竜王山・阿武山(茨木市)

 2022年12月1日


10年前、茨木市の隠れキリシタンの里を巡る自然歩道を歩いたものの新名神高速建設工事のため迂回ばかりを余儀なくされたことにガッカリした。今日は大阪50山にも数えられる竜王山と阿武山を中心に、久しぶりの茨木市内の自然歩道を歩いてみることにしよう。



竜王山の山麓にある忍頂寺のバス停がスタート地点。JR茨木駅から560円もかかっただけあって手元の高度計では既に標高310m、竜王山との標高差は200mしかない。ちょっと楽な登山になりすぎたかも、と思いつつ、落ち葉が積もる整備された道を登っていく。



東海自然歩道を歩いて竜王山に向かうつもりだったのに、しばらく歩くと舗装道に出てきた。ポンポン山周辺でもそうだったけれど、大阪府内の東海自然歩道って舗装道が多いようだ。都市部に近いだけに仕方ないとも思うけれど、ちょっと残念だ。



竜王山には七不思議というものがあるらしい。この岩刀山もそのひとつ。岩の裂け目から薬師如来が伝えられている。



宝池寺までやってくると竜王山は間もなくのはず。「ここで止めてお茶して帰るか、もう少し苦労して景観を楽しむか、あなた次第」なんて挑発的なメッセージが現れる。当然「進む」の一択だ。



続いては「山の掟」なるものが現れた。ゴミを棄てたら「町内引き回しのうえ打ち首獄門」とのこと。ゴミのポイ捨てで10万円ほどの罰金を科せられるシンガポールも真っ青の厳しい掟だ。



竜王山への最後の登りもさほど厳しくない勾配。落ち葉をサクサクを踏みしめながら頂上を目指す。



忍頂寺バス停から歩いて30分ほどで山頂(520m)到着。木々に囲まれて眺望はない。どうやら3階建の立派な展望台に登らないと景観は楽しめないようだ。



天気のせいか、眺望はイマイチ。空全体がどんよりとしている。奥に見える高い山は金剛山だろうか。



展望台のベンチでひと休みした後、落ち葉の積もる道を東南に下山して阿武山に向かう。あまり考えずに進んだのだけれど、これは失敗。北東方向に下山して穴仏や岩屋などの竜王山の不思議に立ち寄るべきだった。



車作という長閑な集落に下山。かつてこの地の名産である良質のケヤキを材料にして製作した御所車を都に献上していたらしい。



茨木市の東部を南北に流れる安威川を渡る。この辺りは竜仙峡と呼ばれているところで、夏には川遊びやバーベキューを楽しむ人が多く訪れるところらしい。



竜仙峡を過ぎ、再び舗装道が続く。これも東海自然道。確かに自然のなかの道だし車の通行量もごく少ないけれど、ウォーキングよりサイクリングに適した道のように思える。



興覚めなのは、舗装道であることよりも、路側に立ち並ぶ不法投棄、ポイ捨て、木の伐採、山芋の盗掘などを戒める看板が随分と多いこと。不道徳な行為に業を煮やす行政や地域住民の怒りはもっともだけれど、なんだか歩いているだけで申し訳ないような気になる…。



それにしても標高200m超だというのに、驚くほどフラットな道が3㎞ほども続く。歩きやすいとはいえ、厄介なことに竜王山の展望台以降、ベンチどころか、腰を下ろすのに適当な岩や切株さえ見当たらない。それに昼食を摂るには、あまりに殺風景で落ち着かない道だ。



武士(もののふ)自然歩道に合流し、ようや山道となる。戦国武将が行き交った道と茨木市のパンフレットには説明されているのだけれど、誰のことなのか。三好長慶?、高山右近?、それとも明智光秀?



ところが武士自然歩道も間もなくバス道に合流。大きな変電所などがあって、もはや自然歩道とは呼びにくい道を進んでいくと、阿武山口というバス停が現れた。どうやらここから再び山道へと入るようだ。



しばらくは車も通るような広い砂利道が続き、さらに広大な造成地が現れた。プレハブや車両も長らく放置されたものに見える。頓挫したニュータウンだろうか。でも嬉しいことに放置されたコンクリートブロックに腰かけて、ようやく遅い昼食にありつくことができた。



軽い昼食休憩の後、あらためて武士自然歩道を阿武山に向かって進んでいく。なんとも寂しい道が続く。



さほどの登り坂もないまま、阿武山(281m)の頂上に到着。登ってきた道の寂しさからは考えられないほど整備された山頂だ。二体の謎めいた木彫りの人形が山頂碑の上に設置されており、ベンチの数も随分多い。かなり手の込んだ山頂広場になっている。



山頂から見える街並みはどうやら高槻の中心部のようだ。駅前の高層ビルが確認できる。ということは、手前の小山は三島古墳群を形成するいくつかの古墳だろうか。



北から登ってきた阿武山を南へと下る。北の登山道とはうってかわり、南の登山道は整備が行き届いている。ベンチの数も随分と多い。山の南側が住宅地だから当然といえば当然なのだが、おそらく毎日のようにこの山に登っている住民も多いに違いない。



登山道を少し外れて阿武山古墳に立ち寄る。案内には「貴人の墓」とあるが、副葬品が当時の最高位の冠だったことから藤原鎌足の墓との説も有力らしい。相当な貴人の墓であることに疑いの余地はないようで、山の中だというのに、墓所には整然と石畳が敷かれている。



最後は阿武山からテクテク下山して塚原口バス停より帰路につく。イマイチ満足感の低い山行だった。竜仙の滝とか穴仏とか、今日見逃した名所を巡るべく、近いうちにコースを変えて歩いてみたい。



距離11.9㎞、所要時間は約5時間。獲得標高(上り)が590mなのに対して、(下り)は880m。山登りというよりも山下りと言った方が良いような山歩きだった。