甲州街道(1)日本橋〜仙川

 2022年12月9日


3年越しの旧東海道完歩を成し遂げてから半年、再び江戸日本橋に戻ってきた。今回のターゲットは甲州街道。まずは甲府、その後甲州裏街道を経て諏訪に入り、中山道で京都に向かうという皮算用だが、果たしてどうなることやら…。



ガイドブックも購入し、準備万端。と言いたいところだけれど、土地勘もなく、この先どうなることやら判らない。もとは中山道を考えていただのだけれど、鉄道に併行していない佐久〜諏訪間を歩くことに不安が大きく、諏訪までは甲州街道を行くことにしたのだ。



日本橋出発は10時半。いつもはスーツ姿で歩いている大手町・丸の内をラフな格好でリュックを背負って歩いていくが、誰かに会いそうな気がしてどうも落ち着かない。



日比谷通りから内堀通りへと、皇居のお堀に沿って進んでいく。実のところ、何度か歩いたお堀沿いの道よりも、未だ殆ど立ち入ったことがない皇居の外苑とか東御苑とかが気になるんだけれど、今日は愚直に甲州街道の地図に沿って歩くことにしよう。



国会議事堂。イチョウ並木が見事に色づいている。皇居周辺だけでも、一日かけて散策するには十分すぎるほど見どころは多そうだ。



皇居を半周して半蔵門にやってきた。江戸城が危機に陥った際の脱出口としてかつては服部半蔵が守備していたと伝わるが、今では警察関係車両が多数駐留している。



半蔵門から真っすぐ西に延びるのが国道20号線。これがかつての甲州街道となる。江戸城を脱出した将軍は、八王子千人同心に守られ、直轄地でもある要衝の甲府を目指すというシナリオだったらしい。



麹町を過ぎ、四谷4丁目に四谷大木戸門跡の碑が立っている。江戸の出入りを見張るための関所のようなものだ。要するに四谷より西は江戸の外、ということになっていたようだ。



新宿御苑の門前に内藤新宿開設300周年のパネルが設置されている。もともと甲州街道の最初の宿場は高井戸だったが、ちと遠すぎたのでここに宿場町を新たに設置したという。新しい宿場だから「新宿」なのだ。



新宿に近づくにつれて「甲州街道」の文字が道路標識に多く目につくようになってきた。今でも国道20号というより甲州街道という名を用いる人が多いようだ。古くて新しい道といえるだろう。



新宿駅南口を通過が13時。中央線快速に乗れば15分の東京・新宿間に2時間半も要してしまった。



とにかく人が多すぎるのだ。それに信号待ちばかり…。思ったように歩けない。しかも、どうしたことか歩いた距離以上に疲れが溜まる。都心からの脱出は容易ではない…。



初台あたりまで来ると少しは落ち着いてきた。といってもまだまだ都心。国道の歩道歩きにもウンザリしてきて、気分転換に玉川上水跡の遊歩道を少し歩く。玉川上水の下流部のほとんどは暗渠化してしまったらしい。



再び国道20号線歩きとなるが、国道のうえに首都高速が覆いかぶさっていて、気分のいい道ではない。右は首都高、左は高いビルに挟まれ、まるで深い峡谷のなかを進んでいるようだ。



環状7号線との交差点。道路上の青いマークは自転車の進行路を示している。自転車は歩行者扱いにしているところが大半だと思うけれど、歩行者も自転車も多すぎるのだろう。ここでは自転車は車道の端を走るように指導されている。




おそらく玉川上水の一部ではなかろうか。下流部でも、少しではあるけれど、今も水路が確認できるところが残っているようだ。



細い路地の交通標識は通常の半分くらいのサイズだ。大きすぎると邪魔になるだけ、ということなんだろうけれど、関西ではこんな小さなサイズのものを見たことがない。



甲州街道といえば、ケヤキの並木が有名で、楽しみにしていたのだけれど、道幅ほぼ一杯に立つ高速道路のおかげで、広く見渡すことができない。もっとも高い木だけに、高速道路やマンションのベランダからなら、いい景色が広がっているのかもしれない。



歩き始めて5時間でようやく高井戸宿。下高井戸と上高井戸の2つで半月交代で宿場を営む合宿(ごうしゅく)だ。江戸に近くあまり利用されない宿場町だったようだ。この辺りに本陣があったとガイドブックには紹介されているのだけれど、なんの案内板もない。



中央区、千代田区、新宿区、渋谷区、杉並区、世田谷区と歩いてきたけれど、街頭消火器の多さには驚かされる。大阪や神戸とは随分と違う。関東大震災や東京大空襲から選られた教訓なのだろうか。



下高井戸一里塚跡の案内板。都心部だけあって、旧街道の遺物を期待するのは難しいことは理解している。ここに一里塚があった、という案内があるだけでもヨシとしなければとは思うけれど、やはりチョット寂しい。



環状八号線との交差点。テレビを見ていると、誰もが知っていて当然のようにカンパチと略されて紹介されているけれど、ここがそうなのかぁ…。別に何ということもない、ただの広い道路だけれど、ちょっと気分が高まってしまう。



5時頃にはもう真っ暗だ。関西より20分ほどは日没が早い。足も痛いし、気持ちも切れそうだけれど、とにかくせめて23区の外に出たいという一心で進んでいく。



調布市の東端、仙川で今日はおしまい。あまり見どころもなく、退屈で辛いウォーキングだったけれど、それは元より覚悟していたところ。西に進むにつれて街道歩きならではの楽しさも増してくると期待したい。



歩行距離22.7㎞、総所要時間6時間40分。ああ疲れた…。明日歩けるだろうか。