蘇鉄山(堺市)

 2024年7月26日


所用のついでに南海堺駅に下車。堺市出身の女性歌人、与謝野晶子の銅像が立っている。時刻は午前6時半。



かつて南蛮貿易で栄え、東洋のベニスと呼ばれた環濠都市、堺の時代からの水路に架かる橋の上には、堺の中心部を眺めるような南蛮人の像が立っているのだけれど、最近この像は「橋上(はしのうえ)ポルト之助」と命名されたようだ。う~ん…。コメントし難い。



さらに進むと、幕末にいち早く挙兵した倒幕急進派、天誅組が上陸したことを示す石碑がある。駅から数分歩くだけでも、古墳時代以来、繰り返し歴史の大舞台となり続けてきた堺の奥行きの深さが感じられる。



ちょっと古臭い寂れたような建物が現れる。これが歴史ある堺魚市場だ。堺は京阪神への魚介類の供給地でもあったらしい。他の卸売市場と同様、寿司屋をはじめ多くの飲食店が併設されているのだけれど、本日のお目当ては「てんぷら大吉」だ。



これがとんでもない人気店なのだ。本来深夜から早朝にかけて市場で働く人たちのためのお店なので、営業時間は夜23時から朝9時までというのに、深夜であっても1時間以上の行列ができるのも当たり前、最も空いているのが明け方らしい。



幸い先客は3人ほど。天ぷらのネタが並ぶカウンターに座らせてもらう。刺身もあるようだけれど、早朝から食べることに多少の抵抗感、罪悪感はあるものの、ここに来れば天ぷらを食べない訳にはいかない。



天ぷらの種類は盛りだくさん。メニューには「本日のおすすめ」だけでも20以上が並んでいるけれど、これ以外に定番の魚介類や野菜もあって、天ぷらだけでも70種類ほどある。価格はひとつ200~300円ほどが中心だ。


とても選べないので、天ぷら7種盛り合わせをオーダーする。キスやエビなど魚介類が5種、さらにタマネギ、椎茸が、無造作に並んでいるけれど、やはり美味い。天ぷらも刺身と同様に新鮮なものが美味いことを改めて知った。



この店の名物がこのアサリ汁。アサリが10粒ほどで、これまた美味い。天ぷらとの相性もバッチリだ。



このアサリの貝殻は足元に捨てるのが、この店の流儀。カウンターの席に着くまでにはいくつもの貝殻を踏みつぶすことになる。



早朝天ぷらを堪能し、少しでもカロリーを消費すべく、堺駅付近を少々歩くことにする。堺市内を東西に貫くフェニックス通りを海へと向かって歩く。まだ朝7時だというのに、メチャクチャ日射しが強い。



大浜公園にやってきた。明治初期に開園し、かつては海水浴場や水族館、料理旅館や土産物屋が並ぶ関西屈指のレジャー地だったという。今では静かな公園だけれど、週末には鎌倉時代から続く大魚夜市という鮮魚即売会が開催される。花火やコンサートもあるらしい。



目指すは、一等三角点がある山としては日本一低い蘇鉄山。ところが以前の記憶が怪しく、セミの声が煩い公園の松林のなかを遠回りをして、ようやく蘇鉄山の裏手に回り込んできた。



天ぷらでお腹いっぱい状態だけれど、蘇鉄山山頂に向かって道無き急登に挑む。



急登を攀じ登ること15分…、ウソ、15秒ほどで蘇鉄山登頂。標高は6.97m。山頂にはやはり蘇鉄の木が植えられている。隣接する一等三角点は、生駒山、金剛山、六甲山、和泉葛城山など関西を代表するような山々だ。低くとも一等三角点の誇りが感じられる山頂だ。



下山はメインの登山道から。こちらはなだらかな斜面で、軽い段差も作られていて登りやすそうだ。



蘇鉄山の正面登山口。天保山や茶臼山などと同じく、この山も登頂証明書なるものが、近くの神社で発行してもらえるはずだ。以前記念に発行してもらった(というより買ったというべきかも)けれど、誰が見ている訳でもなく、なんの証明にもならない。



