2021年2月21日
平野谷から鍋蓋山へと登ってみることにする。天気も良く、体調も悪くない。遭難寸前の大トラブルに見舞われることなど予想することもなく、何度かこのブログでも取り上げた五宮神社前の風見鶏風の案内標識に見送られて山へと入っていく。
神戸の街並みを横目に見下ろしながら、平野谷へと入っていく。難度の高い東尾根ルートのほかに、西尾根コースと谷ルートの3本の登山路があるが、今日は平野谷川沿いを歩く谷ルートを歩いていくことにする。川沿いなので大きく道を間違うこともなさそうだ。
人気はないけれど意外と歩きやすいとの評価が多い平野谷ルート。しかし、この道を忌避する人が多いのは、多数の廃バラックが道沿いに立っているからのようだ。バラック集落ができた経緯は知らないが、今では住む人の気配は感じられない。
バラックエリアを過ぎると、決して悪くない道が続く。ちょっと狭いところや、路肩の緩いとこなどもあるけれど、危険は感じない。
勾配も緩やかだ。藪で覆われたようなところもあるけれど、道はしっかりと続いている。
登山路としての整備はあまり行き届いていない。標識もないし、倒木はそのまま放置されている。でも、これくらいの荒れようなら、むしろ自然と触れ合いを楽しめるというものだ。
調子よく30分近く登り、レンガ造りの堰堤の残骸が現れたあたりで道を見失う。GPSで確かめると僅かに登山路より西にずれたところにいるようだ。
ここで、戻って道を確かめれば良かったのだけれど、分岐点はなかったと思い込んだのが大きな間違い。この程度ならGPSの誤差ということもあろうと考え、荒れた坂を攀じ登っていくが、この後、坂の勾配がどんどん急なものになっていく。
その後は写真など撮る余裕もない山中徘徊となる。(ちなみに下記地図の横幅は150mほど、等高線幅は10m。ごく狭いエリアで1時間近くも藻掻き苦しんだことになる)
❶ 緩い地盤に苦労しながら時に四つん這いになりながら急坂を攀じ登るが、正しいルート(赤線)からはどんどん離れていく。登るのはいいけれど、下るのはとても怖いところまで来てしまった。12年前の滑落事故のときと酷似した状況だと思いつき、足が竦んでくる。
❷ いっそ西側の西尾根ルートまで坂を登り切ろうと進むが、急坂と藪のため進むことを断念する。あと50mというのに。
❸ やむなく藪を掻き分けながら斜面を北にトラバースしていくが、首や足に蔦が絡まり身動きが取れなくなることが続く。そのうえに鋭い棘を持つ植物にも難儀する。地盤は柔らかく足元の崩壊に怯えながらも、崖のような坂を下るよりマシと考えて進んでいく。
❹ ついに先へと進めなくなり、最終手段を講じるしなかなくなる。30mで20m近く下るという急坂を滑るように下りる。
ズボンやリュックは泥だらけになったけれど、怪我することもなく本来の登山道へと戻ってくることができた。YAMAPのおかげで大きく方向を間違わずに済んだとはいえ、おかしいと思ったら戻るという鉄則を守らなかったことによる代償は大きい。
鍋蓋山へ歩いていく体力はあるのだけれど、気力は全く失せてしまった。それに鍋蓋山に登るより、どこで道を間違えたのかを知りたい気持ちが圧倒的に強い。道を塞ぐ倒木に腰を掛けてリュックやズボンの泥を落とし、下山を決断する。
難路と言われる東尾根道に繋がると思われる分岐点には、通行禁止の看板が立てられている。誤って迷い込んだ道には何の注意標識も無かったように思える。
倒木や木の枝を並べて、右側の道へと誘導するような工夫も施されている。試しに少しだけ左側の道を歩いてみたけれど、かなり危なっかしい道が続いているようだ。
10分ほど歩いて、道を誤ったポイントに戻ってきた。写真手前方向から歩いてきて左側へと進んだのが間違い。右側へと折れていくのが正しい道だ。
細いとはいえ、こんな道を見逃していたことはショックだ。それに地図をよく見ていれば、登山道はここで右に90度曲がっていることが事前に判るはず。地図を確認することなく道なりにドンドン進んでしまったようだ。
登ってきた道をそのまま下り、立派な楠がある五宮神社に戻ってきた。無事下山できたのは、登山前にここにお詣りしたご利益かもしれない。あらためて五宮神社にお礼のお詣りをする。お賽銭もちょっとはずんだ。
本日の歩行軌跡。歩行距離はたったの3㎞。山は怖い。10m進むのに10分かかることもある。でも、いずれ近いうちにリベンジしたい。もちろん安全第一を忘れずに。
YAMAPの歩行軌跡にあるコーヒーカップマーク。本来休憩の記録なのだけれど、今日の場合は、急坂の上でどちらに進むかを悩んだり、蔦に足を取られて身動きできなくったりの悪戦苦闘の記録だ。
様々なトラブルで山歩きを途中で中止することは珍しいことではない。そんなときはブログへの掲載は原則しないのだけれど、今回は自分への強い戒めのためにも恥を忍んでこの危険極まりない山行記録を残しておく。