西宮七園めぐり(後)甲陽園~香櫨園

 2020年9月24日


先日は甲東園、昭和園、甲風園、甲子園の4つだけに終わった西宮七園めぐりだが、今日は残る三園を歩いてみよう。阪急甲陽線終着駅の甲陽園駅から出発だ。高級住宅街として知られるが、駅舎はスレート葺きにテント風の庇と意外にも質素だ。



西宮七園のうち4つには「甲」の字がつく。甲子園が甲子(きのえね)の年に建設されたことに由来していることは有名だが、その他の「甲」は、西宮市のシンボル「甲山」からの命のはずだ。甲陽園駅に近い大池からも甲山が良く見える。



大池の畔にある樹木の周囲には呼吸根と呼ばれる奇妙な突起物が多く見られる。伊丹の昆陽池周辺と同様のものだ。落羽松(らくうしょう)という木だそうだけど、松の仲間ではなく、杉の仲間で、別名は沼杉というらしい。



甲陽園から南に歩いていくと、大社中学校というのがある。この辺りで大社といえば廣田神社しかないけれど、随分離れている。移転したのかなぁ…。目に飛び込んでくるのが、「死ぬなケガすな病気すな」とド直球の標語が彫られた校門脇の石碑だ。気になるぞ。



夙川の鉄橋を甲陽線が渡っていく。わずか3駅を繋ぐ単線のワンマン運転だけれど3両編成の電車が結構な頻度で往復している。甲陽園駅付近に学校を誘致しているため、逆方向になる通勤・通学双方の乗客がある。かなり利益率の高い路線ではないかと想像する。



夙川沿いの遊歩道を南へと進む。阪神間の川には美しく整備されたところが多いけれど、最も人気が高いのは夙川ではなかろうか。川幅があまり広くもない割に遊歩道ゾーンが広く、対岸の緑や花も楽しむことができる。



犬を連れての散歩の途中、ベンチで休憩しながら本を読む女性の姿が見える。おとなしく待っている犬が愛らしい。先日も都賀川で川に足を浸らせながら犬を横に座らせて本を読んでいる女性を見た。季節が良くなってくると阪神間の川ではよく見かける優雅な光景だ。



苦楽園口橋の袂に苦楽園の町名由来説明板が見える。ここを開発した実業家が所有していた三条実美ゆかりの苦楽瓢という瓢箪に由来するという。単なる地元自慢ではなく、ここが開発前には「交通不便で狐狸の棲息する」土地だったというような話から始まるのが面白い。



阪急苦楽園口駅。ここが苦楽園と呼ぶ人も多いが、ここは苦楽園「口」であって、苦楽園に繋がる入口でしかない。苦楽園の町はここから徒歩なら15分以上はかかるところだ。



緩やかな坂道を登り、苦楽園を目指す。1㎞ほど歩いてようやく苦楽園一番町にやってきた。ここのバス停が「苦楽園麓」。その名のとおり、苦楽園はここからさらに高台に広がっている。芦屋との市境を超えれば、かの六麓荘だ。



苦楽園から夙川方面へと適当に歩いていく。うまい具合に夙川の支流と思われる水路沿いの道がある。閑静な住宅街のなかを貫く気持ちのいい道だ。



甲陽線を渡る。あらためて見るとまっすぐの線路が続く。鉄道が敷設された頃には、建物などの障害物が何もないところだったことが想像できる。



夙川に架かる歩行者専用の小橋。「こほろぎ橋」という風流な名前が付けられている。川辺から大きく張り出した松の枝が橋を一層情緒深いものにしている。映画のロケにもよく使われるという。



甲陽線の終着駅、夙川駅。阪急神戸線に直角に突き当たるようにホームが設置されている。右の線路は神戸線との連絡のためのものだろう。物理的には三宮から甲陽園までの直通電車も運航可能に思える。



阪急夙川駅の南にある片鉾池。ここがかつて大賑わいだったという香櫨園遊園地の一部なんだそうだ。池に張り出すように立っているのは夙川公民館だ。



香櫨園遊園地の遺跡が何かないものかを探しながら片鉾池公園を散策したが、何も見当たらない。阪急電車は夙川駅を香櫨園駅とするつもりだったけど、遊園地が阪神電車の傘下だったため、香櫨園という名前を使えなかったらしい。



片鉾池公園のすぐ南をJR神戸線が走る。公園と線路を遮る金網にしがみつくように行き交う列車を見つめる子供たちの姿が見える。子供だけでなく、大人だって楽しいぞ。



JR神戸線の夙川鉄橋の南西に、不思議な空地がある。個人的な想像だけど、もともとJRは芦屋駅と西宮駅の間の新駅をここに作るつもりだったんではないだろうか。実際は夙川の東側に「さくら夙川駅」が開業している。ネットを調べてもこの空地の意味が判らないままだ。



国道2号線を越え、夙川公園に入る。一見尼さんのような女性像があり、誰かが帽子を被せている。実際はバスタオルを羽織った少女像なんだそうだ。阪神大震災で大きな被害を受けたこの地域で亡くなった子供たちの慰霊のための像だという。



阪神香櫨園駅のあたりも、松が川に覆いかぶさるように生えている。人為的なものなのか、何らかの自然条件によるものなのか、どうしてここまでの傾きが保てているのだろうか。



阪急香櫨園駅に到着。橋上駅に似つかわしく、アーチ状のカーブを多用したお洒落な造りだ。さらに駅舎2階のホーム部分にバルコニーのような張り出しが設けられている。



実は香櫨園という町は無い。マンションなどに香櫨園という名前はアチコチで見つけることができるのだけど、その多くが香「櫨」園ではなく香「枦」園となっている。実は阪神の駅も一時は香枦園駅だったが、住民が開業当時の字を使うよう働きかけて変更されたと聞く。



これが香櫨園駅のバルコニー。ホームから自由に出入りできる。なんだかかつての喫煙コーナーのようにも見えるけれど、川の真上に設けられ、景色を楽しむためのもののようだ。地元の人はお立ち台と呼んでいるらしい。



香櫨園の町名表示が無いので、今日は甲陽園と苦楽園の2つの表示板をゲットしただけ。当初予定と異なり2日がかりになったけど、無事西宮七園巡りはこれにて完了だ。



今日の歩行軌跡。寄り道ばかりの7㎞強ののんびりウォーキングだった。