かつては様々な遊具や水族館があったというけれど、今あるレジャー施設は猿の檻くらい。檻といってもかなり大規模なものだ。



10~20匹くらいの猿はいそうだけれど、こんなに暑いというのにかなり忙しなく猿は動く。檻の前で良い構図になるのを待つけれど、いい写真が撮れない。写真のピントがどうしても鉄柵に合ってしまう。



大浜公園のなかを出口を求めてウロウロ。造成した際の残土を盛ったようなところを歩くけど、ここって蘇鉄山より高いんじゃないだろうか。



昔と比べて影が薄くなったような大浜公園だけれど、相撲の世界では今でも聖地のような存在。立派な相撲場があって、学生相撲の大きな大会は永年ここで開催されている。



旧堺港にやってきた。今では小さな船しか停泊していない。すっかり夏空で、日射しも厳しい。気温は30度をゆうに超えているはずだ。港に植えられた南国風の植物に全然違和感が感じられない。



港には呂宋助左衛門の像がある。戦国時代にルソンなどとの南蛮貿易で巨万の富を築いた豪商だ。堺が国内で最も栄えていた時代の象徴のような人物だ。



歩行距離2.9㎞、所要時間は1時間10分(食事含む)。天ぷらのカロリーの2割くらいしか消費できなかったように思うけれど、メチャクチャ暑い。今日は空調服なしで歩いたのだけれど、あらためて空調服って効果があると実感した。




大阪4低山(大阪市)

 2024年7月24日


先日購入した空調服の街歩きでの効果を確かめるべく、大阪市内の超低山巡りに出掛ける。真夏の舗装道歩きは、山歩きとは全く異質の不快な暑さを感じるものなのだ。午後14時前に南海高野線の帝塚山駅をスタート。気温は35度。



駅からほど近いところにある小高い丘が帝塚山(19m)。大阪五低山のひとつだ。帝の塚ではなく、大伴金村とかの有力豪族の墳墓の可能性が高いらしい。それよりも浦島太郎の墓という伝承が気になる。



何度か訪問しているので判ってはいたことだけれど、残念ながら帝塚山は周囲を柵に囲まれて立入はできない。周回するけれど、住宅の隙間からチラと見える程度で、前方後円墳であることさえ確認は難しい。



住吉区にある帝塚山から北へと向かう。空調服のバッテリーを節約するため、「最強」ではなく「強」に留めているので少々物足りないけれど、それなりに体の負担は軽減されているはずだ。しばらく歩くと阿倍野神社にやってきた。



阿倍野神社は北畠親房・顕家父子を祀る神社。全国に30ほどしかない別格官幣社の社格を有していたところだ。奮闘虚しく石津の戦い(堺市)で足利方に敗れて討死した顕家を祀る神社やお墓が、なぜここにあるのかが未だによく判らない。



西成区と阿倍野区の区境に沿うように北上していく。山歩きと違って、真夏の都会歩きでは日陰を歩くことは難しい。上からの日射よりも、むしろ下から湧き上がってくるような蒸し暑さにウンザリさせられる。



第二の低山。聖天山の麓までやってきた。まだ歩き始めて1時間ほどなのに、僅かな階段がかなり鬱陶しくなるほど心身ともに疲れてきた。



階段の上にある正圓寺の境内が聖天山(14m)の山頂ということになっているけれど、周囲にはもう少し高そうなところがあるような…。ここも古墳だったというけれど、壊されたのかなぁ…。もっとも上町台地の南端となる聖天山全体が古墳ということではないようだ。



聖天山公園にある日陰のベンチで、もう歩くのやめよかな~という思いが何度も頭を過りながらの長い休憩を取った後、上町断層の西側の縁に沿って進む。高い右側が阿倍野区で低い左側が西成区だ。



両区の間にはところどころに歩行者専用の階段がある。車で両区間を行き来するためには結構遠回りをしなければならない。



あべのハルカスが見えてきた。地上300mもある高層ビルを見上げながら、標高10mとか20mとかの低山を目指して歩いているのもおかしな話だ。



大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、大阪公立大学になったはずだけれど、新しい表札の下にまだ市立大学の表札が残っている。公立大学という名前の認知度がまだ低いこともあろうけど、市立大学の表札を処分するに忍びないのではなかろうか…。気持ちはわかる。



天王寺付近のマンホールは、ほとんど大阪万博のデザインに取り換えられている。まだ難題山積の万博だけれど、いよいよ開幕が迫ってきた。1970年の大阪万博には熱中したのに、今回の万博にはあまり興味が持てない…。



