雪彦山(姫路市)

 2023年5月10日


姫路市の雪彦山に向かう。ポンコツハイカーにはかなり手強い岩場が続く山だ。念のためヘルメットまで用意して装備は万全だけれど、問題は体力だ。他のハイカーに後ろから突き上げられるのが嫌なので、11時と敢えて遅い時間のスタートだ。



駐車場からほんの100mほどで登山道に入る。登山道に入ると即急坂が始まる。足腰がまだ温まらないうちに、いきなりトップギアだ。



赤ペンキの矢印に従って登っていくが、こんなトコ登るんかいな、と思わせる道の連続。未だ登り始めたばかりだというのに、早々に息が上がってくる。



束の間眺望が広がる展望台から大天井岳の岩ゴツゴツの山容が見える。あそこまで登るんかぁ…。右に連なる岩山は地蔵岳など上級者向けの何コース。今日は大天井岳の奥へと大きく周回する一般ルートを進む予定だけど、一般コースといえど油断ならない道が続くはずだ。



ほぼ垂直の岩登りが続く。古傷のため右足を高く上げることができないだけに、いつものことながらこの種の岩場には苦労させられるのだけれど、なんとか左足にリード役を負わせることで岩場をクリアしていく。



出雲岩と呼ばれる巨岩。巨岩すぎてフレームには到底収まりきらない。岩に圧し潰されそうな気分になりながら出雲岩の横をすり抜けていく。もうこの辺りで息はあがって、足腰も動かなくなってきた。まだ1割くらいしか進んでいないというのに…。



ロープや鎖が続々と登場するが、一体どこを登ればいいのか、悩ましい岩場が多い。狭い岩の溝のようなところに体を捩じりこむようにしながら、岩を攀じ登っていく。体力はどんどん削られていく。



鎖が無いところでは木の根っこを掴みながら急坂を攀じ登っていく。多くのハイカーが掴むせいだろう。根っこはツルツルになっている。



出た~。セリ岩と呼ばれる細い岩の隙間が現れた。幅30~40㎝くらいしかないように見えるけど、出っ張った腹で大丈夫だろうか…。リュックを手に持ち替えて恐る恐る進んでいったけど、さほど問題なく通り抜けることができた。



何度も休憩を挟みながらも少しずつ進んでいくけれど、ますます急峻な岩場が登場する。ロープを使ってほぼ垂直とも見える岩場を攀じ登っていく。が、ここで大トラブル発生!



岩場の溝に靴がズッポリと挟まって身動きが取れなくなってしまった。高所で鎖を掴んで体を支えているような状態で右足が岩から抜けない…。このままで腕の力が尽きるとどうなるのか…。ひどく焦る。1分ほども藻掻き続けているうちに突如何かの拍子で右足が抜けた。



何とか岩場を登り切ったところで、グロッキー状態。しばらくは動く気にもならない。足の力も腕の力も使い切ったような気分だ。もう勘弁してくれ~、と言いたいところだけれど、岩の壁は次から次へと襲い掛かってくる。



超ヘトヘト状態で大天井岳に登頂。この辺りの山を総称して雪彦山というらしく、ここには雪彦山という標識も立つ。しかし山岳マップ上は、三角点がある隣の山を雪彦山としている。苦労して登ったのだけれど標高は811m。2000m超の山に登ったような疲れ具合だ。



もう十分だ。さっさと下山したい気分だけれど、登ってきた急坂を下ることなど想像するだけで気を失いそうだ。かといって地蔵岳方面はさらに危険ルートだ。ということは、このまま進んで雪彦山から鉾立山を縦走しながら大きく時計回りに歩いて戻るしかなさそうだ。



幸い大天井岳を過ぎると、道は多少は緩やかとなり、ヤバイ岩場も現れなくなった。でも明らかに右足が上がりにくくなってきた。こういう場合、石ころや木の根っこで躓いてしまうことが度々ある。緊張感を切らすことなく進んでいこう。



雪彦山(915m)。二等三角点があるので、山域の総称である雪彦山の名称が与えられているけれど、頂上には特段の設備がある訳でもなく、至って素っ気ない。



続いて鉾立山へと向かう。道は比較的緩やかではあるものの、倒木が多くて決して歩きやすいといえる道ではない。もう少し元気であれば、これくらいの倒木は気にならないのかもしれないけれど…



鉾立山。標高は960mとこの山域の最高峰だけれど、絵のかなりの部分が剥がれて読めない古い展望図があるだけ。座り込みたいけれど、座るのに適当なところもないので、ほぼ素通りで先へと進む。



ジャンクションピーク。山岳図では「山」扱いで、標高は942m。いくつかの尾根が集まったところだ。今回の周回ルートではここが北端。ようやく折り返しとなる。かなり疲れてはいるけれど、後は下山道だ。(が、さほど容易なルートでもなかった…)



樹林帯のなか、渓流に沿って急坂を下っていく。相変わらず倒木だらけだ。道に横たわる倒木を跨ぐだけでも疲れ果てた太腿が悲鳴をあげる。



川幅は少しずつ広くなり、勾配のきつさもあって、水流はかなり早い。気持ちの良い渓流と言いたいところだけれど、川岸は歩きにくく、何度も気を使う渡渉を強いられる。



虹の滝というところらしい。苔むした岩肌を勢いよく清水が流れ落ちている。とても美しい風光明媚なところなんだけれど、この風景を楽しむほどの余裕さえ無くなってきた。早く帰りたいよ~。でも慌てず、ゆっくりと進もう。日暮れまでに下山できればいい。



こっちへ渡れ、と矢印が付いているけれど、結構緊張させられる。岩がグラつかないか、ストックでしっかりと確かめて進む。御嶽からの下山時にゴール直前でドボンと川に落ちてしまったようなことを繰り返す訳にはいかない。



虹の滝の付近から地蔵岳が見える。大天井岳から地蔵岳経由であれば随分と近道だったはずだけれど、あんなトコを歩くなんて考えられない。ロッククライミングを楽しむ人も多いらしいけど、行って見たいとさえ思わない。



さすが修験道の山。疲労困憊状態だけれど、今の技量や体力では目一杯の難所が多かっただけに無事できたことを喜ぶべきだろう。距離7㎞、獲得標高900m、所要時間6時間50分。