸が現れたあたりで道を見失う。GPSで確かめると僅かに登山路より西にずれたところにいるようだ。



ここで、戻って道を確かめれば良かったのだけれど、分岐点はなかったと思い込んだのが大きな間違い。この程度ならGPSの誤差ということもあろうと考え、荒れた坂を攀じ登っていくが、この後、坂の勾配がどんどん急なものになっていく。





その後は写真など撮る余裕もない山中徘徊となる。(ちなみに下記地図の横幅は150mほど、等高線幅は10m。ごく狭いエリアで1時間近くも藻掻き苦しんだことになる)

❶ 緩い地盤に苦労しながら時に四つん這いになりながら急坂を攀じ登るが、正しいルート(赤線)からはどんどん離れていく。登るのはいいけれど、下るのはとても怖いところまで来てしまった。12年前の滑落事故のときと酷似した状況だと思いつき、足が竦んでくる。

❷ いっそ西側の西尾根ルートまで坂を登り切ろうと進むが、急坂と藪のため進むことを断念する。あと50mというのに。

❸ やむなく藪を掻き分けながら斜面を北にトラバースしていくが、首や足に蔦が絡まり身動きが取れなくなることが続く。そのうえに鋭い棘を持つ植物にも難儀する。地盤は柔らかく足元の崩壊に怯えながらも、崖のような坂を下るよりマシと考えて進んでいく。

❹ ついに先へと進めなくなり、最終手段を講じるしなかなくなる。30mで20m近く下るという急坂を滑るように下りる。



ズボンやリュックは泥だらけになったけれど、怪我することもなく本来の登山道へと戻ってくることができた。YAMAPのおかげで大きく方向を間違わずに済んだとはいえ、おかしいと思ったら戻るという鉄則を守らなかったことによる代償は大きい。



鍋蓋山へ歩いていく体力はあるのだけれど、気力は全く失せてしまった。それに鍋蓋山に登るより、どこで道を間違えたのかを知りたい気持ちが圧倒的に強い。道を塞ぐ倒木に腰を掛けてリュックやズボンの泥を落とし、下山を決断する。



ミドルカットの登山靴には、驚くほどの土砂や落ち葉などが入り込んでいた。足首まで埋まるような軟弱な地盤を進んできたのだ。



難路と言われる東尾根道に繋がると思われる分岐点には、通行禁止の看板が立てられている。誤って迷い込んだ道には何の注意標識も無かったように思える。



倒木や木の枝を並べて、右側の道へと誘導するような工夫も施されている。試しに少しだけ左側の道を歩いてみたけれど、かなり危なっかしい道が続いているようだ。



10分ほど歩いて、道を誤ったポイントに戻ってきた。写真手前方向から歩いてきて左側へと進んだのが間違い。右側へと折れていくのが正しい道だ。



細いとはいえ、こんな道を見逃していたことはショックだ。それに地図をよく見ていれば、登山道はここで右に90度曲がっていることが事前に判るはず。地図を確認することなく道なりにドンドン進んでしまったようだ。



登ってきた道をそのまま下り、立派な楠がある五宮神社に戻ってきた。無事下山できたのは、登山前にここにお詣りしたご利益かもしれない。あらためて五宮神社にお礼のお詣りをする。お賽銭もちょっとはずんだ。



本日の歩行軌跡。歩行距離はたったの3㎞。山は怖い。10m進むのに10分かかることもある。でも、いずれ近いうちにリベンジしたい。もちろん安全第一を忘れずに。



YAMAPの歩行軌跡にあるコーヒーカップマーク。本来休憩の記録なのだけれど、今日の場合は、急坂の上でどちらに進むかを悩んだり、蔦に足を取られて身動きできなくったりの悪戦苦闘の記録だ。



様々なトラブルで山歩きを途中で中止することは珍しいことではない。そんなときはブログへの掲載は原則しないのだけれど、今回は自分への強い戒めのためにも恥を忍んでこの危険極まりない山行記録を残しておく。