近鉄天王寺駅前の巨大横断歩道。10年ほど前カラネーミングライツを導入している。確か3年間で400万円ほどと聞く。企業名を冠した橋名標はさほど大きなものではないけれど、どこまで効果があるのだろうか。梅田の大歩道橋は3年で600万円ほどだったはずだ。



大阪環状線を北に渡って天王寺区に入る。10年ほど前まで、天王寺駅から西に少し行ったところに環状線最後の踏切となった一ツ家踏切があったのだけれど、今ではその跡形さえ確認できない。よくまあ、こんなトコに踏切があったものだとさえ思ってしまう。



天王寺公園。すっかり真夏だ。周囲はセミの声でうるさいこと、うるさいこと。どの木にも簡単にセミを見つけることができる。



本日の第三峰、茶臼山の麓にやってきた。大阪冬の陣では徳川家康が、夏の陣では真田幸村が陣を構えたところだ。



茶臼山山頂。標高は26mと大阪五低山の最高峰となる。平地に盛り土をしたものなのか、元からの高台を利用したものなのかは知らないけれど、ここも古墳だという。三角点風の山頂碑の右には真田の六文銭。左側は徳川の葵紋が描かれている。



かなり心身の疲労は溜まっているけれど、頑張って最後の一座、御勝山に向かう。インバウンドで賑わう四天王寺の南大門。かなり原色に近い赤と青の金剛力士像が有名なところだ。



四天王寺の東大門。これまで気付かなかったけれど、ここにも一対の金剛力士像があって、色は緑と黄色だ。



大阪環状線の高架を潜って東へと向かう。環状線の向こうは生野区になる。



古い国旗掲揚台の跡が住宅街の中に残されている。国威宣揚、興亜日本の2つの石柱が残されている。おそらく真ん中の木柱が国旗掲揚のためのものだったのではないかと想像する。



史蹟岡山、又は御勝山との石標までやってきた。石標の向こう側が御勝山で、大阪夏の陣では二代将軍徳川秀忠が陣を張ったところ。戦勝を記念して御勝山と呼ばれるようになったという。



御勝山(14m)も古墳。前方後円墳らしいが、立入はできない。傍にある横断歩道の上から内部を窺うけれど、古墳らしさは感じ取れない…。この後天保山まで歩けば5低山縦走と言えるのだろうけれど、10㎞ほども離れている。とてもムリだ。



距離9㎞、所要時間は3時間20分。4山を制覇?したというのに獲得標高はたったの56m。空調服を最強にすることなく、強までで我慢したこともあって、バッテリー消費は半分ほど、この調子なら7時間ほど持つことになるけれど、風量がちょっと物足りない。




大野山(猪名川町)

 2024年7月22日


山頂近くまで車で登れる猪名川町の大野山(おおやさん)に出掛ける。御大層にもアルプスランドと名付けられたキャンプ場と、ゴロゴロした巨石を巡る山歩きがウリの山だ。



今回の山歩きの目的は、先日ついに思い切って購入した空調服を試すため。山歩きにどこまで効果があるのか不明だったこともあり、購入を躊躇していたのだけれど、ついに山グッズの国内トップメーカーであるモンベルが発売を開始したのだ。



リュックとの干渉を避けるため、通常は背中にあるファンは脇の下部分にずらされている。風の通りを良くするためなのか左右非対象だ。モンベルが出しているとはいえ、効果には懐疑的。まずは、多少は涼しそうで楽な山歩きとなりそうな大野山で試してみることにする。



さらに、3000円弱のセール品とはいえ、冷却プレートを採用した電動式の日本製品だ。これまた炎天下での効果はさほど無かろうとは思いつつも、先日の中山道歩きですっかり猛暑にやられてしまい、衝動買いしてしまった。



冷却効果も心配だけれど、さらに心配なのはバッテリーがどこまで持つか…。モンベルの空調服は合計3万円弱だけれど、その半分はバッテリーなのだ。それでも4段階のうち強度3で6時間しかもたないという。持っていくバッテリー総量は5Ah以上になる。



大野山の駐車場に到着したのは13時50分頃。麓の猪名川では36度、大野山の山頂付近でも30度前後はあるはずだ。一日のうちで最も暑い時間帯となるが、空調服とネッククーラーを装備して出発だ。



