樽見大桜(養父市)

 2022年4月10日 ①


樽見の大桜(養父市)に出掛ける。国の天然記念物になっている樹齢1000年を超すというエドヒガンの老桜がまさに満開だという。



朝来山に登る前の準備運動のつもりでやってきた登山口にはお助け杖と並んでアルコール消毒液が置かれている。ソーシャルディスタンスやマスク着用を促す大きな看板も立っている。それもそのはず、朝早くの人里離れた山中だというのに、既に驚くほど混雑している。



いきなり登山モードの道が続く。それもそのはず、この道は御祓山へと登る道なのだ。ついでに兵庫百名山にも名を連ねる御祓山まで登ろうかと思って調べたのだけれど、かなり荒れた道を3時間も登らなければならない。花見のついでに登る山ではなさそうだ。



早々に足腰の痛みを感じる。間違いなく昨日のゴルフの疲れが残っている。登山で生じる痛みや疲れとは全く別の部位だ。コロナ禍でプレイ頻度が激減。酷いスコアを叩くのは当然だけれど、以前の倍ほども疲れるようになった。



石垣が数多く見られる。城郭など建物を支えるものとは異なる非常に素朴なものだ。案内板によるとこれらの石垣は養蚕のための桑畑の跡なんだそうだ。昭和初期には山の中まで切り開いて桑を植えるほど隆盛を極めた養蚕もその後衰退して杉や檜に植え替えられたそうだ。



こんな鬱蒼とした杉林の奥に桜の巨木があるのだろうか、と思っていたところで急に視界が広がり、白っぽい花を付けた桜の木々が目に飛び込んできた。



登山口から10分ほどで樽見の大桜がついに現れた。樹高13.8m、幹回りは6.3mもあるというが、傘状に広がった枝を含めた樹幅は40〜50mくらいもありそうだ。



エドヒガン(江戸彼岸)は、江戸時代に品種改良で登場したものかと思っていたけれど、この木は樹齢1000年以上だという。俗界を離れた山中で悠久の時を生き続ける姿は、仙人ならぬ「仙桜」の名に相応しい。



しかし近年さしもの仙桜も樹勢の衰えが顕著だという。太い幹の内部は空洞で、自らの枝を支えることさえ困難になってきているらしい。鉄製のジャングルジムで仙桜を支え、樹勢回復が進められている。



桜の周囲には柵が設けられていて、根元まで近寄ることはできない。根元が踏み固められると根が枯死する可能性があるらしい。また食害防止のために鹿を近づけないためでもあるらしい。



根元までは近づけないけれど、花に触れることさえできそうなところまで枝は拡がっている。少し葉が見えているので、満開をほんの少し過ぎたところだろう。これほどの桜を間近に見ることができることに大満足だ。



何より、今日は雲ひとつ見られないような絶好の晴天だ。青い空、そして緑の山々が背景になると、桜の花がなお一層映える。



角度を変えてみれば、老いた樹木を無理やり何十本もの鉄骨で辛うじて支えているかのようにも見えるけれど、樹木医や植物研究者も参加しての懸命な治療が行われているそうだ。頑張れ、仙桜。



周囲には桜の木が何本も花を咲かせている。いずれも見事なものだけれど、仙桜の前では添え物のような扱いだ。ちょっと気の毒にも思えてくる。



仙桜の回りを何周も歩いて、何十枚もの写真を撮る。(何十枚も撮ったなかから選らんだにしては大した写真が無いのが恥ずかしいが…) 名残惜しいけれど、仙桜を後にして、朝来山の登山口へと向かうことにする。



周囲にはミツマタが群生している。これまた仙桜の添え物のようにも見えるけれど、ひょっとしたらとても重要な役割を担っているのかもしれない。草でも樹皮でも何でも食べ散らかすように見える鹿が嫌悪する数少ない植物のひとつがミツマタだという。



スタートしてから再び登山口に戻るまで、わずか40分ほどの短い山歩きだったけれど、これは準備運動のようなもの。この後立雲峡に移動し、朝来山登頂を目指す。(②に続く)