坂越アルプス縦走

 2022年4月15日


赤穂市の坂越湾を取り囲む坂越アルプスとも呼ばれる連山の縦走に出掛ける。一日に2本しかバスに乗って相生との市境に近い小島という小さな漁村までやってきた。集落の路地に「小島〜坂越遊歩道登山口」の案内標識が立っている。



小島坂越遊歩道で5山、続く坂越尾崎遊歩道で7山、低山とはいえ予定通り歩ければ合わせて12山の縦走となるタフなコースだ。それにしても芦屋の前山遊歩道の例もあるけれど、このレベルの登山道に「遊歩道」と名付けるのはいかがなものかと思う。



スタートして10分で、本日最初のピークにやってきた。みかんのへた山(79m)というふざけたような名前を持つ山だが、実は古墳(円墳)らしい。坂越湾に浮ぶ鍋島などがよく見えるはずだけれど靄っている。雲も多いけれど、天気はもつのだろうか…。



これから向かう山々が見渡せる。写真右側に隠れている5山を制覇し、その後坂越湾に突き出した向こう側の山々まで歩いていく予定なんだけれど随分遠く見える。



発電所の境界柵に沿って急坂を登っていく。前日の雨のせいで少々道は緩んでいる。以前に2回ここを下ったけれど、今日は逆向きコースなので登りになる。もっと緩い坂だと記憶していたけれど、登りで歩くと結構しんどい坂だと感じる。



幸いちょっとした小雨はその後降りやみ、坂を登ったり下ったりを繰り返して坪江山(246m)までやってきた。もっとも現地の山頂標識には大谷山(240m)と記載されていて、小さく坪江山と添え書きされている。



縦走路から寄り道をして高伏山を目指す。YAMAPの標準時間では片道25分とはいえ、結構遠く見えるし一旦下ってまた登ってまた同じ道を戻ってくるというのは邪魔くさいなぁ…などと思いながらも坪江山からの急坂をまずは下っていく。



高伏山(280m)までリボンに導かれながらやってきたけれど、山頂がどこかよく判らない。ウロウロしているうちにリボンを見失い、道らしきものがない林のなかをさらにウロウロさせられる。



あまり満足感は得られない山だったけれど高伏山を予定通り制覇し、再び坪江山に戻り、様々なツツジが咲く縦走路を西へと進む。ピンク色のミツバツツジが多く、赤いヤマツツジも見られるけれど、どうしてもこの地域に多い白くて可愛いドウダンツツジが気になる。



宝珠山(181m)。山の中腹にある妙顕寺の寺域になるのか、山頂付近の道には四国八十八ヶ所に擬えた88体の石仏が置かれている。



木々の隙間から坂越浦やその向こうの播州灘に浮かぶ島々がよく見通せる。ところがこの後、雲が空を覆い、弱い雨が降り始める。まだ先は長いというのに大丈夫かぁ…。



茶臼山(166m)。かつては山名氏が城郭を構えていたらしいけれど、それっぽい遺構は見当たらない。その代わりでもないけれど、頂上には国旗掲揚ポールのようなものが立っている。旗を上げれば坂越の町からでも見上げることができるように思える。



天気はすぐれず、山歩きは坂越で中止と決めて観光モードに切り替える。南朝の忠臣、児島高徳の墓所がある。太平記での高徳の振る舞いは超カッコよく、かつては唱歌や紙幣にも採用された国民的ヒーローだったというのに今では知る人も少ない。それどころか実在の人物ではないとの説まであるらしい。



船岡園と呼ばれる妙見寺・大避神社一帯の公園には桜の木が多い。既にほとんど落花しているけれど、そのせいでピンク色の花びらの絨毯のような道ができあがっている。とても贅沢な気分に浸りながら坂越の町に下っていく。



坂越は天然の良港として瀬戸内廻船や北前船などの拠点として古くから栄えた町で、往時の茶屋や商家が残されている。古民家を改造したカフェなども増え、ブラブラ歩きの観光には打ってつけだ。海岸のキッチンワゴンでトルティーヤを購入し、のんびりと昼食を取る。



坂越で終わりのつもりだったのに雨はあがってしまった。ちょっと悩んだけれど、予定通り坂越尾崎遊歩道を進み赤穂まで歩くことにする。遊歩道と名付けられてはいるけれど、ここも呑気に歩ける道ではない。しかも休憩でクールダウンした足腰は思うように動かない。



まずは縦走路から少し入ったところにある八祖山(90m)。これがとんでもない悪路。雨露に濡れた藪漕ぎは辛い。苦労して登った山頂は眺望もなく、山頂碑もない。しかもどこを登ってきたのかも判らなくなり帰路では道迷い。典型的な「登らんでもいい山」だった。



また雨が降り出した。雨雲レーダーを確かめると、離散的な雨雲が赤穂周辺に出現したり消滅したりを繰り返している。さほどの雨量になるとは思えないけれど厄介なことだ。坂越で止めなかったのはミスったかと思ったけれど、引き返す気にもなれず、そのまま進む。



西山(151m)を制覇し、次は亀甲山。意外に近そう、と思って雨のなかを進んで行くけれど、2度も偽ピーク(山頂に見えるけれど山頂ではない)に騙された。



亀甲山(206m)。有難いことに、坂越尾崎遊歩道にはベンチも多く、山頂ごとに屋根付きの休憩所がある。雨脚が弱まるまで屋根の下で休憩することを繰り返す。



南宮山(192m)へと向かう道の脇には堤のような土盛りが延々と続いている。元禄8年、坂越村と尾崎村の住民が、薪や落ち葉(肥料になるそうだ)を巡って境界争いをした結果にできあがったものだという。松の廊下事件で赤穂藩がひっくり返る数年前のことだ。



丸山(209m)。相変わらず雨はショボショボ降っている。ここの東屋は倒壊の恐れありとのことで立入禁止になっていて、やむなく屋根のないベンチで休む。かなり疲れが溜まってきて、雨宿りするより、単純に座り込みたくなってきた。



向山(197m)。海は未だ靄っているけれど、ようやく雨は完全にあがったようだ。坂越アルプスの山はこれが最後。ここまで11の山を制覇してきたけれど、あと一つ踏んでおきたいピークが残っている。



スタートポイントは写真やや左に見える白い煙突の下あたり。結構な距離を歩いてきたなぁ、とは思うけれど、一旦観光モードになったり、雨降りでモチベーションダウンしたこともあってか、想定タイムよりも随分と遅れをとっている。



向山から下山し、一般道を延々と歩いて赤穂海浜公園の西端まで歩いてきた。砂浜の正面に見えるのが唐船山。実はこれが兵庫県で最も低い山だという。どうせ大阪の天保山か堺の蘇鉄山みたいな超々低山だろうと思っていたけれど、海岸にせり出したそこそこの岩山だ。



ちょっと岩を攀じ登って唐船山登頂。標高は15m。といっても、ビルの5階相当だから、天気が良ければなかなかの眺望ポイントに違いない。かつて難破した中国の船に土砂が積もってできた山と言われるそうだけれど、それは無いだろう。



いやはや疲れた。播州赤穂駅まで歩いていくつもりだったけれど、途中の赤穂高校前バス停から堪らずバスに乗ってしまった。歩行距離16.4㎞、獲得標高1080m、所要時間は9時間弱にもなってしまった。