軽い坂道を10分ほども登れば大野山山頂という楽々登山。空調服のファンは勢いよく回り、確かに涼しさを感じるけれど腕や顔は容赦なく強い日射しの攻撃に晒され、やはり暑い…。車内では冷たすぎるとまで感じていたネッククーラーの冷たさもすぐに感じなくなる。



大野山山頂(753m)。隣のピークに天文台が立ち、摂津・丹波両国の境にあってかなり見晴らしはいい。空調服のバッテリーを収納した服のポケットの重さが不快なので、バッテリーをリュックのサイドポケットに入れるよう配線を組み直したりする。



大野山山頂にご挨拶を終えて、岩めぐりに出発する。8000万年前、この地域にあった火山の噴火によって発生した火砕流が堆積・再溶解を繰り返してできた溶結凝灰岩がこの辺りの巨石の正体らしい。



日なたを歩いているとあまり涼しさを感じないのに、日陰を歩くと急に涼しく感じられる。空調服から噴き出す風が心地良い。当たり前のことなんだろうけれど、日陰をなるべく歩くことで空調服の効果も随分と変わってくるようだ。



花立岩。花立とは仏様に花を供えるための花瓶だったと思うけれど、どこが花瓶なのか…。なんて細かなことを気にしていたら、この先の巨石巡りは楽しめないことは以前歩いた時に判っている。この辺りは上の山(706m)の山頂のはずなんだけれど、山頂碑は見えない。



大夫婦岩。どこかに小夫婦岩もあるのだろう。まあ名では良くある名前だ。統計など無いのだろうけれど、おそらく天狗岩、亀岩、夫婦岩、烏帽子岩、あたりが日本の岩の名前の上位を構成しているに違いない。



ルートには「岩めぐり」と書かれた標識があるものの、道はさほど明瞭でもないし、易しくもない。以前歩いたときには感じなかったけれど、結構しんどい…。歳のせいかなぁ…。



カメレオン岩。そう言われれば、そんな風にも見えてくる。オリジナリティの高いネーミングだ。結構大きくてユニークな形をした岩でも名前を貰っていない岩も多い。名前が付いているいないで注目度は変わるはずだけれど、名前を付けるもの簡単ではなさそうだ。



神楽岩。大きな岩のうえにある小さな岩たちが、舞台で御神楽を踊っているように見えるのだろうか。空が眩しい。



鯉の滝登り岩。切り立った谷道の上にあるので、なるほど滝を登ってきた鯉と見立てるのは秀逸だ。いつの間にか、巨岩を楽しむのではなく、巨岩のネーミングセンスを評価することが目的になってきている。



不動岩。かなり苦し紛れな感じがする。岩だから当然不動。不動明王のような勇ましさも迫力も感じられない。



太鼓岩。おそらく大野山岩めぐりのなかではエース級の奇岩。鬼か天狗が叩く太鼓のような形に岩が割れている。



突如、目の前を動物が走りだした。こちらを向いていた顔から、たぶんタヌキ。久しぶりに見たなぁ…。



いや、走っている姿を見るとイタチかもしれない。山では様々な動物に出会うけれど、写真を撮るのはかなり難しい。鳥や昆虫はさらに難しい。この後、オニヤンマのアクロバティックな飛行に魅入られて何とか写真を撮ろうとしたけれど、一枚もまともに撮れなかった…。



おにぎり岩。気持ちは判る。でも似たような岩が結構アチコチにあるんだよなぁ…。



岩めぐりを終えて、再び山頂近くの駐車場へと戻っていく。ベンチに座り込んで大阪の市街地まで見通す眺望を楽しむ。結構疲れた。かなり暑い。でも休憩すると急に涼しくなってくる。空調服って、休憩中に最も有難みを感じるような気がしてきたぞ。



猪名川天文台。ちっちゃな天文台だけれど、肉眼の5000倍の集光力があるそうだ。プラネタリウムを併設されている。



歩行距離3.9㎞、登り獲得標高278m、所要時間は2時間半。のんびり山散歩みたいな数字だけれど、実のところやはり結構疲れた。空調服のファンを最強で回し続けたせいかもしれない(うるさいんだけれど、それでも暑かった…)