2023年5月31日
神戸電鉄木幡駅を10時半にスタートし、シブレ山へと向かう。細かな雨が降り続いているけれど午後には上がるとの予報だ。シブレ山から似た名前のシビレ山、そして丹生山を縦走する予定だけれど、雨の次第ではシブレ山だけ登って帰ることにしよう。
立入禁止(ただしハイカーは可)と書かれた登山口から、しばらくは林のなかの簡易舗装の道が続く。簡易舗装が途切れるのがシブレ池という溜め池だ。シブレというのはこの辺りの方言で「湿地」とのことだけれど、そんな方言は聞いたことが無い。
シブレ池を過ぎると、鬱蒼とした雑木林を掻き分けながら進む道となる。雨よりも草木に付いた水滴が体に降りかかるのが厄介だ。勾配も緩やかなものでなく、こんな天気の日に山にやってきたことを後悔しはじめる。
登山道には手製の地図や案内標識が立っている。集落に近い山らしく枝道が多いけれど、こうした地図があるととても安心するし、他所からやってきたハイカーを歓迎してくれているように思えて嬉しくもなる。
ここは神戸市が50年も前に整備した「太陽と緑の道」のコース。でも近年メンテナンスもされず、地図は曖昧だし、難易度もバラバラ。全30コースほどのうち3割ほどは通行止になっている始末。最近神戸市が道のパトロールや魅力向上に取り組む人材を募集し始めたようだ。改善を期待したい。
そこそこの雨が降ったり止んだり。雨宿りを兼ねて急勾配に喘ぐ息を整えながら、登っていく。この天気ではシブレ山だけで下山するしかないな、と考えながら、行動食を爆食い、飲料水をがぶ飲みしながら進むと、ようやく頂上付近のアンテナ塔が見えてきた。
シブレ山(347m)山頂に到着。まあ、判ってはいたことだけれど、眺望もベンチも無い、素っ気ない頂上だ。長居するようなトコでもないので、さっさと下山しよう。
大きなアンテナ(たぶんDOCOMOの通信塔)の建設の際に作られたものだろう。衝原湖方面への道は車両も走れるように拡幅されているので、楽チン下山だ。
六甲国際ゴルフ倶楽部が少し覗ける。確か来週には女子プロのトーナメントが開催されるはず。ここからなら無料でプレイを覗き見できるのでは、なんてことを考える。(でも、たぶんギャラリーが多くて何も見えないんだろう)
衝原(つくはら)湖までやってきた。周囲9㎞とも言われる巨大なダム湖でサイクリングロードなども整備されている。ビワイチに対抗してツクイチと呼ばれるウォーキングを楽しむ人も多いらしいけど、交通の便が超悪いところなのだ。
神戸市に3つ(4つ?)あると言われるBE KOBEのモニュメントが衝原湖岸にある。BE KOBEの意味を語れる神戸市民も少ないように思うけれど、メリケンパーク、ポーアイに続く3つ目がこの辺鄙な場所に作られていることを知る人も少ないのではなかろうか。
天気も良くなってきたし、最寄りの駅やバス停も結構遠い。それなら予定どおりシビレ山に向かう方がいいのでは、と考えて、湖北岸のちょっと寂し気な登山口から入山する。しかし問題は水。1.8L持っていた水のうち1L近くは既に飲み干しているのだ。
登山道の序盤はシビレ山からの渓流に沿って進む。雨上がりのせいで増水しているようで、厄介な渡渉を10回以上も繰り返して登っていく。路面も緩んだところが多く、シューズやズボンの裾は僅かな間に泥だらけになる。
苔蒸した岩が多くて滑りやすい。想定外の難路に息が上がり、水が飲みたくなる。いざとなればこの水を飲めばいい、と言いたいところだけれど、シビレ山は辰砂と呼ばれる硫化水銀を採掘していたところだ。シビレとは水銀中毒のことに他ならない。
ところどころに赤っぽい岩石が露出している。これが辰砂なのだろうか。とにかくこの山の水だけは飲むわけにはいかない。
シビレ山に向けて結構な急坂が続く。天候が回復して日射も強くなってきたけれど、周囲は笹などの低木ばかりで日を遮るものもない。体は水分を求めるけれど、残る水を少しずつ口に含むことで我慢する。しかし水分不足は経験上かなりの確率で足を攣ることに繋がる。
息を切らして頑張って登るよりも、汗や呼吸による水分の排出を最小化するためにも、十分に休憩をしながら、ゆっくりゆっくり進んでいく方がいいと判断する。これって正しい判断なのだろうか。
シビレ山(465m)山頂。まあ何もないトコだとは判っていたけど、以前登ってきたときにはもう少し大きな山頂碑があったように記憶している。
シビレ山からも急勾配は続く。以前近道だと思ってコウモリ谷へ向かう下山道に向かったところ、超急勾配の難路で身が縮む思いで下山したことを思い出す。朝日山、丹生山とより高い山に縦走することになるけれど、知った道を無難に進む方が良いところだ。
朝日山(512m)。山頂を迂回することもできたんだけど、手近なピークは獲らずにはおれない性格になってきた。以前はこんなことは無かったんだけど、YAMAPを始めて獲得ピークが記録されるようになってからは、ちょっとしたピークハンターになってしまった。
丹生神社に近づくにつれて、かなり人の手が入った杉林になってきた。少し頑張れば西帝釈山、帝釈山の山頂まで行けるんだけれど、かなり疲れも感じ始めたので、さすがに自重する。水は残り200mlくらい。一気に飲み干してしまいたいのを我慢する。
丹生山(515m)山頂に立つ丹生神社。源義経が鵯越に向かう際にここを通過したとか、南北朝騒乱の際に新田軍が立て籠ったとか、色々な話は聞くんだけれど、ほとんど説明板もない。
神社は無住のようだけれど、何故か拝殿の周囲にはミツバチの養蜂箱がいくつも設置されている。社務所の前にあるのは、間違いなく土俵だ。奉納相撲でも行われていたのだろうか。急いでも予定していたバスには乗れそうにないので、ゆっくりと境内を観察する。
丹生神社から衝原バス停まで1時間以上はかかるけれど、もはやダラダラと下るだけのはずだ。残っていた水を一気に飲み干し、甕割り柴田のような気分?になって、下山する。
衝原まで下山してようやく自販機に遭遇。冷たい水が体中に染みわたる。バスの始発となる衝原から終着駅の箕谷までの全バス停をスルー。他に乗客のいない完全貸し切りバスだった。ただでも交通の便が悪いところなのに、さらなるバス減便が不安だ。
歩行距離12.8㎞、獲得標高930m。所要時間は8時間。さほど暑くはなかったけれど、水2リットルでは不足の季節になった。しかし、ゆっくり登山は水の節約に一定以上の効果はあったような気がする。